大学病院の役割は臨床・研究・教育が基本。患者さんを診療しているだけではない

大学病院の役割は、臨床・研究・教育の3つが良く言われています。新任教授の挨拶でも「臨床、研究、教育を高いレベルにまで・・・」などといった文言が高確率で出現します。

病院というと、患者さんの治療をしているだけ、と思いきや、実際はそうではないんですね。

大学病院と呼ばれる、医師を育てるための医学部を有しているような病院であれば、研究とか、教育とかも重要になってくるわけです。

ここでは、それら3つの役割について、解説してきたいと思います。

臨床

臨床」とはどこの病院でも行われている、患者さんと向き合って病気を治療する、一般診療にあたります。風邪の患者さんを治療したり、がん患者さんを治療したりというのは、まさに医師の臨床業務な訳です。

大学病院には教授、准教授をはじめとして多くの医師が在籍、日々診療にあたっています。大学病院の臨床業務は、他の一般病院とは少し異なっています。

珍しい病気を診療する

大学病院には最新の機器などの設備が整っており、治療する上で多くのマンパワーと高度な技術を要求される疾患を治療する役割を担っています。

たとえば100万人に1人しか見られない疾患を治療する場合を考えてみましょう。

すごく珍しい病気であっても、大学病院でまとめて患者さんを診療すれば、大学病院の医師にとっては、それは珍しい病気ではなくなります。

また各病院で手探りで患者を診察するよりは、一つの病院で経験のある医師が、まとまった診療を行う方が治療成績も上がるでしょう。

臨床に費やす時間の割合が少ない

また、後述するように、大学病院は臨床業務以外の業務もたくさんあるので、臨床だけに費やす時間の割合は、一般病院に比較して少なくなりますね。

また、低い給与を補うために、関連病院にアルバイトに行ったりもしています。ですから、大学病院に週5日勤務という医師は少なく、多くは週4日とか、週3.5日勤務というふうになっています。

したがって、大学病院に医師が多いのは事実なのですが、その分一人当たりの担当患者は、地域の総合病院に比べると少なくなります。

医師の臨床能力は、一定レベルを保つために常に磨かれていなければなりませんから、担当患者の少なくなる大学病院に勤務し続けていれば、必然的に臨床能力が落ちてきます。

実際のところ、多くの医師は大学病院と地域の総合病院を行ったり来たりしていますから、大学病院の医師イコール臨床能力が低いということにはなりません。

しかし、10年間大学病院で勤務し続けた医師と、10年間地域の病院で勤務し続けた医師を比較した場合、必ずといって良いほど後者の方が臨床能力は上だと思われます。

例えば外科医ということを考えると、一人のすごく手術がうまい名医と、そのほかのたいして手術をしていない、手術の上手でない医師、というように2極化の傾向にはあるかと思います。

検査や手術の待機時間が長い

大学病院の規模は、病院の中では最も大きい規模に分類されます。

多くの大学病院はベッド数が1000近くですから、航空機の座席数で言えば、ジャンボジェットのような存在になります。

組織が大きくなればなるほど、スムーズな診療というのは難しくなってきます。例えば医師の外来も混んでいますから、検査もすぐには予定できないことが多いですね。

手術に関しても2-3ヶ月まで予定がいっぱい、ということもありますから、病状的に急ぐ手術であれば、大学病院ではなく関連病院で手術、ということも行われます。

研究

大学病院では数多くの研究が行われています。

新薬の効果を検証する臨床試験、実験動物を用いた新しい治療法の開発など、ほとんどの診療科で、なんらかの研究が日々の診療とともに行われています。

研究を行うにはたくさんの時間とヒト、お金が必要ですが、大学病院には幸いにもそれらが備わっています。

したがって医学研究はもっぱら大学病院かそれに準ずる施設でのみ、一部の研究所でのみ行われていると行っても過言ではないでしょう。

大学病院には研究のできる医師がいる

この医学研究というのは、大学病院の大きな特徴かと思います。大学病院で長く働く限りは、研究とは無関係ではいられません。

というよりも、研究が好きで、かつ研究業績のある医師だけが、大学病院での勤務を許される、そんな実際かと思います。

研究にはお金が必要と書きましたが、研究のセンスがなかったり、業績がない人間の行うというのは、これは税金の無駄遣いです。

ですから、医者になって長い間研究を行えるのは、必然的に業績のある人に限られてきます。

出世するためにはたくさん研究する必要あり

また、教授という役職を目指すのであれば、必然的に研究で業績をあげることが必要になってきます。

もちろん、臨床業務で一番になるというも、教授には必要な条件ですが、いわゆる医師としての腕の客観的な評価は、なかなか難しいものです。

あの先生の診断は的確だ、というのを客観的に評価するのは難しいですね。

一方で、医者ごとの論文の数は、客観的に評価できてしまうわけですから、医者にとっての研究力の評価というのは、論文の数になってくるわけです。

ちなみに医学研究を専門に行うのは、一般的に研究医と言われています。

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教育

医学部の学生が5、6年生になると、大学病院での実習を開始します。

また、大学病院には多くの研修医、若手医師が在籍しており、研鑽を積む場としても機能しています。

したがって、大学病院で勤務する医師の重要な役割の一つに、学生や若手医師の教育という役割があるのです。

教育をがんばったかどうかは評価されない

教育は大学病院の重要な任務なのですが、残念ながら医師ががんばって学生を教育したかどうかは、評価はされないです。

熱心に学生や研修医を指導したとしても、それは良き指導医、という評価のみであって、給与の上昇や昇進には全く関与しません。

むしろ、教育にかける時間について研究を行い、研究業績をあげたほうが、大学病院では仕事のできる医師、という評価になってしまうのです。

それだけ大学病院での教育というのは、ウェイトが低くなっているのです。

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まとめ

大学病院での3つの役割について書いてきました。

若手の先生であれば臨床や研究を中心に、教授や准教授であれば、教育や研究を中心に業務を行なっていくことになります。

中堅の医師たちは、臨床、研究、教育をすべて等しく行う必要があるわけですから、非常に忙しいですよ、というわけなのですね。

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