医者が送る紹介状・診療情報提供書は通行手形のようなものである

医者が他の病院の医師とやり取りするとき、診療情報提供書、いわゆる紹介状を用います。

ある医療機関から別の医療機関に受診する場合には、現時点でわかっている状況、他の病院でどういう治療をしてきたかを知ることは非常に重要です。

その意味では、医療における診療情報提供書とは通行手形のようなものであると言っても良いでしょう。

紹介状に書いてある内容

紹介状に書いてある内容は、患者さんの情報に尽きます。

例えばある病院でどんな検査をしたか、どんな治療をしたか、それに関する結果はどうだったか、などといった内容です。

紹介状の書き方や文章の量なども、紹介状を書く時と場合によって様々です。

自分の病院では治療を行うことができず、他の病院での治療継続をお願いするような場合は、これまでの経過や検査結果などを送る必要がありますから、A4の紙で10枚近くなることもあります。

私は患者さんの経過についてA4の紙で最大30枚くらい送ったことがあります。受け取った方の先生も相当迷惑だったでしょうが・・・・。

一方で、他の病院から診察を依頼されたものの、治療適応がなかったり、そこまで重篤な病気ではない場合は、「患者さんを診察しました」くらいのA4の紙1枚で済ませてしまうこともあります。

紹介状をもらう医師側としては、なるべく短く簡潔にしてある方が良いですから、診療情報提供書を用意する場合にはそのことを心がけています。

紹介状の例

たとえば近くのクリニックで検査してがんが疑われ、規模の大きな総合病院に患者を紹介するような場合は、下記のような紹介状が作成されることになります。

平素より大変お世話になっております。

高血圧、糖尿病で経過観察中の患者です。10月下旬より胃部不快感を認め、内視鏡検査を施行したところ胃体部にIIc病変を認めました。生検でpor-sigであり、貴院での精査加療を勧めました。

内視鏡画像、採血データなど添付いたします。何卒よろしくお願いいたします。

長々書かれていますが、1行で書くと「胃癌が見つかったので治療お願いします」ということになります。

医者の紹介状にもビジネスレターのように形式があり、どうしても本来必要な情報以上に長くなってしまいます。

病院によっては紹介状の内容のだいたいを専門のスタッフが入力してくれる理想的な病院もあるのですが、大抵は医者ががんばって打ち込まなければならないんです。

この紹介状を書く作業は、結構時間を取られます。

紹介状の重要性

いずれにしても、紹介状は患者さんにとって通行手形のようなものです。

たとえそこに書いてある情報が不足していたとしても、紹介状を持っているその事実が非常に重要です。

紹介状をもらった医者は、「ああ、これはこっちで治療する必要があるだな」と思うわけです。

それに紹介状というのは、紹介状を書いてくれた相手の医者が何を考えているのか、今目の前にいる患者さんに対してどうしたら良いのかを把握する唯一の手段でもあります。

患者さんが自らの病歴や受けた検査・治療を話してくれることもありますが、残念ながらたいていの場合は半分くらい間違っています。

またなぜそのような治療がされたのか、どうしてそのような薬が開始されたのか、など、医療サイドの思考過程を説明する部分が抜けています。

したがって紹介状の存在が非常に重要になってくるわけです。

診療情報提供書はいまだに紙である謎

21世紀も20年過ぎようとしていますから、この診療情報提供書はメールとかSNSでもいいんじゃないか。。。と思ってしまうのです。

しかし実際のところ、診療情報提供書はいまだに紙でやりとりしているんですね。

いや、本当にメールでいいと思うんですけど、病院の間でやりとりされる情報は紙ベースなんですよね。個人情報保護の観点なんでしょうか?

手紙こそ勝手に読まれてしまう可能性もありそうですけど、まあその辺はよくわかりません。

一方で病院の中の患者情報はすべてパソコンの中、サーバーの中に集約されています。

ですから他の病院から送られてきた診療情報提供書は、スキャンしてパソコンの中に取り込む、という二重で面倒なことが行われてもいるのです。

とりあえず、電子カルテでパソコンに打ち込みながら、それを印刷して病院に送る、そして送られてきた紙の紹介状はスキャンするという手間なことが行われているのです。

診療情報提供書は手書きの場合もある

紹介状は最近はもっぱら電子カルテで作成されることがほとんどです。

一方で地方の病院などで電子カルテが導入されていない病院からの紹介状では、手書きの紹介状が送られてくることがあります。

この手書きの紹介状というのは曲者で、書いてある内容がほとんど理解できないこともあります。

ある時は8行ぐらい書いてある手書きの紹介状のうち、1行目しか理解できなかったこともありました。

こうなってしまうともはや情報を提供する意味は無くなっていて、患者が紙と共にやってきた事実でしかありません。

医者というのは元来文字が汚くて、時間もない中でペンを走らせなければならないので、どうしても読みにくくなってしまうのでしょうか。

患者さんは紹介状をみても良いのか

患者さんは紹介状をみない方が無難でしょうね。

普段は医療情報しか書かない紹介状ですが、たとえばクセのある患者さんの場合には、紹介先の医者に対して、オブラートに包んでそのことを記載する場合があります。

例えば、ある病院で治療を続けていて、そこの主治医と仲が悪くなって他の病院に紹介される場合には、「こっちの病院では仲が悪くなって・・・」とは書かずに、シンプルに「貴院での治療を希望されました」と記載することもあります。

また患者さんの家族が色々と治療方針に口を出す場合には、「ご家族が非常にご熱心で」というように、直接的な言葉を使うことなく、オブラートに包んで現状を記載することがあります

そもそも紹介状は専門用語ばかりで、中にはアルファベットの略語も使われていますから、おそらく医療関係者以外が見ても理解できるものではないと思います。

どちらにしろ紹介状を勝手に開封してしまうと、それを知った紹介状を受け取る側もあまり良い思いはしませんから、ここは冷静に未開封のまま持っていくのがよいでしょう。

最後に

紹介状の概要についてご紹介しました。

相手の医者に失礼のないように、それでいて分かりやすく、医者には意外と文章力も問われているのかもしれませんね。

Visited 48 times, 1 visit(s) today

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です