【勤務医の視点】学士編入という医学部への入学方法。学士編入は非常に狭き門である

あまり知られていませんが、医学部には正規ルートで受験する方法の他に、学士編入制度があります。

これはいちど医学部以外の大学を卒業した方や、大学を卒業後に社会人として働いていた人が、医学部の専門課程から途中入学できるようにしたシステムです。

アメリカなんかではいちど違う分野専攻で大学を卒業した人などが、メディカルスクールに入学するようになっています。

つまり学士入学は、アメリカ式の医師の教育課程に近いものがありますね。

学士編入試験の内容。東京医科歯科大学医学部を例に

東京医科歯科大学は単科大学でありながら、研究力が高い点、山手線内側の立地などから、受験生や研修医にとって非常に人気のある大学になっています。

大学受験における偏差値はすでに地方の旧帝国大学と同じレベルですし、研修医のマッチングにおいても毎年のように多くの研修医を集めています。

やっぱり医学部において立地はすごく大切ですねぇ。

文字通り人気のある難関大学医学部と言って良いかと思います。

実際の医学部学士編入試験について、東京医科歯科大学を例に考えていきます。

出願資格

東京医科歯科大学

こちらは平成31年度の東京医科歯科大学の学士編入の出願資格の一部です。

大学卒業の要件に加えて、TOEFL iBTのスコアが求められていますね。

どこの大学医学部もそうですが、学士編入者には英語力が必要のようです。

ちなみにPBT 550、iBT 80というスコアは決して高くはありません。

海外の大学医学部に短期留学するにはiBTで90-100点くらい必要とされていますし、医科歯科大の医学部生であれば、3日くらい対策すれば余裕で80点は超えてしまうでしょうね。

試験問題

今度は試験問題です。

自然科学総合問題」となっていて、なんとも曖昧ですね。

インターネットの情報によると、それでも大学レベルの数学、物理の知識が問われるとのことです。

したがって大学レベルの学問を真面目に勉強した学生でないと最低ラインを突破するのは難しそうです。

ちなみに医学部生の場合は試験突破に必要な最低限の勉強しかしませんから、これら大学レベルの数学や物理の問題を解くのは無理そうです・・・・。

二次試験は面接だけとのことですが、どのようにして最終的に合否を決定しているかは非常に曖昧ですね。

やはり大学卒業後の経歴なんかが結構重視されるんでしょうか。

私も医学部内のしょうもない面接を担当したことがありますが、面接試験を客観的に評価するのは非常に難しい印象です。

アイドル発掘やタレントの面接・オーディションであれば直感的なものに頼っても良いのでしょうけれど、アカデミックな場の入学試験において何かを客観的に評価するのは大きな課題です。

学士編入の門戸は非常に狭き門である

東京医科歯科大では筆記試験と面接でしたが、試験では、小論文などの課題も実施されることがあるようです。

私の学生時代には毎年のように学士編入試験で100人以上の方が受験したようですが、実際に合格したのは5人だけでした。

医学部の掲示板に合格者の受験番号が張り出されるわけですが、「合格者受験番号1、25、76・・・」となったりしていたのを覚えています。

もはやお年玉年賀はがきの当選番号のようになっていて、衝撃を受けた記憶があります。

学士編入者は必ずしも優秀ではない

学士入学した方々がすごく優秀かと言われると、そこには疑問が残ります。

医学部時代には、学士編入したにも関わらず、たいして勉強していなかった学士入学者もいました。

また授業に真面目に出ていない学士入学の学生もいました。

ただし学歴の点では、海外大学や東京大学・京都大学を卒業しているのは当たり前で、それが前提条件となっているような感じがありました。

そんな厳しい受験をくぐり抜けて医学部に入学した彼ら・彼女たちのポテンシャルは恐ろしいものがあるのでしょうね。

先輩にも、大学ランキングで軽く東大よりも上にランキングされている海外の大学を卒業した学士編入の方がいました。恐ろしい。

学士編入は現実的な入学方法ではない

医学部に最初から入学するよりは、学士入学した方が医学部で学ぶ時間は短くなります。

ですから一旦大学を卒業している場合は、学士入学が最も効率の良い医学部への入学方法に思えます。

倍率は高いし採点基準も曖昧

しかしながら上述した通り、学士編入は非常に狭き門です。

倍率はどこの大学でも10倍以上ですし、採点基準も不明瞭です。

小論文や面接なんていうのは、採点者側の裁量でいくらでも調整可能です、というか客観的な指標はないのかもしれません。

合格者の経歴や学力を考えると、東大の一般理系学部を経て科学論文を1本書いているとか、海外の研究機関で研究していましたくらいの経歴が必要そうです。

というか、学士編入で医学部にやってきた方々はそれくらいの経歴がありましたから、それらの経歴をもってして初めてスタートラインに立てたくらいなのかもしれません。

倍率や入学試験の点数が採点者の裁量や運によって左右されるところを考えると、通常の医学部入試で医学部に入る方が、合格率は高そうです。

実際に大学を卒業して学士編入の要件を満たしている方であっても、通常の医学部入試で入ってこられる方のほうが多いですね。

仕事は辞めてチャレンジすべきか

もし仕事を辞めて学士入学のための勉強に専念すべきか迷っておられる方がいれば、現状を変えないままに試験の準備をされることをお勧めします。

上に書いた通り学士入学は運によって大きく左右されますから、ギャンブルみたいなものです。

仕事や学校を辞めてまで、チャレンジすべき対象ではないでしょう。あくまで受かったらラッキーくらいの思いで医学部を受験すべきだと考えます。

まとめ

学士編入は、医学部の1−2年目を省略できるという点では、再受験生にとっては理想的な入学方法といえるでしょう。

しかしその門戸は非常に狭く、学士編入を狙ってそう簡単にできるものではない、ということも十分心得ておくべきでしょう。

【勤務医の視点】東京医科大学の不正入試事件と同様なことって本当に起こりうるのか?

2018年7月23日
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