もし医者に処方された薬の効果がなかった時は、どうすれば良いのでしょうか。
薬の処方にもいろいろなケースがありますので、ケースバイケースで考えていかなければなりません。
薬の中には、効果が実感できなくても飲み続けなければならない薬があります。
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内服薬の種類によって役割が異なる
内服薬といっても色々な飲み方、役割があります。
すぐ効果を示すものからそうでないものまで、いろんな種類があるんです。
効果の実感できない薬
たとえば血圧を下げる薬や、糖尿病の薬などは、効果を実感できる事は少ないことがほとんどでしょうね。
血圧が10-20くらい違っていたとしても、それを実感できる人間はあまりいないでしょう。
血糖値もすごく低ければフラフラしたりなど症状が出るわけですが、10-20くらい高いところで実感するのは難しいかと思います。
このような薬は効果の実感という点では症状にあまり直結しませんが、長期的には飲み続けることが必要な薬です。
効果を実感しやすい薬
一方で痛み止めや吐き気どめなどは、患者さんがすぐに効果を実感しやすい薬でもあります。
むしろ痛み止めを飲んでも痛みが変わらなかったり、吐き気どめを飲んでも吐き気が続いていれば、薬は効果がないと考えるのが普通です。
そしてこれらの薬は毎日飲む続ける必要はなく、症状に応じて内服していれば良い、薬なわけです。
痛くなければ痛み止めを飲む必要はないですし、吐き気がなければ吐き気どめは不要ですね。
ですから医者が出す薬の中にも、症状がなければ飲まなくても良い薬と、症状がなくても飲まなければならない薬など、薬によってもその役割が微妙に異なっているわけです。
効果がなければ止めても良い内服薬
このようないろんな飲み方のある薬な訳ですが、まずは医者の指示された通りに内服することが必要です。
吐き気どめの薬などは、作用機序の違う薬が何種類も発売されています。そして患者さんによっては、同じ内服薬でも効果があったり、なかったりします。
痛み止めも同様に、どれくらいの量が適切かという事は患者さんによって異なります。
吐き気どめや痛み止め薬の効果がほとんど実感できないようであれば、無理して飲む必要はないでしょう。
むしろ必要なのは早めに病院に行って、薬の種類を変えてもらうことです。
はじめに処方した吐き気どめが全く効果がなかったにも関わらず、種類を変えて処方してみると、患者さんがすごくよく効果を実感しているというのはよく経験される事です。
下痢の時の便秘薬
患者さんの中には、もともと便秘気味で、便秘薬を飲んでいる方がおられます。
もちろんお腹の調子を崩せば、下痢気味になりますし、便秘といっても毎日の調子には波があるでしょうから、ずっと便秘気味と言うわけでもないでしょう。
そのようなときには、特別な事情で便秘薬を飲んでいるのでなければ、便秘に使うお薬は飲まずに様子を見てみるというのが正しい選択かと思います。
本来便秘薬というのは便秘を改善するための薬ですから、便秘が改善されれば飲まなくても良いのですね。
下痢気味であるのに、便秘薬が処方されているからそれを飲み続けていると言う人は意外と多くて、外来をやっていて少しびっくりしたりもします。
便秘でなければ便秘薬を飲まなくても良い、これは基本です。
血圧が低い時の降圧薬
このほか血圧の薬も同様のことが言えるかもしれません。
血圧とは全く別の病気の治療をしていると、食欲がなくなったりしてきて、以前は血圧が高かった患者さんでも、自然に血圧が下がったりします。
また入院している患者さんでは、食生活が極めて健康的になりますから、どんな人でも少しは血圧が下がります。
このような場合には血圧を下げる薬は不必要で、むしろ飲まない方が良い場合もありますね。
特に高齢の患者さんなどでは、血圧が下がってふらつきが起こり、転倒してしまうという可能性も十分に出てくるわけです。
大して高くない血圧のために血圧を下げる薬を内服し、その副作用で転倒して大怪我でもしてしまったら本末転倒ですね。
ですから普段よりも血圧がずっと低く、ふらつきなどの症状が出ている場合には、これも特別な場合を除いてですが、血圧を下げる薬は飲まない方が良いでしょう。
このように血圧が低いにも関わらず、医者から出されたがゆえ降圧薬を飲み続けている患者さんは結構おられるんです。
皮膚症状が悪化する時の軟膏
皮膚の軟膏についても同様のことがいえます。
皮膚炎に対して軟膏を処方していると、何人かの患者さんでは皮膚炎が逆に悪化する場合も時折みられません。
皮膚炎が悪化してしまう原因の1つは、診断が間違っているという根本的なところを除外すると、薬が体に合わないという場合もあります。
接触性皮膚炎と呼ばれるのですが、患者さんの中には一般的によく使われている軟膏に対して、アレルギーのような反応起こしてしまう方もいます。
医者から処方された軟膏が100%どの患者さんにも安全、というわけではないですから、もし皮膚の症状が悪化するようなことがあれば無理して使い続ける必要はないでしょう。
同様のことは、軟膏の添付文書にも必ず記載してありますね。
「効果がなかった」と言われても、医者が気分を害することはない
痛み止めや、吐き気どめなど効果がすぐに実感できるような薬に関しては、効果がないことはしばしば経験します。
診察の時に患者さんから「飲み続けましたが、効果がありませんでした」と言われても、「そうですか」といった感じで、医者側が気分を害することは全くありません。
むしろ正直に話してくれてありがとう、効果がなくても申しわけありませんと言った気持ちになります。
そもそも、100人中全員に効果があるような、魔法の薬なんてないですからね。
あまり遠慮せずに本当のことを言っていただいた方が、薬の変更などをすることで、診察はスムーズに行くのではないかと思います。
ただし自分で判断するのは難しい
とはいうものの、内服薬を勝手に辞めて良いかどうか、患者さん自身が判断するのは難しいでしょう。
下に示すように効果の実感がなくとも飲み続けた方が良い内服薬もあります。
自己判断で薬を中止するのは危険なこともあるので、もし何かおかしいと思ったら、予約に関係なくぜひ薬を処方している医者にかかってみることをお勧めします。
とりあえず飲み続けた方が良い薬
この中でも効果の実感しにくい血圧を下げる薬や、糖尿病の薬などより微妙な調整が求められる薬では、患者さんによっては効いたり、あまり効かなかったりということを頻繁に経験します。
したがって血圧や採血の結果をみながら、患者さんの薬に対する反応を見ながら、少しずつ調整していきます。
「この血圧の薬を1錠飲めば、血圧が20mmHg下がります」、なんて決まりきったものはないですからね。患者さんの薬に対する反応をみながら適宜調整する、ということになるわけです。
ここで必要な情報は、いまの薬の種類や量では病気のコントロールがどのような状況なのか、ということを知りたいわけですから、処方された薬を指示通りに飲むことは大切です。
この薬を飲んでこうだった、という情報がないと、医者としても次の一手が打ちにくいわけです。
もし副作用が出たならば
基本的には医者の処方した通りに薬を飲むことが必要なわけですが、これは絶対ではありません。
薬の中には含まれている成分ゆえにアレルギー反応を起こしたり、気分がすごく悪くなってしまう場合もあります。
血圧の薬や糖尿病の薬だって、効果がありすぎてしまえば低血圧や低血糖などの症状を引き起こしてしまいます。
ですから、自分自身で薬の副作用が強い、と感じた場合には無理に内服を続ける必要はなく、まずはかかりつけ医に相談することが大切です。
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