PD-1阻害薬と呼ばれる、新たな種類の抗がん剤が最近注目を集めていますね。
この薬を発売した小野薬品の株価は、業績アップの期待から株価が5倍にもなったりしました。
2018年末では株価は落ち着いていますが、以前に比べると高値を維持していますね。
このPD-1阻害薬とよばれる新しい薬は、これまでのがん治療の常識を変えてしまうかもしれません。
これまでの抗癌剤とは
これまでの抗がん剤は、細胞分裂に直接作用してがん細胞を殺すの一般的でした。
それぞの抗癌剤のメカニズムは違えども、正常な細胞も含めてがん細胞を殺してしまうものが圧倒的に多かったのです。
これらの抗癌剤は今でも幅広く使われていますが、髪の毛が抜けたり、吐き気がでたりなど副作用が強いのも特徴でした。
21世紀に入ってからは分子生物学の発展に伴って、分子標的薬と呼ばれる、がん細胞だけに見られる分子をターゲットとした薬が多く発売されてきました。
夢の薬と呼ばれた肺癌によく使われるイレッサや、血液腫瘍の分野でよく使われるリツキシマブなどが例として挙げられます。
これらの薬も決して副作用がゼロであるわけではないですのが、患者さんによってはあまり副作用がない一方で、劇的な効果を期待できる場合もあります。
免疫チェックポイント阻害薬とは
そして2015年ごろになって、これまでの作用機序と全く異なる免疫系の部分に作用する抗癌剤が生まれてきました。
人間の体には、普段細菌や異物に対して絶えず攻撃を加えている免疫という働きがあります。
ガゼをひいて熱がでるのは、まさに細菌やウイルスが免疫系が戦っている証拠です。
まだよくは解明されていませんが、がん患者の内部ではこの免疫系の働きが低下していることが分かっています。
PD-1阻害薬の少し難しい話
10.1158/1078-0432.CCR-15-2998
現在臨床の現場で使われている免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤のうち、最も有名なのは、商品名オプジーボ(ニボルブマブ)という名前で小野薬品が発売している薬でしょう。
この薬は、PD-1という分子に作用します。
色々と難しいので割愛しますが、要はがん細胞によって抑えられてしまう免疫系の働きを活性化させる、それがオプジーボの働きなのです。
この効果によって免疫を活性化することによってがん細胞を打ち負かすという、これまでにはなかった活気的な抗癌剤なのです。
学会での脚光がすごい
私の専門は内科系の腫瘍なのですが、2017年の国際学会に参加したときには、もう学会全体がこの免疫チェックポイント阻害薬一色でした。
国際学会でも一番の注目を浴びるくらいに、2015年以降の腫瘍学全体においてこの免疫チェックポイント阻害薬は非常にホットな話題になっているのです。
日本でもその価格の高さや、夢の治療薬ということで注目を集めましたが、学術的な分野でも世界的に注目を集めているのを実感しました。
重要な分子の発見者が京都大学の本庶佑先生
特にニボルブマブに代表されるPD-1阻害薬と呼ばれる薬は、上で説明した通りにPD-1と呼ばれる分子に作用します。
そして何を隠そう、このPD-1の発見者が現在京都大学名誉教授の本庶佑先生なわけです。
臨床の世界で日々がん治療に当たっている身分としては、この免疫チェックポイント阻害薬の登場は革新的ですから、ノーベル賞の受賞があっても全くおかしくない、と思います。
2016年、2017年にも受賞が期待されながら結局のところ逃してしまいましたが、2018年以降も受賞の可能性はかなり高いのではないかと期待しています。
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