【勤務医の視点】東京医科大学の不正入試事件と同様なことって本当に起こりうるのか?

東京医大の不正入試事件は、どんどんと波紋を広げていますね。

文部科学省の私立大学支援事業を巡る汚職事件に絡み、東京医科大学(東京)が今年2月に実施した入試の1次試験で、複数の受験生の試験結果のデータが改ざんされ、点数が加点されていたことが関係者の話でわかった。

東京地検特捜部は、大学のパソコンなどを「デジタル・フォレンジック(DF)」で解析。受託収賄容疑で逮捕された同省前局長・佐野太容疑者(59)の息子を含む複数の受験生に対する不正を確認した。

2018.7.22 ライブドアニュース

裏口入学の噂はいつの時代もある

医学部入試に関しては、裏口入学の疑惑は、いくつも挙げられてきました。

特に国公立大学よりも寄付金や卒業生のコネが関わる私立大学医学部の場合には、裏口入学の噂というのは絶えずありました。

今回の例のように、地元の開業医で大学とコネがある受験生の方が受かりやすいとか、寄付金を多く納入した受験生が受かりやすいとか、そんな噂です。

ですから、今回の不正入試のニュースも飛び上がるほどの驚きがあるわけではありません。

ただ現実的には難しそうだけれども…よくやったな

ただし一般的には入学試験の採点というのは複数名で行われますし、面接試験においても複数名が得点を決定します。

さらに最終的に受験者ごとに得点を算出し、合格者を決定するのも全て複数人で行われますから、そのような状況を考えると、どのようにして不正を行う余地があったのか、簡単には想像できないところです。

いくら「私立大学だと裏口入学があるかもね」と思っていたとしても、東京医大の内部の先生方も、まさか、と思ったのではないでしょうか。

報道では権力者であった理事長や病院長などの職にある関係者が、ほぼトップダウンで合格者を決定したということです。

これが真実だとすればもはや公正な入試制度とは言い難く、試験なんていらないんじゃ?と思えてきますね。

確かに国立大学でも得点のつけ方には怪しい部分はあり

実は私立大学だけでなく、国立大学でも、入学試験について怪しい部分は全くないわけではありません。

群馬大学では過去に、ペーパーテストでは合格点に達していた再受験生が、面接試験でほとんど得点できず不合格になりました。入学試験の公平性をめぐって、裁判まで至った例があります。

医学部の面接試験はブラックボックスである。得点調整が行われている可能性はあるか

2018年5月15日

このほか過去には、得点調整のしやすい面接試験が大きく関わってくる医学部の後期入試においては、現役生かつ地元出身の医学部受験生が受かりやすいと言うこともささやかれてきました。

理由は簡単で、若い地元出身の高校生の方が卒業後も出身大学に残って仕事を続けてくれる可能性が高いからではないか、ということです。

このような不透明な部分での得点調整は、おそらく医学部以外の一般学部であればわざわざ行う意義はないのでしょう。

しかし医師という半ば公務員的な要素が含む職業かつ、入試が極めて難しいからこそ起こりやすいのかもしれません。

医学部受験はブラックボックスである

このように医学部受験においては常に見えない部分があります。

私が学生だったころにも、面接試験の比重が高い医学部の後期試験においては、色々なことが噂されてきました。

大学病院と縁の深い病院のご兄弟2名が、前期入試では不合格になりながら後期入試で受験に合格していたとか、教授のご子息がこれまた前期入試で不合格になりながら、後期入試ではちゃっかり入学なんてはなしです。

このような大学と縁の深い受験生の合否が、純粋な学力や得点以外のところで調整されているかどうかなんて、誰にもわかりません。

医師となって大学病院で働いてた時も、受験に関する情報は私たち下っ端の医師には一切入ってきませんでした。

ほんの一握りの上層部だけが取り仕切っているのが、医学部受験の実態なのです。

となると、医学部受験では得点水増しも難しくないでしょうね

このような医学部受験の状況ですから、受験者に下駄を履かせることも、想像するよりは難しくないのかもしれません。

特に私立大学の場合には、大学に利益をもたらさない学力の高い学生を合格させるよりは、学力が低くても、今回の例のように大学に恩恵をもたらしてくれる学生を入学させる方が、はるかに有益です。

複数人の目で運営されている入学試験であったとしても、絶大な権力者が一人いるとか、または複数名全員が同じ意思をもっているとすれば、不正はたやすく発生してしまうでしょう。

不正入学した学生でも医師国家試験は受かるでしょうね

これまでも過去に、特典の水増しや有力者とのコネクションによって既に医学部に入学し、卒業して医師として働いている先生方もいるようです。

在学中の定期試験や医師国家試験は基本的には暗記問題ですから、ある一定程度の勉強のノウハウや記憶力があれば、大学受験を終えてからの試験を突破するにはさほど困らないでしょうね。

医者になってからも、圧倒的に学力が足りていなければ話は変わってきますが、医師として必要な能力は高い学力だけではありません。

したがって、不正入試による医療の質のレベルの低下は、不正入試によって合格した受験生がよっぽどのバカでなければ、あまり問題にはならないであろうと推察されます。

問題は、不正に合格した受験生によって、本当は医学部に合格する権利があったにもかかわらず、あえなく不合格となってしまった学生の不憫さでしょうか。

医師国家試験合格率に対する考察。入学時の偏差値と合格率に相関はあるか?

2018年3月21日

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