医学部で学ぶ生化学の知識。医者になってからもその知識は必須である

医学部の専門課程において、一番はじめに学びはじめるのが生化学分野であるかと思います。

この生化学分野は結構な時間を割いて講義が行われるわけですが、医者になってからの位置付けはどうなのでしょうか?

医者の中における生化学の視点で、考えてみたいとおもいます。

医学部における生化学

医学部における生化学講義では、人体の中で起こる反応のうち、特に重要なものについて学びます。

例えばグルーコスや肝臓、腎臓の代謝などが非常に重要な部分ですね。

このほか痛風の原因となるプリン体の代謝や、黄疸の原因となるビリルビンの代謝経路についても学びます。

これらの知識に加えて、分子生物学の知識も欠かせません。

DNAの合成や構造、タンパク質の合成についてのメカニズムなどは、抗がん剤をはじめとしたいろいろな薬の作用機序となる部分ですから、これらを理解しておくことが非常に大切ですね。

教科書のうち学ぶのは一部だけ

臨床現場で使われている薬、とくに新しいタイプの抗がん剤や分子標的薬などは、先人たちの分子生物学的発見の上に開発されています。

上にも書いた通り、生化学の分野は知識量が膨大なのです。

分子生物学の一般的な教科書となると、1000ページ以上にも及ぶことが多いですね。

そのうえ毎日のように世界中から新たな発見が報告されています。

しかし限られた学習期間しかない医学部の学生が、医学部時代に実際に学習できるのはせいぜい序章の100ページほどです。

DNAの構造がわかる前の70年以上前であれば、生化学の最先端知識にキャッチアップすることも可能であったかもしれません。

しかし今や生化学分野の知識は膨大になりすぎて、とても学生が数ヶ月間学んだだけでは、その全てを網羅するのは到底不可能なのです。

したがって医学部の中の生化学は膨大な分野に及び、実際に学ぶのはそのうちのごく一部といったところになります。

医者になってから使う生化学の知識は多くはない

普段病院の中で働いていると、学生時代に学んだ生化学の知識が直接的に役立つ場面は決して多くはないかと思います。

抗がん剤の作用機序に関しては、もちろんDNAレベルの知識が必要になるのですが、必ずしもこれらをすべて理解していなければいけないわけではありません。

むしろ、忙しい医者が働きながら理解できるのは、作用機序の一点だけ、という場合も多いかと思います。

がんの種類によってどの抗がん剤を使うかべきかは、ガイドラインに明確に定められています。

また実際に患者さんに抗がん剤治療を行う場合には、抗がん剤の細胞レベルでの作用機序よりも、その量や副作用への対策の方がもっともっと重要ですね。

実際に臨床現場で重要なのは患者さんの声ですから、副作用が出ていないかどうか、安全に投与できるのかどうかを第一に考えるべきです。

作用機序なんて最悪のところ理解していなくても一応は成り立ちます。もちろんそれは医師として不十分ではありますが…

自分の専門分野は最低限知っておくべき

そのほか腎臓や肝臓の代謝に関しては、専門分野の先生はその代謝経路について明確に理解すべきでしょう。

検査結果を解釈したり、治療を考えるにあたっては必ずや必要になる知識です。

しかしすべての臨床医が肝臓や腎臓の生化学分野に精通しているわけではないでしょう。

細かい知識に関しては

あ、学生時代に習ったな

くらいしか記憶に残っていないかと思います。

人間の記憶力って意外と大したことないですから、忘れてしまうのは仕方ありません。

【医師の視点】がん治療における治療適応の決まり方。治療方針を左右する要素5個

2018年3月30日

医学部で生化学を学ぶのは、共通言語を獲得することである

したがって医学部の講義で学ぶ生化学の意味と言うのは、共通言語を獲得することになるかと思います。

生化学分野の細かい知識を理解できなくとも、薬の作用機序や、異常値が出る理由等について考えるためにも、生化学の基本的な知識は絶対に必要です。

それらを理解するにあたっては、DNAの機能や構造、その生合成に関して理解しておくのは、もはや当たり前のことです。

新しい作用機序の薬が発売された場合には、当然その作用機序を理解することが大切なわけです。

ですから「なにそれ?」から始まるよりも「ああ、聞いたことあるな」から始まる方が、圧倒的に理解までの道のりは短いですね。

何かを考える際の土台になる知識、それが生化学なのではないでしょうか。

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