(これは研修医時代に書いた記事です。適度にリライトしております)
2013年になって早くも2ヶ月、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
最近の研修医生活としては、麻酔科、精神科などをローテーションしておりました。
そんなローテーションをした時のお話です。
精神科はいろんなことが起こる
私の研修病院では精神科の医師が7、8名ほど勤務しており、地域でも有数の規模の精神科を備えていました。
精神科救急も担当しており。地域の精神科救急患者を診療する精神科当直というものがあります。
精神科当直では、夜の8時くらいにやってきた30代の女性を一緒に診察したりしました。
ある30代の女性の例
(個人を特定できないよう、一部修正加筆しております)
この30代女性の前情報としては、気分の変動が激しく過量服薬、自傷行為のエピソードが何回かあるようです。
子供がいるために、子の安全と夫の要望、そして市役所の子育て担当者の意見を考慮して今回は入院前提の受診となったようでした。
身長は155cmほどでありながら、BMIは軽く30はあるだろうという巨体を持つ20代女性をいざ目の前にして、「暴れだしたりしたら止められないな」、などと思いながら見学しておりました。
上級医が診察するその話を聞いていると、女性はどうやら、姑、近所付き合いなどのことでいろいろと心理的ストレスを抱えているようでした。
女性の話を聞く限りではPersonality障害、適応障害などが鑑別に挙がるといったところでしょうか。
ああ、このまま入院して一件落着かと思いきや・・・
女性も入院加療の必要性をある程度理解しているようで、ああこのまま当直とはいえ無事に入院かと思った矢先。
空きベッドの関係で鍵付きの隔離室しか空いていない(本当はいろいろ事情があったのですが)ということを告げると女性は大激怒。
「施錠されるなんて犯罪者と一緒だ!」
「お前らにつらさが分かるのか!」
などと騒ぎ始め、一転して入院には拒否的に。
夫の同意を得て医療保護入院に切り替えようと上級医がするも夫は煮え切らず。
結局は女性を説得しつつ話し合いが2時間ほどもたれることに。
話し合いと言っても女性には精神的な障害があり、一般人を説得するのとはわけが違います。
どんなに丁寧に理路整然と説明したとしても、それらを受容できる素地がないのですから理解されるはずもありません。
言って見れば植物に語りかけるようなものです(暴言を吐く分、植物よりたちが悪いかもしれません。。)
長々と話し合った結論は、徹底した内服管理のもとで1週間後再診ということになり、ご機嫌で帰っていきました。
我々研修医や精神科医師の努力は無駄であったわけです。
精神科はつらいよ
この当直で痛感したことですが、精神科の先生は本当に尊敬します。
ふと考えてみると、患者から暴言を吐かれる機会が一番多いのは、精神科の医者なのかもしれません。
医療者に暴言を吐く患者を目の前にして「この人は病気だからこういう態度をとるんだ」と考えて、表面上は丁寧に対応する必要があります。
そんな暴言の原因となっている精神的な問題を見抜き、適切に対処しなければならないのです。
大変お疲れ様です。
楽なイメージがあり、女医さんや若手医師に人気の精神科ですが、結構しんどそうです。
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