免疫学は非常に難解な学問ですね。基礎研究では、どのような研究をするにしても今や無視できない領域となっています。
また、臨床ではアレルギー、自己免疫疾患などは、免疫系と深く関わりがある病気です。加えて最近ではがんと炎症の関わりがクローズアップされ、免疫チェックポイント阻害薬も臨床現場で使われるようになりました。
一方で通常の臨床業務をしている限りは、免疫に関する研究レベルでの深い知識は要求されないのが実情かと思います。
もちろん血液内科や小児科、アレルギー内科など、関連する診療科では、臨床上も免疫学の知識は非常に重要になってくるでしょう。ただし組織学や解剖学のように、基礎と臨床が直結するほどの膨大な知識は要求されないでしょう。
それほどまでに、免疫学は広大で、専門性がある分野となっています。ここでは、医学部時代に免疫学に触れる上で、必要な教科書をご紹介したいと思います。
★★★* 免疫生物学
免疫学の名著であり、書籍のレベルでこれほどまで深く、詳細に免疫学を記した教科書はないでしょう。
イラストはたくさん用いられており、各トピックは半ページ程度でまとめられているので読むのは苦痛ではありません。
しかし、大学院レベルの内容が多々含まれており、学部学生には少々使いづらいと思われます。試験対策として辞書的に使う事を想定しても、内容量が多い印象です。
免疫系の分野で深く学習する事があるとか、頻繁にレポートを書くとか、研究しているとかでなければ、あまりにも詳しすぎて使いづらい教科書になってしまうでしょう。
したがって、医学部生・研修医のための教科書としては、★★★*としています。
★★★ 免疫ペディア
数十人の研究者に執筆されている新しい免疫学の教科書です。300ページほどの薄い教科書でありながら、学生やレジデントも十分に読者の対象範囲として書かれています。
タイトルの通りカラーイラストが豊富に掲載されており、理解を深めてくれます。文章は教科書テイストでありながら決して堅苦しくなく、読み進めることができます。
また臨床現場では最新トピックである免疫チェックポイント阻害薬についてもカバーされており、情報の新しさが伺えます。
内容的にも、文章量としても通読が可能であり、免疫学を学び始める医学部生にとっては、十分に良書といえるのではないでしょうか。
★★☆ エセンシャル免疫学
免疫ペディアを親しみやすいテキストとするならば、本書はより正統な医学書といった立ち位置になるでしょうか。
それでもT細胞の章ではT-cell receptorやMHCなどの基本から解説してあり、初学者にやさしい教科書だと思われます。図やイラストも用いられており、理解しやすいのではないでしょうか。
576ページと分量は多く、また各章の最後は高度な内容が含まれるために、辞書的に使うのがよいでしょう。
医学部の試験で要求されているレベルを超えた内容を含んではいますが、免疫学の基礎から解説してあり、かつコンパクトにまとめられた免疫学の教科書といえます。
原著は”The Immune System”というタイトルで出版されています。
★★☆ 休み時間の免疫学
★☆☆ 好きになる免疫学
免疫学は基礎医学の中でもつかみどころのない分野なので、このような入門書から始めるのも賢い選択かもしれません。価格も安く、Amazonでの評価も突出しています。
ただし教科書というよりは、寝転がって読む文庫本としての位置づけの方が正しいのかもしれません。
最終改定から10年以上経過していますので★1つとしました。
★☆☆ シンプル免疫学
ただ、難解な免疫学を体系的に理解するには内容量が不足しており、初学者には若干ハードルが高いでしょう。
コメントを残す