大学入学共通テストで試験監督をしたときのおはなし

大学の教員として働いていると避けて通れないのが、大学入学共通テスト(むかしはセンター試験)の試験監督です。未熟ながら初めて試験監督を経験したので、その時の記録を忘備録的に書いておきたいと思います。

事前のレクチャー

試験監督を行うにあたっては、まず事前に大学側からレクチャーがあります。講堂に集められたりオンラインで、注意事項の説明があるのです。

試験会場にはマニュアルを読み上げて受験者に指示を与える監督責任者と、問題用紙を配ったりする監督者など役割が与えられています。

過去にいろいろなトラブルがあったからなのか、渡されるマニュアルは何百ページにも及び、とても一つ一つを覚えきれるものではありません。管轄する独立行政法人のお役所的なものなのでしょうが、「まあとりあえずレクチャーを受けました」というような、分かったような分からないような状況のままに本番に挑みます。

当日の流れ

まず時刻までに試験会場に集合するように案内があります。

会場に到着すると指定された待合室で準備をすることになります。試験監督といえども非常に疲れる仕事かつ責任感のある仕事などで、待合室の中での試験監督は私語もなく、ほとんどの試験監督間がマニュアルを熟読していました。

試験開始時間が近づくと試験本部に集まるよう指示されます。そこで試験の統括者から全体的な指示や特記事項等が告げられ、試験室ごとに問題用紙・回答用紙、その他必要な物品を持っていくことになります。この時点でスマホで問題を写真に撮り、SNSへ流出すれば間違いなく全国ニュースになりますので、それぐらい責任感のある仕事といえます。

ちなみに身内にこっそりと問題が流出しないように、御子息に当該年度の受験者がいる場合には、一応のところ試験監督から外れるように調整されているようです。試験監督と言っても問題を受け取るのは試験開始の20分前くらいなので、流出したところでその情報が受験生に届くかどうかは微妙なのですが…

さて自分の受け持ちの部屋に到着してからは、黒板に板書をしたり、問題用紙や解答用紙を用意したりと、かなり慌ただしくなります。受験生に案内をする時間や文言は全てマニュアルに指定されており、試験室の責任者はその文言を読み上げるだけなのですが、そのマニュアル通りに全て行ったとしてもかなり時間がタイトです。私も側で主任監督者がいろいろと文言を言うのを聞いていましたが、時間的な余裕は数分しかないといったところです。

独立行政法人、文部科学省には試験監督がもうちょっとゆったり進行できるようにマニュアルを考えてもらいたいものですね。

一方でいざ試験が始まると、一転して特にやることがなくなります。試験会場の巡回とか、替え玉受験がないかどうか写真の照合などを行います。

私が担当した部屋は受験生がせいぜい20-40人程度でしたので、怪しい行為を少しでもすればすぐわかるような距離感でした。おまけに席と席の間隔も狭かったことから、あまり部屋の中は巡回しませんでした。受験生にとっては頻繁に側を歩かれても迷惑でしょうからね。

試験終了が近づくと試験終了時刻の打ち合わせを試験官同士でおこないます。試験時間の十分な確保と言うのはセンター試験の中でも1番大切なところですから、間違えないようにマニュアルでは再三記載がありましたし、我々も充分注意していました。

試験が終わると回答用紙を回収し試験本部に持っていきます。これを1日中繰り返します。

大変なリスニング試験

共通試験1日目の最後の教科は外国語になります。そして一番最後にはリスニングの試験が行われます。

このリスニングの試験は専用のICプレイヤーを使って音声を聞き取るわけですが、どうやらここでは幾多のトラブルが起こってきたらしく、試験監督としては1番神経を使うところがあります。

試験監督の説明の中でも、リスニング時の対応やトラブルシューティングは特別にマニアルが作成されマニュアル通りに対応することが求められます。マニュアルには数十ページに渡っていろいろと書いてあるわけですがそれらを全て覚えきるのはほぼ不可能と言っても良く、何かトラブルが起こった場合には、すぐに試験場本部に指示を仰ぎに行こうと思っていました。

今回私が担当した教室では、リスニングに関するトラブルを起きませんでした。受験生自身はこれまでの模試などで機器の扱い方には慣れていますし、トラブルが起これば基本的には直後の再開テストを受けるよう指示されるだけなので、最終的に大きな揉め事になる確率はすごく低いと思います。

ただし相手は機械ですから、不良品が混じっていることがあるでしょうし、また緊張した受験生が操作を間違えて、試験監督が何らかの対応をしなければならない場合もあるでしょう。いずれにしてもリスニング試験はやはり神経を最も使う部分であることは間違いなさそうです。

試験監督も楽ではない

上述したように、試験監督の仕事は問題用紙・回答用紙の配布と回収、試験時間中の監督業務のみで、トラブルが起きなければ仕事としては非常に単調です。

しかしながら、トラブルが起きないか、ミスを起こさないかということに注意して仕事をしていますから、非常に神経を使います。その意味では共通試験の試験監督は非常に疲れるものです。

過去には試験監督中に居眠りをした試験監督に関して受験生からクレームが入り問題となったり、試験時間中に試験監督の携帯が鳴って再試験となった事例もあったようです。そしてどちらもニュースで大々的に報道されてしまいました。また終了時刻を間違えて数分試験終了が早まっただけで、再試験の対象になったりもします。

ちなみに携帯電話やスマートウォッチに関しては、試験監督も試験室ないには持ち込むことのないようマニュアルに記載があります。

このようになミスを防ぐために、事前の研修では色々と言われるのですが、といっても10年連続試験監督をしているようなベテランでもない限りほとんどみんな初心者のわけで、なかなか正確に試験監督を行うのはつらいものがあります。

それに最初から最後まで1日中試験監督業務を行うとなると、休み時間がほとんどありません。回答用紙を試験本部に持っていってから次の試験の問題用紙・回答用紙を受け取るまでにはせいぜい10分か15分位の休憩時間しかなく、またお昼休みも30分ぐらいしかありません。ですので、リラックスする時間があまりないのです。

新型コロナの影響…

本年度は新型コロナウィルス対策もあり、受験生は全員マスクが必須、かつ換気が必要とのことでドアも開けっ放しでしたので、かなり試験室は寒かったです。受験生全員が同じ条件とは言え、かなり厳しい条件での受験だったのではないかと思います。

これは試験監督も同様で、監督責任車はフェイスシールドが必須だったり、休憩時間での換気が必要だったりと、試験監督者の業務も増えていたようです。おまけに寒い教室の中で長い時間を過ごさねばならないので、試験監督も新型コロナの影響をたくさん受けていたように思います。

当日の服装について

服装ですが、95%以上の人がスーツでした。受験生の命運を左右する大事な試験ですから、緊張感を持つ意味でもスーツが大事なのかもしれません。一部の試験監督の中には、ジャケットにパンツスタイルの方もおられ、全く違和感はありませんでした。

ですのでスーツっぽいフォーマルな服装なら、問題ないかと思われます。ただしいずれにしてもカジュアルな服装は好ましくなく、スーツであれば無難と言ったところでしょうか。

ちなみに試験場の外を監督する人の多くは、私服の人が多かったように思います。百戦錬磨で何回も経験しているからそうなっているのかわかりませんが、実務上は全く問題はないようです。

来年も試験監督をやりたいか?

現時点では今回の試験監督の報酬がいくらか分かりません。せいぜい1−2万円くらいではないかと推察しています。

試験監督をやってみて思ったのは、すごく大変な、責任感のある仕事であるということです。ですので、来年も試験監督をやりますか?と言われたら、丁重にお断りするのではないかなと自分自身思います。試験監督もらくじゃない…

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