【当直】医者だって病院当直ではいつもおびえています。何が起こるかわからない

病院の勤務医が行う当直業務。

患者さん側も不安で夜に病院にやってくるわけですが、当直している医師の側も日々怯えながら働いているんです。

だってどんな患者がやってくるのかわからないんですから。

専門外の疾患を診察しなけれなばならない不安

1番の不安は、自分の専門外の病気や症状を診察しなければならなことです。今の医療は高度に専門分化されていますから、普段の勤務では自分の専門分野以外の病気や症状を診療する事はほとんどありません

眼科医は眼のこと、耳鼻科医は耳と鼻しか診ないのが普通なわけです。しかし自分の専門以外のこともみなければならないというのが、病院当直なわけです。

眼科の先生であっても腹痛の症状を見なければならないですし、耳鼻科の先生であっても、尿路系の症状などを診療しなければならないんです。

専門外の症状をみるだけならば、自分の知識を総動員して診察することは可能です。しかし今の医療情勢はそれを許してくれません。

重篤な疾患や症状を見逃さず、専門医が診察するのと同じような判断を下すことが必要になってくるわけです。

医療の高度化と専門分化がもたらしたもの。専門外の分野が分からなくなってくる

2018年2月23日

当直にまつわる医療裁判は多い

このように慣れない医者が診察することが多い当直帯の診療ですから、トラブルも多く起こり医療裁判も頻繁に起こっています。

劇症型心筋炎で女児死亡、300万円賠償 愛知・小牧市民病院、当直の研修医、先輩に相談せず

愛知県小牧市は21日までに、市民病院で平成28年に劇症型心筋炎で死亡した女児について、病院側に過失があったとして、遺族に慰謝料300万円を支払うと発表した。当直の研修医が先輩に対処を相談せず、女児を帰宅させていた。

病院によると、女児は発熱などで、祝日だった28年2月11日に救急外来を受診。当直の研修医が入院不要と判断し、翌日の外来受診を指示して帰宅させた。女児は12日未明に心肺停止となり搬送されたが死亡した。

病院は、研修医が先輩に相談するルールを怠った点に問題があったと認めた。先輩に相談しやすくするため、医師を増やしたという。

谷口健次院長は「心からおわびする。安心して医療を受けてもらえるよう再発防止に努める」とのコメントを出した。

産経ニュース   18.2.21

一般内科系診療科の私なんぞ、劇症型心筋炎なんて診療したことはありません。医者の中でも、劇症型心筋炎の患者を診察したことがあるなんていう先生はほとんどいないでしょう。それくらい珍しい疾患です。

発熱でやってくる小児は、ほとんどが風邪とか胃腸炎とかですから、よもや劇症型心筋炎などとは想像しないでしょう。検査やコンサルトが制限される夜間であれば、診断を正確につけることはほとんど難しいと言っても良いと思います。

それくらい珍しい疾患を、一発で見抜かなければならないのは、ちょっとハードルが高いですよね。

ただし、この記事の中で指摘されているのは、劇症型心筋症を診断できなかった事実ではなく、上級医師に適切に相談しなかったことであると書かれております。

先輩にコンサルトするのもハードルが高い

ほぼすべての研修病院では、研修医がファーストタッチで患者の診察を行い、最終的な判断は上級医が決めるということになっている病院が多いかと思います。

病院や医師個人によっては電話で報告した後ちゃんと見にきてくれる場合もありますが、そうでない場合は電話報告だけというところもあります。

上級医がすごく怖くてクセのある医者の場合、「見にきてください」と電話連絡するのもすごくストレスだったりします。これは社会人としては言い訳ですが…

こういう事例をみると、自分の判断を過信せず、やるべきことは最大限やっておくことの重要性を認識させられます。

他にも医療訴訟に発展する例は多い

このほかにも、胃が痛いと訴えてやってきた患者さんの心筋梗塞を見逃してしまったりとか、吐き気がすると訴えてやってきた患者さんの脳梗塞を見逃した事例はぼちぼち話を聞きます。

日中の時間帯であれば、循環器の先生や脳外科の先生に相談することによって、症状から必要な検査をして見逃しを少なくすることができます。

ただし、画像検査を気軽に行えない当直の時間帯や、他の診療科の先生に相談できない夜間や休日であれば、最大限の対応というのはどうしても難しくなってしまいます。

当直帯の業務は、まず後からトラブルにならないように普段以上に気を遣って患者さんを診察しなければならないのです。

見逃しがないかという不安

当直帯にやってくる患者さんを見ることのストレスのひとつは、患者さんのたいしたことのない症状であっても、背後には非常に重篤な病気が背景に隠れている可能性があることです。

上にも書いたように、少し気分が悪いと言ってやってきた患者さんが、実は心筋梗塞であることが判明し、循環器内科の先生の到着を待ってすぐに心臓カテーテル検査が行われたこともありました。

夜間・休日であるにも患者さんが病院にやってくるわけですから、たいしたことのない症状であると思っていても、実は命に関わるような重篤な患者さんが潜んでいるわけです。

忙しい当直帯の時間の中で、そのような危ない患者さんを見分けるために、医者は必死で集中していないければならないのです。

当直帯の診療はリスク回避が大切

ですから当直帯に医師が考えている事のは、もちろん最善の治療を行うこともそうなのですが、リスク回避が1番になってきます。

もし自分の下した診断や処置が間違っていたとして、それが後から訴えられないようにその場で最善な診療を行うことのが非常に重要になってくるわけです。

2000年代半ば頃には、救急医療におけるたらい回しが全国的に問題となりました(大淀町立病院事件

これは救急車で搬送される患者の受け入れ病院がなかなか決まらずに、患者さんの生命に危険が及んでしまうものです。

救急医が複数病院に当直しており、救急体制が整っている病院であれば、お断りせずに受け入れることも可能だと思います。

一方で当直医が1人しかおらずとても救急体制が整っていないような病院では、患者さんを受け入れるのは、すごく難しい側面もあるかと思います。

仮に受け入れたところで、自分1人で対処できる範囲を超えているとすれば、そのことによって判断を間違えたとして訴えられてしまう可能性もあるのです。

訴えられないことファーストに

現在病院で診療を行なっている医師にとっては、いかにして訴えられないか、を常に考えながら診療に当たっています。

医療訴訟が当たり前になった今、最悪の事態を考えながら仕事をするのは当然になっているのです。

医療訴訟への対策はない。医師個人賠償責任保険に入ることが必須

2016年12月19日

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