頭痛や発熱時に頻繁に使われているロキソニンという薬ですが、注意しなければいけないことがいくつかあります。
市販されているロキソニンと言うのは、幅広い用途に使われています。これは病院の中でも同じで、一般的な頭痛とか、腰痛とかの場合には私たちもよくロキソニンを処方しています。
しかしこのロキソニンを内服するときには、いろいろな副作用に十分注意しなければなりません(第一三共のサイト)
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ロキソニンを使ってはいけない患者
ロキソニンの禁忌には、以下のような場合が挙げられています。
禁忌(次の患者には投与しないこと)
・消化性潰瘍のある患者[プロスタグランジン生合成抑制により、胃の血流量が減少し消化性潰瘍が悪化することがある。](ただし、「慎重投与」の項参照:添付文書を参照)
・重篤な血液の異常のある患者[血小板機能障害を起こし、悪化するおそれがある。]
・重篤な肝障害のある患者[副作用として肝障害が報告されており、悪化するおそれがある。]
・重篤な腎障害のある患者[急性腎障害、ネフローゼ症候群等の副作用を発現することがある。]
・重篤な心機能不全のある患者[腎のプロスタグランジン生合成抑制により浮腫、循環体液量の増加が起こり、心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある。]
・本剤の成分に過敏症の既往歴のある患者
・アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者[アスピリン喘息発作を誘発することがある。]
・妊娠末期の婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照:添付文書を参照)
このうち特に問題となるのは、青字で示した項目になるでしょうか。
胃粘膜障害
1番よく知られている副作用が、胃の粘膜障害です。
ロキソニンを毎日飲み続けていると、胃炎・胃潰瘍になりやすく、ひどい場合には潰瘍部位から出血したり、穿孔して穴が開いたりして、取り返しのつかない事態になることもあります。
製薬会社の説明を聞いていると、ロキソニンを1錠飲んだだけで、すでに胃の粘膜が非常に痛めつけられている、というようなはなしを聞いたことがあります。
(ですから胃薬を処方してください、という製薬会社の胃薬の営業だったわけですが・・。)
したがって私たちがロキソニンを処方するときには、大抵の場合は胃酸を抑えるような薬や、胃の粘膜を保護する薬を一緒に処方したりするのです。
胃からの出血は怖い
胃薬を処方しておらずにロキソニンを飲ませ続け、気付いた時には胃から出血して救急車で運ばれる、というような症例を私も何例か見聞きしています。
私も病院で当直していると、ロキソニンの飲み過ぎ原因と思われる吐血によって、救急車で運ばれてくる高齢者を多くみてきました。
ちょっとした痛みのためにロキソニンを飲み続け、出血で救急車で運ばれる、なんて本末転倒ですね。
腎機能低下
次によく知られている副作用が、腎機能の低下です。
ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)を内服し続けていると、腎機能の低下が起こることが知られています。
腎機能が正常の人の場合にはあまり心配することは無いのですが、腎機能がある程度低下している患者さんに対しては注意して使う必要があります。
そのことをあまり意識せずに、病棟の患者さんなどに処方していると、薬剤師の方から「腎機能が低下していますがこのまま処方しても良いでしょうか」といった確認の電話がかかってきたりします。
長期間使用すると、本当に危ない
大抵の場合はちょっとの間、ロキソニンを飲むくらいなら問題ないのですが、これを長期間飲み続けると、本当に腎機能が低下してくるわけです。
整形外科などに通院していて、何年もロキソニンを飲んでいる方で、驚くほど腎機能が低下していることがあります。
腎機能が低下していると、病気になった時に本来使用すべき薬が使えなかったりとか、治療の内容に制限が出てきたりします。
もちろん腎機能の余力がないので、腎機能の低下がどんどん進んでいけば、最悪、透析になってしまうわけですね。さすがにロキソニンを飲み続けただけで透析にまで至ってしまった患者さんはまだ経験していませんが・・・。
ロキソニンを使用する際は、腎機能にも注意を払わなければなりません。
気管支喘息の患者
Q.ロキソニン錠・細粒を気管支喘息の患者さんに投与してもよいですか?
A.アスピリン喘息の患者さんは禁忌、気管支喘息の患者さんは慎重投与です。但し、成人喘息の患者さんの約10%がアスピリン喘息であるという報告がありますので、アスピリン喘息でないことの確認が取れない場合の投与は避けるべきと考えます。
病院にやってくる患者においては、アスピリン喘息かどうかまで確認がとれている患者は多くはありません。ほとんどは気管支喘息と呼ばれる病名で一括されています。
以前喘息のある患者にロキソニンを使って良いか病院の薬剤師に聞いたことがあります。
回答は「絶対にダメというわけではないけれども、可能ならカロナールなどの方が良い」とのお答えでした。
臨床の現場においても、喘息という病名がありながらロキソニンが処方されている例は多々あるかと思いますが、添付文書上は喘息診断が付いている限りは避けた方が良さそうですね。
ロキソニンアレルギーの患者
ロキソニンにアレルギーを有する患者もいます。
アレルギーの程度は様々なのですが、中にはアナフィラキシー反応を起こして、入院が必要になるほどの副作用を起こす患者さんもいます。
ロキソニンアレルギーは決して頻度の高いものではありませんが、生命に危険が及ぶ点からは、薬剤アレルギーに関しては十分注意しなければなりません。
妊婦、小児、インフルエンザ・・・も注意
そのほか、妊婦には投与しないとか、小児には投与しないとかいう制限はありますが、妊婦や小児に関しては普段診療しない先生がほとんどなので、万が一処方する場合になれば十分立ち止まります。
またインフルエンザでの処方も迷うところなのですが、第一三共のサイトによれば、成人のインフルエンザ患者であれば問題なく投与できるようです。
というわけで、ロキソニンの使用には十分な注意が必要です。
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