QOLが良いとされている診療科に関する考察。皮膚科や麻酔科は本当に楽なのか?

数ある診療科の中には、QOLが良いとされている診療科と、そうでない診療科があります。

このうち眼科や皮膚科、麻酔科などはQOLの良い診療科の代表格であり、女性医師の割合も多くなっていますね。

本当にこれらの診療科は楽なのか、考察してみましょう。

眼科

手術、病棟管理、外来などを行うオールマイティな診療科ですね。

眼科の手術はその手術の内容にもよりますが、局所麻酔でできるものが多いですね。

そして手術時間もそう長くはありません。

眼科の手術で予定時間12時間なんてのは、特殊な手術だけであって、一般病院では出くわすことはないでしょう。

そもそも存在するのかどうかわからないですが・・・。

ですから、眼科の手術があまりにも伸びすぎて旅行の予定がキャンセルとか、レストランに食事にいけない!なんてことはあまりないでしょう。

全身状態良い患者さんが多い

また地域の総合病院・基幹病院では、入院病棟があって患者を診なければならない場合もあります。

しかしこれは少数派でしょう。

入院するにしてもとりあえずは目の病気だけですから、そこまで手のかかる患者さんがいるわけではありません。

そもそも眼科疾患よりも重篤な全身状態がある患者さんの場合には、眼科病棟ではなく違う診療科に入院することになるでしょうね。

ですから病棟を持っているような病院の眼科の場合であっても、休日の当番の仕事はすごく限られていることが予想されます。

それに眼科疾患が原因で救急外来にやってきて、休日や夜間に呼び出されることもあまりないでしょうから、時間外対応という点についても眼科は魅力的な診療科ですね。

こう考えてみると、眼科だからといって時間外対応がゼロというわけではないでしょうが、比較的QOLを維持しやすい診療科であることは間違いなさそうです。

皮膚科

眼科と同様に、手術、病棟管理、外来までを行う総合的な診療科です。

しかしながら眼科よりもQOLは低くなると心得るべきでしょう。

手術に関しては眼科と同様で、そこまで時間のかかる手術は無いでしょうね。

しかし、病棟管理については少し毛色が変わってきます。

皮膚科の場合には、大学病院や地域の基幹病院では、皮膚の悪性リンパ腫や皮膚がんの患者さんを見なければなりません

ときには化学療法を主体となって行うこともあるでしょう。

重篤な全身性の皮膚疾患の場合も同様で、病棟管理においてはすごく管理が難しい症例もあるでしょう。

きには重篤な患者さんの全身管理をしなければなりません。

私が大学病院に勤務していた際にも、皮膚科の先生は結構重症な患者さんの病棟管理をしていて、大変そうでした。

皮膚科といえど、皮膚がんや皮膚のリンパ腫ともなると全身的な管理が求められるのです。

このように考えると、休日や夜間の呼び出しも決して少ないとは言えないでしょうし、病院の診療している患者さんによっては、決してQOLが高い診療科とはいえなさそうです。

麻酔科

麻酔科の1番の魅力は、何といっても入院患者を見る必要はなく、オンオフがはっきりしていることです。

入院患者を見なくて良いのは、麻酔科の非常に特権的な地位であると言えるでしょう。

平日の手術に際しては手術終了まで付き合う必要があるわけですが、手術が終わってしまえばその後はフリーです。

5時からアルコールも十分可能なわけです。

一方で麻酔科も絶対的にQOLの高い診療科とは断言できない部分もあります。それは時間外の対応です。

緊急手術や臨時手術に際しては、外科医だけでなく麻酔科医も召集されるわけですが、今やどこの病院でも麻酔科医の数は不足しており、負担は決して少なくありません。

特に医師の絶対数が少ない地方病院なんかでは、限られた人材で当番を回さなければならないですから、必然的に当番の回数が増えてきます。

そうなってしまうと、2週間に1回とか3週間に1回の頻度で土日が当番にあたってしまい、休日でも気が休まる日がないという自体に陥る可能性があるのです。

平日もしかりで、1週間に1回は当番にあたるなんて事態が発生しうるのです。

私の同級生の麻酔科医も、地方の病院に勤務していた時には、平日と休日の3分の1が待機当番にあたっていたようで、心休まる日がなかったようですね。

こうなってしまうと、もはやQOLの良い診療科とはとても言えず、むしろ人数の揃っている内科系の診療科よりもQOLが低くなってしまう事態も起こり得るのです。

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放射線診断科

放射線診断科も、病棟患者を見なくて良いという絶大な利点がありますね。

画像診断するだけであれば、休日は完全なオフであり、夜間や休日も病院に呼び出されることはありません。

まさに理想的な QOLの良い診療科です。

しかし、これまた総合病院などで血管内治療担当するようになると、状況は異なってきます。

救急診療を手広くやっているような規模の大きな総合病院では、外傷などの際に出血が見つかった場合にカテーテルによる止血術が選択される場合が多くあります。いわゆるIVRってやつです。

IVRはインターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology)の略です。

日本語訳として一般的に「放射線診断技術の治療的応用」という言葉が用いられますが、「血管内治療」、「血管内手術」、「低侵襲治療」、「画像支援治療」もほぼ同義語として使われています。

エックス線透視や超音波像、CTを見ながら体内に細い管(カテーテルや針)を入れて病気を治す新しい治療法です。

日本IVR学会

特に骨盤内損傷や腹部臓器の損傷に関しては、よく行われることが多いかと思います。

したがって外傷患者の対応のために、IVR当番が決められいてるような病院も少なくもありません。

もともとどこの病院でも放射線診断医の数は多くありませんから、もし当番制になってしまうとその当番の頻度はすごく多くなってしまうのです。

もしIVRができる医師が3名しかいないにも関わらず、当番を回さなければならないとなると、3日に1回は当番があたり行動が制限されるという事態になるのです。

病院ごとによっても救急診療にどれほどの力を入れているのか、IVRの呼び出し頻度がどれくらいかによるのですが、病院によっては放射線診断科のQOLは必ずしも高いとはいえないのですね。

病理診断科

病理診断科も、入院患者をみなくてよいQOLの良さそうな診療科ですね。

しかし病理診断日のQOLを押し下げている1番の要因が、病理解剖です。

そこそこ規模の大きな病院では、病理解剖をする施設などが整えられていて、病院の中において死亡原因がはっきりしない患者に関して病理解剖が行われることがあります。

平日深夜の死亡であるならば、翌朝・朝一番の対応でも問題ないでしょうが、休日であれば翌日に解剖を回すことは現実的ではないでしょう。

亡くなったとご遺体を長く保管しておくことはできませんから、基本的には即日の対応になります。

そのような場合には病理解剖のできる病理診断医が病院に呼び出されることになり、病理解剖を行なっていく必要があるわけですね。

総合病院であっても勤務している病理診断医の数は限られていますから、病理解剖当番に関して必然的に当番の回数が増えます。

年末年始や大型連休に当番が当たることもよくあるそうで、そうなってしまうとどこかにお出かけするなんてこともできないのです。

病院の中で行われる病理解剖の概要について。死因を特定するために行われる解剖

2017年12月30日

QOLの良い診療科はあるのか?

ここまで一般的にQOLの良いとされている診療科について考察してきましたが、どこの診療科もそれなりに大変そうです。

時間外対応がゼロとか、休日は完全オフの診療科をみつけるのは大変そうです。

QOLの良い働き方を目指すにあたって心得ておくべきは、診療科の違いよりも病院の違いを重視すべきことでしょうか。

病棟管理の不要な病院の眼科や皮膚科であれば休日の完全オフは十分可能でしょうし、内科だって同様のQOLの高い働き方は可能でしょう。

QOLの保証された幸せな診療科を探すのは決して簡単ではないのかもしれませんね。

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