2016年7月、神奈川県で19人もの障害者の方が殺害されたというニュースがありました。
相模原障害者施設殺傷事件(さがみはら しょうがいしゃしせつ さっしょうじけん)は、2016年(平成28年)7月26日未明、神奈川県相模原市緑区千木良476番地にある、神奈川県立の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」に、元施設職員の男A(犯行当時26歳)が侵入し、所持していた刃物で入所者19人を刺殺し、入所者・職員計26人に重軽傷を負わせた大量殺人事件である
加害者の素性が明らかになるにつれ、その行動の異常性や、思想の異常性というものがクローズアップされるようになっています。
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この事件はかつのナチスドイツの思想のようである
「障害者を劣った人種として殺害してもよい」という思想は、アーリア人を頂点とするナチスドイツの考え方に似ている部分があるように思います。
かつてのナチスドイツはこのような優生学的な考え方の元、ユダヤ人、障害者、女性などを躊躇なく殺害した歴史があります。
この考え方を広く考えていけば、高齢者は殺害してもよい、税金納めていない人間は殺害してもよい、といったエスカレートした考えに繋がり兼ねません。
社会との接点を持つことができない人がいる事実
入所者の中には社会との接点をほとんど持つことができずに、何十年も生活していた人がいる、ということも明らかになりました。
普段の生活をしていると、今見えている世界がすべてである、と錯覚してしまうことがあります。
しかし私たちが普段見ている人や接している人は、社会全体から見ると決してその全てを見ているわけではないのかもしれません。
この事件は、多くの人々が殺害されたという驚きとともに、普段は意識されることのない日本の障害者福祉にも目を向けるきっかけになったかもしれません。
ある精神科病院での当直体験
私が研修医を終えたころ、先輩からある病院への当直依頼がありました。
当時お金が欲しかった私は、依頼を快く引き受けました。
当直先の病院は、ある都市の郊外に位置している精神科の病院で、ベットの数などを考慮するとそこそこの規模の病院です。
私が当直したのは日曜日だったのですが、記録として一言カルテに記載する必要があり、入院している患者さんの記録を見る機会がありました。
精神科病院に何十年も入院している患者がいる事実
精神科病院の当直で驚いたのは、多くの患者さんが何年もそして何十年も入院し続けていることです。
例えば統合失調症を若くして発症し、薬物でうまくコントロールできない場合は、社会生活を送ることが困難になります。
家族の献身的なサポートがあれば自宅で生活することは可能ですが、病状が重い場合、身寄りがいない場合、両親が高齢の場合にはそれも難しくなります。
そのような患者さんはやはり病院内で生活を送ることが必要になるようです。
患者さんの住所の項目に、その病院の住所が書かれているのは、なんとも驚きそして悲しい気持ちになりました。
そのほかにも、てんかんや種々の精神障害で何年、何十年も入院している患者さんがたくさんおられました。
大都市郊外のコンクリートの建物中で、社会との接点をほとんど持たないまま暮らしている人がいるという事は、若い私にとっては衝撃的でした。
家と職場だけを往復する日々を送っていては、決して意識されない現実です。
相互扶助・社会資本を生かす
このような病院や施設で何十年も生活している方というのは、私たちが普段の生活で見えていないだけであり、実際には確実に存在しています。
たとえば統合失調症の発症率は1%と言われており、そのうちの何割かの患者さんは正常な社会生活を送ることが困難になります。
このような精神疾患になるかならないかは、くじ運みたいなもので、社会で暮らしている人間は相互扶助という観点から、ひっそりと支えて行くということが必要なのかもしれません。
これは何も障害者の方に限った話ではなく、児童施設に入っている両親のいない子供、身寄りの無いお年寄りなど、私たちが普段見ている社会というのは、ほんとうの実際の社会よりも少し狭いのかもしれません。
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