【医師の視点】人口知能・AIから考える将来性のある診療科・ない診療科。どこが狙い目?

今後数十年のうちに、医療分野における人工知能の存在感は高まるとされています。

医師が何年もかけて学ぶ頭脳的知識・経験を、人工知能はわずかな時間で大量に学習することが可能とされています。

医者といっても、外科や内科など多くの診療科があり、日々行なっている医療行為は全く異なっているわけです。

その中で将来性のある診療科、ない診療科について考えてみたいと思います。

まずは、今後の医療がどのように変わっていくか、その影響を考えていきましょう。

AIはこれからの医療を変える可能性がある

これからの医者の世界がどのように変わっていくかを考えてみましょう。

まず医者としての職業はなくならないでしょう。

人間は誰しも病気になりますから、誰でも病院にお世話になるわけです。医者であれ看護師であれ、医療を提供していく人間はいなくならないわけです。

一方で、今後の医療変えていく可能性があるテクノロジーの1つに、人工知能が挙げられています。

この人工知能は、医者の経験や知識に基づいて行っていた主に頭脳的な医療行為を、代替してしまう可能性があると言われています。

具体的には、病気の診断や手技など技術を必要としない治療でしょうか。主に医者の頭の中で完結できる部分になる作業に相当します

内視鏡画像診断でも、すでに医師を超えた?

内視鏡画像分野においても、すでに人工知能は人間の診断能力を超えたらしいですね。

画像系の診断は、もはや人工知能の方が優れている様相です。

人工知能(AI)を活用し、内視鏡画像から胃がんを高い精度で検出するシステムを開発したと、公益財団法人がん研究会(東京都)などが発表した。

熟練した医師に匹敵するレベルといい、早期発見や正確な診断につなげたい考え。

(中略)

学習用とは別の画像2296枚を使って能力を検証したところ、77病変のうち71病変を検出(検出率92・2%)。迅速な対応が必要な6ミリ以上の病変に絞ると、71病変のうち70病変が見つかった(同98・6%)。解析は47秒で済み、1画像あたり0・02秒だった。

読売新聞  2018.1.29

人工知能の医療分野への貢献

内視鏡画像の読影というのは、非常に専門性の高い分野です。

消化器医以外の医者が画像を見ても、何がなんだがわからないような胃の粘膜の変化が、初期の癌であるという診断になったりしているので、餅は餅屋だな〜といつも思っています。

さて、そんな中で人工知能が内視鏡の画像も驚くべき速さと正確さで、正しい診断を下せたというニュースですね。

もはや画像診断の分野において人間の目は、どんどん不要になってくるのかもしれません。

人工知能はすでに医者を超えた?

人工知能は、医療分野ではまだ研究段階の技術だと言われています。

今も病院の中において、患者の診療に関して人工知能が使用されている場面はほとんどありません。

しかし病理分野で行われる細胞の悪性診断、そしてすでにデジタル化されている放射線分野での画像診断などでは、すでに人間の頭脳を凌駕しているというような研究データが発表されています。

加えて内科の医師が普段行うような鑑別診断でも人工知能が正しい診断を下せた、なんて研究結果もあり、人工知能がどんどん医師の専門領域を超えてきています。

これは驚くべきことではなく、ある意味当然のことでしょうね。

人工知能に医者は勝てない

人間と人工知能では学習スピードが全く勝負にならないですね。

これまで医師として何年もかけて習得していた、いわゆる経験部分の学習スピードが圧倒的に違います。

それに医者に診断させるとなると、結構なコストがかかります。給料を支払う必要があるのです。

一方で人工知能を診療に用いるならば、コストは格段に下げることができるでしょう。

そもそもデジタルデータな訳ですから、1病院に1人工知能ではなく、病院グループ単位や都道府県単位で人工知能を採用しても全く問題ないはずです。

今後の展望として、人口知能がますます医療分野に応用され、近い日に実用化されるのは間違い無いでしょう。

誰が責任を持つかは難しい

ますます医療分野での貢献を期待される人工知能ですが、一方で人間の役割はなくならいでしょう。

医療分野では、最終的に責任を持つ存在、つまり人間の医師が必要です。

コンピューターにいくら学習させたとしても、人間の体には常にイレギュラーなことが起こります。

人工知能にとって初めて経験する症例があるとすれば、その症例に対する正しい回答を人工知能は提示することができないでしょう。

いくら人工知能が発展したとしても、必ず見逃しはおきるでしょう。

そのような手探りの症例や見逃しの症例に関しては、人間がフォローしてくことが必要です。

不利益を受けた患者に対して「人工知能が下した判断なので、仕方ないことです」とはいかないはずです。

人工知能が当たり前になった時代の病院で、だれがその判断に責任を持つようになるのか、いまから考えておく必要がありそうです。

責任が取れるなら人工知能はミスをしても良いのか?医療現場での疑問

2018年3月11日

【医師の視点】人口知能・AIから考える将来性のある診療科・ない診療科。どこが狙い目?

2018年2月10日

将来性のある診療科

そのような観点から、将来性のある診療科、ない診療科について考えてみたいとおもいます。

整形外科

最も将来性がある診療科は、整形外科ではないかと思っています。

日本の総人口は減少傾向ではありますが、少子高齢化はどんどん進んでいます。

病院を受診する患者の数は、2030年から40年頃までは増加の一途をたどると想定されています。

骨折や変形性膝関節炎、椎間板ヘルニアなどの整形外科疾患は高齢者に多いですから、整形外科の先生が余る事は考えにくいかと思います。

また整形外科の先生に怒られそうですが、整形外科の場合は頭を使うというよりは、どちらかと言うと手を動かすということが主流の診療科であると思います。

膝に痛みを和らげるための注射をしたり、骨折、打撲した部分を固定をしたりなど、どうしても人の手で行わなければなりません。

手を動かす処置を人口機能が完全に代替するのは難しそうです。整形外科の性質上、人工知能にとって変わられる仕事は、かなり限定されるのではないかと予想されます。

外科系の診療科

そのほか多くの外科系の診療科も、数十年の間には需要が少なくなる事はないでしょう。

高齢者が多くなるのでがんや外科的な処置が必要になる患者は増え、手術件数は増加することが見込まれます。

一方で人工知能には手術はできません。

ロボット手術や腹腔鏡手術など、人の手や目を機械が代行するようになはなる傾向がありますが、全部の作業を機会が代替するのは難しそうです。

病院でもてはやされているダヴィンチだって、操作するのは100%医者ですから、この作業を機械が行うようになるまでには、まだ相当な時間が必要そうです。

流石の人工知能も、切って良い血管と、切ってはいけない血管、神経の判断はできないでしょう。

もしその判断が間違っていたら生命に直結しますから、少なくともあと20-30年は全自動手術みたいなものは達成できないでしょうね。

当然外科医の仕事も、なくなることはないでしょう。

【勤務医の視点】外科の将来展望について考える。外科医の数はここ20年横ばいである

2018年2月15日

将来性のない診療科

将来性のない診療科も確実に存在しています。

あまり手を動かさない診療科でしょうか。

放射線診断科

最も将来が危ういのは、CTやMRIなどの画像検査を読影する、放射線診断科の医師ではないかと言われています。

時折医療ドラマなどで、フィルムの画像をシャーカステンに写している描写がありますが、いまやフィルムの画像を医者が見るなんてことはほとんどありません。

すでにほとんどの病院では画像データというのはデジタル化されています。

画像データは撮像後数分ほどで閲覧可能になり、ちょうどスマホで撮影した写真を見るかのように、パソコンのディスプレイで画像を見ることができます。

院内のどこからでも画像を参照することが可能で、先進的なところでは病院の枠を超えて画像を閲覧することも可能です。

ですから元来、放射線科の仕事はデジタルの分野と相性が良い領域でもあります。

今までは、放射線科の医師の経験と知識によって行われていた画像診断の分野が、もっと多くの経験と知識を蓄えた人工知能によって、より正確により早く行えるようになるかもしれません。

人工知能の発達によって、このデジタルデータを自由自在に操ることができるようになれば、すぐにでも放射線診断医の仕事にとってかわるでしょう。

放射線診断科の仕事は修正が可能

また画像診断の仕事は、仮にその場で出した答えが間違っていたとしても、医者が容易に修正することができます。

人工知能が仮に間違った答えを導き出したとしても、後から確認した医者が訂正できるのです。

この辺りが患者に直接関わる手術や診療とは決定的に異なるところです。

手術の場合はやり直しが効かないですし、外来業務の場合も基本は一発勝負ですから、人工知能が活躍するのはもうちょっと先になりそうです。

画像診断が人工知能にとって代わられた場合には、放射線科医の仕事は、大部分は失われてしまうでしょうね。

病理診断科も危ない

細胞や組織を見てがんがあるかどうかを調べる病理診断科も、人工知能にその役割を取って変わられてしまう可能性があります。

現在の病理診断学はその仕事の大部分が形態診断です。

細胞の大きさとか、形とかを顕微鏡で観察して、教科書の所見や頭の中の知識と照らし合わせながら、悪いものかどうかを経験的に判断することが仕事です。

もしこのような細胞の形態が人工知能で的確に判断できるようになれば、病理診断科の医師の仕事というのも、人工知能が行うようになるかもしれません。

すでに監視カメラを使って、ヒトの顔を正確に認識するのは可能になっているようですから、細胞の顔つきを判断するもそう難しくはないでしょう。

すでに消化器内視鏡の診断に関しては、一般的な医師よりもより高い精度で診断できるというようなデータも発表されています。

それに病理診断の業務も、人工知能が出した答えに対して、医者が確認したり、修正したりするのが容易です。

病理データは放射線画像データほどにはデジタル化されていない分野でありますが、一度それなりの技術が登場してしまえば、その進化は加速度的に発展していくことが予想されます。

病院の中で行われる病理解剖の概要について。死因を特定するために行われる解剖

2017年12月30日

内科の診断もなくなる可能性あり

この他の人工知能によって、医者の頭脳労働の大部分はとって変わられる可能性があります。

特に内科の診断業務は人工知能によって取って代わられる可能性はありますね。

症状と検査データを入力すれば、勝手に人口機能が診断をつけてくれる、なんていう時代がやってくるかもしれません。

実際に一部の領域では、医師の診断よりも人工知能の方が正確な診断を導き出せるなんて研究もなされています。

こうれなればもはや医師は人工知能の奴隷となり、人工知能の支持する検査や薬をオーダーするのみです。

いやはや、おそろしい時代です。

医者の仕事もコンピューターに取って代わられる時代が来る日も近いかもしれないですね。

【勤務医の視点】医者の将来はあまり良くない。そう思う理由を5つ挙げてみる

2018年1月8日

人工知能に医師はどう立ち向かうべきか

医師と人工知能の付き合い方が、本格的に問われる時代がやってくるかもしれません。

根本的な部分では、医師と患者関係は絶対的に必要でしょうから、医師が不要になる時代はなかなか想像できません。

しかし検査のオーダーや薬の処方などは医師でなくとも事務職員でも可能ですから、業務の大部分を人工知能にとってかわれられる診療科が出てくるかもしれません。

そうなった場合には、もしかしたら特定の診療科の大量の医師が解雇される時代がくるかもしれません。

放射線画像診断には是非ともAIの導入をお願いしたいと思う勤務医

2018年12月12日

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