画像の検査でよく行われている検査の1つに、CT検査があります。
このCT検査を英語ではcomputed tomographyといい、病気がないかどうか、治療したがんが大きくなっていないかどうかなどを見る検査です。
画像の検査といえば一般的なレントゲン写真、CT検査、MRIなどがありますが、情報量が多く、かつ比較的簡便に行える点ではCT検査が1番です。
そんなCT検査なのですが、造影剤を使用する場合には、十分に気をつける必要があるのです。
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造影剤には副作用がある!
CT検査には、造影剤を使う検査、使わない検査があります。
がんなどの病気の診断にCT検査を行う場合、造影剤を使用して検査を行うことが一般的です。
造影剤と呼ばれる薬を使わないで検査も行うことができますが、情報量がぐっと少なくなります。
特に肝臓とか腎臓とか血流が豊富な臓器を見る場合には、造影剤が必須になってきます。
(神戸朝日病院のホームページより)
ただ、何でもかんでも造影剤を使えば良いわけではありません。
造影検査のメリットとデメリットを頭に入れながら、常に検査の適否について考える必要があります。
私自身は、最近は本当に必要な人にしか造影検査をオーダーしなくなりました。
その理由の一つが、副作用を恐れてのことです。
以下に造影CTを撮像する際の副作用についてご紹介しましょう。
造影剤を使ってはいけない人
広く使われているヨード造影剤のイオパークの添付文書には、造影剤を使ってはいけない人として、以下のような記載があります。
原則禁忌
1.一般状態の極度に悪い患者
2.気管支喘息のある患者[副作用の発現頻度が高いとの 報告がある。]
3.重篤な心障害のある患者[本剤投与により、血圧低下、 不整脈、徐脈等の報告があり、重篤な心障害患者にお いては症状が悪化するおそれがある。]
4.重篤な肝障害のある患者[症状が悪化するおそれがあ る。]
5.重篤な腎障害(無尿等)のある患者[本剤の主たる排泄 経路は腎臓であり、腎機能低下患者では排泄遅延から 急性腎障害等、症状が悪化するおそれがある。]
6.マクログロブリン血症の患者[類薬において静脈性胆 嚢造影で血液のゼラチン様変化をきたし、死亡したと の報告がある。]
7.多発性骨髄腫の患者[多発性骨髄腫の患者で特に脱水 症状のある場合、腎不全(無尿等)があらわれるおそ れがある。]
8.テタニーのある患者[血中カルシウムの低下により、 症状が悪化するおそれがある。]
9.褐色細胞腫のある患者及びその疑いのある患者[血 圧上昇、頻脈、不整脈等の発作が起こるおそれがあ るので造影検査は避けること。イオパーク:添付文書
いっぱい禁忌、すなわち禁止事項が書いてあるわけですが、臨床上で問題になるのはほとんど2:気管支喘息か5:腎障害の患者です。
おそらくこの2つが造影剤を使用するのをためらう理由の90%以上を占めていると思われます。
逆に1の全身状態の悪い患者に関しては、取り決めはあってないようなものです。
そもそも交通事故で運ばれてきた息絶え絶えの患者さんにもCT造影剤はほぼ必須ですから、1は実際の臨床上無視されていることが多いでしょうか。
造影剤の副作用・その具体例
造影剤検査は検査の情報量を飛躍的に高めてくれる一方で、思わぬ副作用も持っています。
造影剤には軽いものから重篤なものまで、いろんな副作用があります。
ここでは代表的なものについてご紹介していきましょう。
軽微な副作用
軽い副作用としては吐き気、気分不快、熱い感じ(熱感)等があるでしょうか。
私もCT検査室の隣に1日中いたことが何度もありますが、吐き気とか、気分不快を訴える患者さんは多くいます。
考えてみれば何百mlの造影剤を1分くらいで静脈の中に注入するのですから、気分が悪くなって当然のことでしょう。
350mlの飲料を一気飲みするのと同じくらいかそれ以上に、体に負担のかかるものです。
ただしこのような症状の患者さんは、検査後休んでいれば次第に回復し、ほとんどの場合は問題ありません。
アレルギー反応
造影剤にはヨードをはじめとして人間の体に相性のよくないいろいろな物質が含まれており、まあいってみればアレルギー物質の塊なんですね。
簡単にいうとアレルギー体質の患者さんにハウスダストやダニをわざわざ血管に注射しているみたいなものなのです。
実際に造影剤を使用したCT検査で、アレルギー反応が出る患者さんは少なくありません。
多くは皮膚が赤くなるとか、少し咳がでるとかいった程度で、経過観察をしていれば問題ないことがほとんどなのですが、重篤な副作用が起きることもあります。
全国津々浦々、どこの病院でも造影CT検査を受ける前には、問診で
「喘息があるか」
しつこく聞かれます。
これは喘息の既往がある人の方が、造影剤アレルギーの副作用が出現する確率が高くなることが知られているからなのです。
ですから喘息と診断されたことのある患者さんがCTを撮像する場合、本当に必要な検査でなければ造影剤を使用することは滅多にありません。
喘息と診断されていることがあったとしても、何年もの間発作が起きていなかったり、吸入薬を使っていたとしても造影剤を使って検査したほうがいいと思われる場合には、造影剤を使用することもあります。
そして基本的に喘息の患者さんが造影剤を使う場合には、万が一の場合を考慮して、検査に主治医が付き添うことが一般的になっているでしょうか。
私が勤務してきた病院でも、基本的には主治医付き添いのうで造影CTを撮影する取り決めになっている病院がほとんどでした。
重篤なアレルギー反応だと、死亡することも
なぜ気管支喘息にこんなにも気を使っているかというと、重篤な副作用になると呼吸困難、血圧低下、心停止などをきたすからなのです。
つまり病気の診断をつけるためにやったCT検査で、命を落としてしまうこともあるのです。
もちろん確率は10-20万人に一人くらいであって、宝くじに当たるのと同じくらい低い確率なのですが、絶対に安全な検査でもないわけです。(愛知医科大学病院ホームページ)
このアレルギー反応については、医療者たちが気をつかうところです。
腎障害
このほかヨード造影剤は腎臓に負担がかかるため、腎機能が低下している患者さんには使用することができません。
私も腎機能が少し悪い患者さんに造影剤を無理してつかって、そのあとに怖い思いをしたことが何度もあります。
ですからよっぽどの理由がなければ、造影剤を使うことはなくなりました。
しかし腎機能が低下していても手術前なのでどうしても検査しなければならない時などは、生理食塩水を点滴しながら無理やり造影剤を使うこともあります。
多くの場合は施設ごとに取り決めがあり、腎機能ごとによって点滴を必須としていたり、そもそも造影CTは絶対に撮像できないというような基準を設けていることが多いでしょうか。
これと関連して、ある特定の糖尿病薬を使用する場合にも注意しなければなりません。
ビグアナイド系糖尿病薬を飲んでいる場合も注意
ビグアナイド系と言われる。特定の造影剤の使用が避けられるようになっています。
これは造影剤と糖尿病の薬が、腎臓での排泄で競合し、重篤な乳酸アシドーシスと呼ばれる体のバランスを崩す原因になる危険性が指摘されているからです。
従って、各国のガイドラインではおおむね造影剤使用後48時間は服用しないように勧められています。
ビグアナイド系と呼ばれる糖尿病の薬には、以下に示すようなものが挙げられています。
メトグルコ
グリコラン
メトホルミン
ネルビス
ジベトス
メデット
実際のところ毎年のように新しい薬が発売されていますから、ここに名前を列挙し続けるのは簡単ではありません。
完璧にビグアナイド系を把握するのは難しい
上にも書いた通り糖尿病の薬は毎年どんどん新しいものが出てきますし、短い外来の時間で患者さんが何を飲んでいるかというのを把握するのはなかなか難しいです。
たぶん本気を出して病院を調査すると、ビグアナイド系の糖尿病薬を休薬せずに、CTの造影剤が使用されている例は数え切れないほどあるでしょう。
可能な限り薬の名前を調べて造影剤の使用に問題ないことを一つ一つ確認していくしかないのですが、さすがに全部医者ができる仕事ではありません。
看護師さんやいろいろな人の助けを借りながら、危険のないように検査が行えるように色々と準備しています。
最近ではその規制も緩和されている
そんな危険なビグアナイド系の糖尿病薬なのですが、最近では徐々に制限も緩和されています。
私の病院でも、もともと腎臓の機能が良い患者さんに限っては、特にビグアナイド系の糖尿病薬を休止しなくても良いようになりました。
したがってビグアナイド系の糖尿病薬を休まなければならない患者さんはぐーんと減っています。
造影剤を使用した検査にもリスクはある
10分ほどで終わる造影CT検査なのですが、実は死亡するリスクもあるおそろしい検査なのです。
医師はその検査のメリット・デメリットを常に考えながら、検査のオーダーをしているのです。
造影CT実施時に、必ず医師の立ち合いが必要か、待機でOKか。医療安全上のルール、あなたの医療機関では、どう対応していますか教えてください。
いろいろあると思いますが、基本的には喘息等ある場合は依頼科医師の立ち会いが必要ですね。