医者の世界にもアルバイトという言葉があります。
アルバイトと聞くと「時給1000円くらいかぁ」と思ってしまいがちなのですが、医者の場合の時給はだいたい1万円くらい、下手すると5万円くらいにもなります。
ここでは、医師が行うアルバイトについてご紹介したいと思います。
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医者が行うアルバイトの定義
医者が行うアルバイトの定義は明確ではありません。
多くの場合はフルタイムでない勤務形態と捉えておけば大きな間違いはなさそうです。
子供を持った女医さんが近くの病院で午前中だけ週3日働くとか、有り余る資産を持った医師が、検診業務を3日間だけこなす、などは典型的な例です。
そのほか中小病院では、夜間休日に病院に泊まり込み、入院患者の対応を行う医師が必要になります。
常勤医師の負担を軽減するために、他の病院、特に大学病院に勤務する医師がこのような当直業務を行うのも、アルバイトの一つと言えるでしょう。
アルバイトの種類
医者が行うアルバイトにも、いくつか種類があります。
検診で勤務するようなアルバイトの形態はその場限りの1回きりですから、いわゆるスポット勤務と言えるでしょう。
また学会などで病院に医師の欠員が出る場合に、1回きりの外来勤務をする場合も、スポット勤務と言えるでしょう。
一方で週に1日だけ近くの病院に勤務するとか、週に1日だけ、ある病院の当直業務を行う、というスタイルもあります。
厳密にはこれは非常勤職員の扱いかもしれませんが、週に何日かだけ、毎週働くアルバイトの形態もあります。
上部消化管内視鏡をする消化器内科向けのアルバイトとか、整形外科外来をする整形外科向けのアルバイトなど、専門性が要求されるアルバイトもあります。
もちろん、検診業務や当直バイトのように、医師免許さえあれば務まるアルバイト業務よりも、専門性が要求されるアルバイトの方が、若干だけ給与は高くなっていますね。
医者にとってアルバイトが必要な理由
家庭の事情、家族の事情
子育てや介護の理由で、フルタイムで勤務を行うのが難しい医師も多くいます。
そのような先生にとっては、短時間の勤務で働くことができる求人があるのは魅力です。
お子さんがいる女医さんの場合は、現実的にフルタイムで働きながら当直や時間外労働、休日の当番、呼び出しなどをすべてこなすのは不可能ですね。
もちろん病院側の理解があれば、いろいろと勤務を免除してもらうことも可能でしょうが、理解がある病院ばかりではありません。
そのような場合には、たとえば子供が小さい間だけは、アルバイト勤務をするということが必要になってくるわけです。
大学病院の事情
下記で詳しく解説していますが、大学病院に勤務する医師の給料は非常に安くなっています。
役職がなければ、毎月の給料は手取りで20-30万円くらいです。
税金の支払いとか諸々の出費を考えると、アルバイト勤務で大学病院の他からも、給料を稼がなければなりません。
年齢にはあまり関係なく、専門性のある外来とか、アルバイトの当直など行って、ある程度の金額を稼ぐ必要が出てきます。
診療支援の意味合い
もちろん働きに行く医師の懐事情だけが誘因ではありません。
中小病院・地方病院の中にはアルバイトの医師にきてもいらい、診療を手助けしてほしいと考えている病院もたくさんあります。
特にマイナー診療科の場合は人員を揃えるのが難しいですから、病院側から依頼があって半ば仕方なくアルバイトに行く場合もあります。
私も大学病院勤務時代の最後の方には、先輩の顔を立てるためだけにアルバイトに行ったりしていましたねぇ…
アルバイト勤務の給料の相場
例えば医局に所属していてアルバイトを行う場合には、1日10万円くらいが相場でしょうか。
教授や准教授クラスの先生であれば、気を遣って半日で10万円近く出している病院もあると聞きます。
大学にいた時には「あそこの時給は10万円」と言っている先生もいましたね。
どうやら実働時間は1時間で、給料は1日分の給料として10万円が支給されるみたいです。
あとびっくりしたのは、飛行機代まで出して、医局のバックアップを得ながら診療をつづけている病院があることですね。
当然ながら飛行機の移動時間を考えると実質的な労働時間は短くなりますし、赤字になっちゃうんじゃないか、と思えてきます。
高い給料でも病院側が医師を欲しい理由
非常勤であっても医師一人を確保するには相当の労力と金銭が必要です。
ですから、これくらい給料を支払ったとしても、病院側としては医師に働きに来てもらいたいと考えているわけです。
また医局の斡旋ではなく求人サイトを介した場合には、求人サイト、人材派遣会社にも手数料を支払う必要がありますから、病院側の持ち出しはそれだけ多くなります。
したがって一般的に、医局が斡旋するアルバイトよりも、求人サイトを介してアルバイトの方が給料は低く抑えられています。
これは求人サイト側のマージンがあることに由来しているのだと思われます。
大学医局でアルバイトに行っている当直先の病院が求人サイトで医師の募集をしていたのですが、普段大学の医局員に支払っているアルバイト代の70%くらいの報酬でした。
医師の人材派遣会社を経由すると、給料の30%近くは医師派遣会社の懐に入っているのかもしれません。
アルバイトの方が給料が良い矛盾
常勤で勤務している先生の場合には、週五日働いて、年収は1200-1300万円くらいが相場でしょうか。
仮に年間200日働いたとすると、1日あたりの給料は6-7万円くらいになってしまいますね。
実際にはフルタイムの勤務ではアルバイト勤務のようにきっちり9時5時で働けるわけでは無いですし、常勤病院の当直もあります。
加えて土日の回診や、夜間休日の待機当番もありますから、実際の労働時間はより長くなり、1日あたりの給料や時給は単純計算するよりも随分安くなります。
これらを全て考慮に入れると、ほぼ例外なく常勤の病院で1日働くよりは、アルバイトで1日働いた方が高い給料を得ることができると思われます。
どうしてこんな矛盾が発生してしまうのでしょうか。
なぜアルバイトの方が給料が良いか
この現状の背景には、やはり医師不足の問題が大きく横たわっていると思います。
本来であれば医師を多く雇用し、患者を集める事で収益をあげるのがあるべき病院のカタチです。
しかし2000年代から新臨床研修制度の開始と共に表面化してきた医師不足により、各病院は常勤医師を確保することが非常に難しくなっています。
医師を派遣する人材派遣の役割を担ってきた医局の力も弱体化しており、地方病院までは十分な医師を派遣することが難しくなっています。
そうなってくると病院側としては、毎日でなくても良いから週に数日だけでも出張の先生に診療をお願いしたい、となってくるわけです。
麻酔科はアルバイトしやすい診療科
実際に常勤医師よりもアルバイト医師が増えつつある傾向が顕著なのが、麻酔科だと言われています。
麻酔科の場合には基本的に入院患者を受け持つことがなく、仕事の単位が手術ということになります。
ですから1日単位とか半日単位で働くことが十分可能なわけです。
そして夜間や休日も緊急手術のために待機をしなければならないフルタイムの雇用よりも、アルバイトしながらフリーランスのように働いていた方が、給与は良いわけですね。
つまりはドクターXの大門未知子みたいな働き方ですね(麻酔科の医師は内田有紀でしたが・・・)
麻酔科の先生の中には、一通り技術を身に付けたところで医局をあっけなく辞め、フリーの麻酔科医師として働く先生が多くおられます。
また子供を持った女医さんにとっては、滅私奉公のように大学病院や一般病院でフルタイムで働くことが難しいですから、週2回とか週3回アルバイトとして働いている先生方も多くおられます。
病院側としても手術のある時だけ、必要な時だけ麻酔科医に来てもらえばいいわけですから、常勤で医者を1人雇うよりも、より少ない労力とコストで手術を行えるというメリットがあります。
つまり麻酔科と言うのは、アルバイトに適した診療科であるといえそうです。
アルバイト勤務だけて食べていくことも可能
常勤医師として一つの病院に勤務するよりも、アルバイト勤務をいろいろと掛け持ちしながら働く方が、トータルの給料が多くなる場合もあります。
多くのアルバイト勤務の相場は、専門の外来などであれば1日10万円、夜間の当直業務であれば平日は4-6万円、休日は8-12万円くらいになります。
仮に10万円の日給で1年のうち半分の150日、つまり週3日勤務でざっと1500万円も収入を得られるわけです。
もちろんアルバイト勤務であれば、残業とか時間外の勤務、呼び出しなどもありません。
いかに、アルバイト勤務を続ける方が、給与面でアドバンテージがあるか、お判りいただけると思います。
ですから「アルバイトしてます」という医者を見かけても、決して貧乏な医者と思わない方が良いかもしれません。
まとめ
医者のアルバイトについて考察してきました。
常勤やフルタイムよりも楽に働けてお金が稼げる、それが医者のアルバイトなのです。
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