【書評】八九六四 「天安門事件」は再び起きるか & さいはての中国

あまり医療や医学とは関係ありませんが、最近読んだ中国に関する本を2冊ご紹介したいと思います。

いずれも中国語の堪能なジャーナリストの・安田峰俊氏が執筆しているノンフィクションです。

いずれもアマゾンでは高評価を得ており、興味深く読み進めることができます。

八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

本書は天安門事件に関わる人物の当時と現在を振り返ったインタビュー形式のノンフィクションになります。

情報化社会が発達した現在においても、中国では天安門事件はタブーとされています。

事件が起きた1989年6月4日の話題は政府の厳しい検閲の下にあり、メディアはもちろん、SNSやインターネットでも公に語ることは難しいようです。

過激な発言ゆえ政府からマークされ、最終的には逮捕されてしまった力のない活動家、経済的な成功ゆえかつてほどではなく反政府運動とは距離を置こうとする中国人。

ひとえに反政府運動に参加した中国人といっても、置かれている立場や立場ゆえに現在の天安門事件に対する考え方、姿勢の違いが浮き彫りになります。

今や世界第二位の経済大国となった中国でこのような厳しい検閲が行われており、しかもそれが現状は情報統制がなされている部分に興味がありました。

本書を読んで感じたのは、これだけSNSやインターネットが手軽になった現在でも中国内部での反政府運動を活性化させるのは難しそうということです。

表立って反政府発言をする活動家は経済的にも社会的にも力を持たず、政府から容易に弾圧されてしまいます。一方で経済的に成功した人間は現状の生活に満足しており、反政府運動への力を失っています。

いまの中国が貧しいままならば状況は異なったのでしょうが、経済発展を果たしたいま、弾圧下での政府に対する反応は混沌としているようです。

さいはての中国(小学館)

経済成長の著しい中国内部に存在するマイナーな部分、暗部について浮き彫りにしています。

社会主義国家でありながら改革開放を推し進め、1990年代からは恐ろしいほどのスピードで経済発展してきた中国。

1泊数十円のネットカフェに寝泊まりし粗悪な麺を啜る若者、中国内部に存在するアフリカ人コミュニティと現地の中国人との確執など。

中国語が堪能な筆者だからこそ取材可能である、生の中国が描かれています。

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