【勤務医の視点】いわゆるブランド病院について。病院の特徴と研修医がはたらく意義とは

全国いたるところに存在している研修病院には、ブランド病院というのが存在していますね。

ブランド病院の定義ということについて、決まりきったものはないと思います。Googleで検索しても、はっきりとした記載はありません。

ここでは、ブランド病院に研修医として働く意味、ブランド病院で研修を終えた後のことなどについて考察しています。

ブランド病院のぼんやりとした定義

暗黙の了解のうちにブランド病院における共通の認識としては、以下のような特徴があるかと思います。

ブランド病院の特徴
  • 全国的に名前が知られている
  • 研修医の教育がしっかりしている
  • 理想の研修病院として語られることが多い
  • マーチングで第一希望とする学生が多い
  • 英語能力が重視される
  • 著名な医師が研修を行っていることが多い

あんまり特定の病院名を書くのは控えますが、千葉県のK病院、東京のS病院、大阪のK病院、沖縄のC病院なんかが、誰もが認めるブランド病院ではないでしょうか。

この他にも全国的に名前の知られた研修病院は数多くありますね。書いていて思いましたけれど、どんどん浮かんできますね。

【勤務医の視点】研修医が東京の病院で働くことのメリット。多様な働き方を念頭に

2018年8月12日

ブランド病院の研修医の特徴

ではそのようなブランド病院に勤務している研修医の特徴とは一体どんなものでしょうか。

実は私の大学の同級生も、いわゆるブランド病院で研修を行っていました。

その先生たちを思い浮かべてみて思いつく共通点というのは、高いコミニケーション能力、精神的・肉体的なタフさ、そして医療に対する情熱、人間的な信頼性を持っていることでしょうか。

つまり簡単な話が、理想的な医師になるでしょうか。

もちろん体力的なものだけでなく、ブランド病院では英語の能力や、高いプレゼンテーションの能力が要求されますので、彼らは非常にクレバーでした。つまり頭が良いのです。

私みたいに医療に対してあまり情熱がなく、人間的にも魅力がないような人間がとてもやっていけるような病院ではありません。

ブランド病院研修医の進路

さてブランド病院で研修を行った研修医は、どのような進路をたどるのでしょうか。

理想的なモデル

もちろん理想とされる進路は、米国に臨床留学を行い、素晴らしい業績を上げてアカデミックなポストでがんばることでしょうか。

実際にこのキャリアが医師のローモデルとして、ブランド病院では取り上げられているような気がします。

多くのブランド病院は、外国の医師を招聘したり、英語教育の時間を設けたり、短期留学のプログラムを用意したりして、本格的な臨床留学への道を用意しています。

アメリカに留学するためには、USMLEと呼ばれる米国の国家試験を何段階も突破し、かつ異国の病院で使える英語能力を身に付けなければならないですから、ハードルは非常に高いです。

そもそもアメリカに臨床留学をするというのは非常に狭き門ですし、留学したからといって、アカデミックなポストにつけるわけではありません。

このような素晴らしいキャリアを詰めるのは、ブランド病院の中でもごく一部の研修医と考えたほうが良いでしょうね。

大学の同級生の進路

私の知っている何人かの先生の進路は様々です。

上に書いた通り、ブランド病院というのは非常に精神的・肉体的な体力が要求されます。

残念ながら途中でドロップアウトしてしまった先生も何人か存じ上げています。

その他、ブランド病院での研修を終えて地元の大学病院の医局に入局した先生、研修したブランド病院で勤務を続けている先生なんかもおられます。

ブランド病院に行く前によく考えるべきこと

ブランド病院で研修を行う事は、一般的な市中病院に比べれば充実する研修を受けることができるでしょう。

英語能力も、一般の大学病院の研修医に比べれば、アップする可能性はあります

ただし、これらが将来的な出世につながるかということになると、よく考えてみる必要があります。

その前に、ブランド病院で勤務することにより、どのようなメリットがあるのか、果たして労力に似合うだけのリターンがあるのかを、よく考えておく必要がありそうです。

将来的な出世について考える

出世に関して、論文的な業績を積んで、大学の教授になるということであるならば、必ずしもブランド病院で働く必要はないでしょう。

大学の教授になることに関しては、充実した研修を受けたかどうかということよりも、いかに基礎研究で業績を積み上げるかや、重要な臨床研究のリーダーになれるかどうかということにかかっています。

前者の場合には、やはり基礎研究の主体である医学部の研究室や、理化学研究所などの専門機関で研究を行い、こつこつ論文を書いて業績を積む必要があります。

また臨床研究に関しては、いまや自分1人の力ではどうすることもできないので、基本的にはその時々の医局の人事や、専門分野、運とタイミングに左右される部分が多いかと思います。

つまり偶然的に重要な臨床研究のリーダーを任されたということが重要になってくるわけです。

このように考えてみると、大学のアカデミックポストを登ることだけを考えるのならば、必ずしもブランド病院で研修を行う必要はないでしょう。

むしろ、一流雑誌に掲載されるような業績は基礎研究・臨床研究問わず大学以外では不可能に近いので、ブランド病院だけで業績を積むのは非常に難しいでしょうね。

つまり、ブランド病院で研修医から長く働いていたとしても、「臨床能力に優れた医者」になれるかもしれませんが、学会で発言権を持つような「出世した医者」にはおそらくなれない、ということになります。

さらにブランド病院にマッチングするための準備や、研修医期間の労働に時間を費やすのであれば、学生時代から大学病院・医学部に依存し、基礎研究に注力した方がトータルの費用対効果は良いでしょう。

ブランド病院を経由して米国で業績を積む

もちろんブランド病院を経由して、臨床的な業績を米国で積む素晴らしいルートも存在します。

日本にも、そのような先生が何名か教授になっていらっしゃいます。

ただ、これはスーパーマンみたいなすごくできる先生と捉えた方が良いですね。

ブランド病院を外から見ていて感じること

私の病院の近くにも、毎年マッチングの倍率が2倍とか3倍になるような、全国から研修医が集まるザ・ブランド病院があります。

総合内科なんかは花形で、ご高名な先生が集まっている印象はあります。

一方で他の診療科に関しては、必ずしも生え抜きの医者だけで構成されているわけではなく、近隣の大学医局から派遣されている診療科もあります。

私の専門分野でも、学会なんかではブランド病院の先生方の研究発表に関しては、ほとんど存在感がありません。

某ブランド病院のある診療科では、私の勤務している病院の同じ診療科より医師数が少ないところもありますね。

病院全体としての魅力を発信し、研修医集めを行なっているブランド病院ですが、個々の診療科のレベルが、果たして優れているのかということに関しては確証はありません。

ブランド病院で臨床能力を高めるとはいうものの、自らの専門分野と照らし合わせて、本当に質の高い研修ができるのかどうか、見つめる必要はありそうです。

まとめ

結局のところ、何を求めてブランド病院に勤務するのかということになってくるかと思います。

ブランド病院で勤務することは、非常に大変そうです。同期の研修医との競争もあるでしょうし、知力や体力が求められます。

それらを考慮したうえで、充実した研修を受けることを目的とするのか、それともごく一部の臨床留学と言う狭き道を目指すのか、医師として立派な人間になるか、何を求めるかは人それぞれでしょう。

将来のキャリアプランを考慮しながら、考えていく必要がありそうです。

【医師の視点】研修病院ごとの特徴を知り、正しいマッチングを行うことが大切

2017年12月15日
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