お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんかというアナウンス

国際線などを飛行時間の長いルートに乗っていると、乗客の気分が悪くなって医者が呼ばれることもあります。

よくあるアナウンスは「お客様の中にお医者様はいらっしゃいますか?」という文言ですね。

お医者様」なんて表現はやや過剰な尊敬のような気もします。今や様なんてつけられることなんてないですから、むかしの名残なのでしょうか。

この種のアナウンスがあった場合の医師の行動は、医師によってガラリと変わってくるでしょう。

お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?

私も学生時代に、海外に向かう国際線の中で、こののようなアナウンスを聞いたことがあります。

アナウンスは英語で行われていて、おそらく外国のお客さんが体調を悪くしたのだと思うのですが、全部の内容は聞き取れませんでした。

このシチュエーションはやっぱり珍しくて、コンスタントに飛行機に乗るようになって10年くらい経ちますが、後にも先にも学生時代のこの1回のみしか聞いたことがありません。

一緒に病院で働いている先生方も、そのような体験をした事は無いようです。

ただしインターネット上には「飛行機内での医療行為」について記事が書かれていますので、全くないというわけでもないでしょうがけれど・・。

飛行機内で起こるであろう病気・病態について考察

飛行機内では、どんな病気が起こる可能性があるでしょうか。

重力とか酸素濃度が少しばかり変化したくらいでは、重篤なことは起こらないでしょう。

航空機内で起こる特殊なことがあるとすれば、地上でも起こり得る突発的なこと、そしてアルコールに関することくらいですかね。

アルコール関連

国際線の場合は搭乗クラスに限らず、ほとんどの成人はアルコールを摂取することになると思います。

座席に座ったまま少し重力の影響がなくなる等々、機内の特殊な状況を考えれば、急性アルコール中毒になる可能性は、地上にいる時よりも少しばかり高くなるかもしれません。

ただアルコール中毒の場合は軽度であれば基本的には輸液等の対処療法しかないですから、点滴をつないでおけば緊急着陸する必要はないでしょうね。

アレルギー関連

あと突発的におこるのは、アレルギー関連でしょうか。

特に機内食の食品成分に対して重篤なアレルギー反応が生じると、アナフィラキシーショックとなり、生死にか関わる自体になりそうです。

たまに機内食でソバとか出てきますけど、あれは大丈夫でしょうか。結構そばにアレルギーはある人はいますけれども・・・・。

アレルギーを持った乗客の方も、自己防衛として十分注意しなければなりません。

ホテルや旅館でのアレルギー対応は難しい。病院では厳格な運用が求められる

2018年2月12日

そのほかの症状

そのほかの想定される疾患としては、地上にいるときと同じでしょうね。

心筋梗塞、大動脈解離、くも膜下出血など心血管系の発症であればもちろん緊急着陸ですが、診断の難しさや治療までの時間を考えるとかなり予後は厳しいでしょう。

一方で虫垂炎(いわゆる盲腸)や急性膵炎などの準緊急性疾患の場合は、判断が難しいですね。

基本は即診断、即治療開始がベターですが、残りのフライト時間や地理的なものも考慮に入れる必要がありそうです。

ただしこれらは、診断が後になったわかった場合であって、機内であれば診断をつけるのはほぼ不可能でしょうね。

となると、緊急着陸すべきか対処療法でみるべきかは、患者さんの全身状態とか血圧などの指標にしか頼ることができないことが予想されます。

かなり難しい選択を機内では迫られそうです。

航空機内でできる医療行為は、限られている

聞くところによると、飛行機の中には必要最小限の応急処置のセットが装備されているようです。

そして医者自身の判断いかんによっては、最寄りの空港に緊急着陸することもあるようです。

東京-大阪くらいの距離なら途中で緊急着陸もあまり抵抗ないですが、羽田 – ニューヨークとかの路線で、アラスカに緊急着陸、となればこりゃもうすごい判断するのに勇気がいるでしょうね。

機内に医者が搭乗している確率は結構高い

日本には医者が30万人くらいいるそうですので、日本の人口を考えると、単純な人口比では大体400人に1人といったところでしょうか。

飛行機の席数は国内線の大きい機体で400-500、国際線だと200-300くらいですね。

医者は出張や旅行で海外に行くことが多く、飛行機に乗る確率が他の日本人よりも多いことを考えると、飛行機の中に医者が1人乗っている事は全く不思議ではありませんね。

最近では、ANA、JALともに、あらかじめ医者には「医者である」と登録させることによって、機内の急病患者になんとなく対応する制度を立ち上げたようです。

その制度の問題点については下記でご紹介しております。

【医師の視点】ANA Doctor on boardは考えもの。医者に厳しいシステムかも

2017年1月4日

謝礼よりは、安心して名乗り出られる環境整備を

航空機内で診察を行い、適切な処置を行うことで航空会社からは少しばかりの謝礼をいただくことができるようです。

次回の搭乗時にビジネスクラスのアップグレードにできたり、少しばかりのマイルだったり、商品券だったりするようです。

ただ時間外に呼び出されて行う医療への対価としては、決して十分ではないなというのが本当のところです。

それ以上に今の制度の元では、仮に機内で行った医療行為が患者さんにとって悪い方向に向かう行為であった場合、訴訟になってしまう可能性があります。

このようなリスクを危惧して、名乗り出ない医師がいるなんて話も聞きます。航空機内での医療行為に関して、医師が安全に医療行為を行えるように環境を整えることが必要かもしれません。

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