【医師の考え】サプリメントや健康食品でがんが治らない3つの理由

インターネットが発達し、患者さんがいろいろな情報を素早く手にするようになって、間違った医療情報も格段に増えています。

がんが治る」「ガンを予防する」などと謳った健康食品やサプリメントが氾濫し、法外な価格で売られようとしています。

残念ながら、そんな美味しい話はないと心得るべきでしょう。

サプリメントや健康食品ではがんは治らない理由

どうしてサプリメントや健康食品ではがんを予防したり治せないのでしょうか?

まあ一言で表すなら効果がないからなのですが、現状の抗がん剤治療の観点から、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

抗がん剤は研究開発費が桁違いに高い

医学の発達に伴って、抗がん剤の分野は急速に発展しています。

2000年代に入ってからは分子標的薬と呼ばれる、がん細胞に特有の分子に作用する新たな抗がん剤が発売されてきました。

アバスチン、イレッサ、スーテント…巷でよく聞くこれらの抗がん剤は、すべて分子標的薬です。

これによって大腸がん、肺がんなどの病気では、劇的とも呼べる治療効果を示す患者さんも出てきました。

さらに2015年ごろになってからは、オブジーボに代表される免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる、新たな作用の抗がん剤が発売されてきました。

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ところえこれらの抗がん剤は研究開発に莫大な費用を要します。

製薬会社も商売として新たな薬の研究開発に日々勤しんでいるわけですが、がんに効果のありそうな化合物を見つけ、実際の現場で本当に効果があるのか臨床試験の場でテストし、実際に発売するまでには巨額の資金投資が必要です。

新規抗癌剤の開発には、何百億円という莫大な投資が必要になることもあります。

抗がん剤の開発競争は激しく、多くのヒト・モノ・カネを必要としているのです。

もし適当な植物由来の成分を抽出した健康食品やサプリメントが本当に効果があるのならば、製薬会社はこぞってそれらの成分から抗がん剤を生成するはずです。

適当な成分から作る健康食品やサプリメントは、正規の抗がん剤に比べて安価で開発できることは間違い無いですから。

医薬品としての厚生労働省の認可がない

いわゆる健康食品やサプリメントには、医薬品としての厚生労働省の認可がありません。

というよりも認可があればそれは医薬品であり、認可がないからこそサプリメントや健康食品の域を出ないわけです。

そしてなぜ厚労省の許可がないかといえば、これはがんを治すだけの効果がないことの裏返しでもあります。

標準医療として医療現場で使用されている抗がん剤は、副作用のリスクがあり、薬価も非常に高いものばかりです。

これらは患者さんに対して身体的な負荷をかけるばかりでなく、金銭的な負担も強いているのが現状です。

もし現在市販されている健康食品やサプリメントが、これらの抗がん剤にとってかわるくらいの効果があるならば、絶対にそちらの方が良いですね。

健康食品やサプリメントは、高額であるとしてもせいぜい月にかかる費用は数万円程度ですし、生命に危険が及ぶほどの副作用もありません。

なぜ実際の医療現場に健康食品やサプリメントなどが導入されないのか。それは冒頭に書いた通り、単純に効果がないからです。

上に述べた抗がん剤は、厳しい研究開発の過程で科学的にその作用機序が解明されています。

一方で健康食品やサプリメントには、その詳細なメカニズムが分かっていないものが多いのが現状です。

そもそも効果があまり無いことは販売している健康食品会社も暗黙のうちに知っているでしょうから、あえて調べる必要がないのかもしれません。

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ガイドラインに示されていない

医師ががん治療をおこなう際には、各がんにおける治療ガイドラインに沿って治療をおこなっていきます。

病気の進行がこれくらいの症例であれば手術を行うとか、もう少し進行すればこの抗がん剤と別の抗がん剤を組み合わせる、それとも放射線治療を行う、などといった具合です。

このガイドラインは各専門分野のの学会によって作成されており、がん治療を行う医師にとってはバイブルのようなものになっています。

そして残念ながら、健康食品やサプリメントについてはどのがんのガイドラインを見回してみても記載がありません。

食道癌のステージ1にはサプリメントの使用を推奨、なんて文言は間違ってもないのです。

つまり標準的ながん治療を行なっている限り、サプリメントや健康食品を患者さんに使うことは絶対にないのです。

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まとめ

以上のような理由で、健康食品やサプリメントをがん治療に用いるのは正しいことではありません。

患者さんの中には抗がん剤は副作用がつらいから、手術は大変だからといってサプリメントや健康食品を頼られる方もいます。

医師からすると説得はできても力ずくでやめさせることはできないのですが、とにかくあまり褒められたものではありません。

ぜひ間違った医療情報に惑わされないようにし、正しい治療を受けてもらいたいものです。

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