【医師の視点】医者の喫煙率はやっぱり低い。しかし喫煙者は確実に存在している

健康に害のあるタバコですが、病院の中でも多くの職員がタバコを吸っています。

特に患者に対して禁煙指導することの多い医師に関しては、本来はタバコを全く吸わないようにすべきですが、タバコを吸っている医師は確実に存在しています。

白衣の先生と話していると「ぷ〜ん」とタバコの匂いがするわけですね。普段周囲はタバコを吸わない人が多いですから、すぐわかります。

そのような医師の病院の中での行動、周辺の情報などについて考えてみましょう。

日本の喫煙率の推移

こちらは2017年のJT全国喫煙率調査のグラフです。

2017年度の調査では喫煙率は男性27.2%、女性9.0%となっているようです。

女性の喫煙率はここ何十年も横ばいであるのに対して、男性は一貫して低下傾向です。

特に昭和40年ごろには男性の喫煙率は80%近くもあったようですから、今の感覚からすると驚きですね。

病院の中でも、「タバコを吸って病気になるのは自己責任、同情の余地なし」なんていう意見を聞きます。

しかし喫煙率80%の時代にタバコを吸っていた男性が高齢になり、がん患者となったとしても、時代背景を考えると簡単には「あたながタバコを吸ったから悪い」とは言えないですよね。

その当時はみんな当たり前にやっていたことなのですから…

体感的な医者の喫煙率

では医者の喫煙率はどれくらいなのでしょうか。

残念なことに、医者であってもタバコを吸う先生方は確実に存在しています

これらの先生方は、病院で業務がひと段落するとふらっとどこかに行ってしまい、戻ってくると白衣には凄く強いタバコの匂いがすることがあります。

その後に先生方と話したりすると特に口に出すわけではありませんが、心の中で「あーこの人はタバコ吸ってきたんだな」と感じるのです。

普段病院にいるとタバコの匂いに接する事はまずありませんから、このような匂いに関してはすごく敏感になります。

医者の喫煙に関しては、体感的にはおそらく10人に1人、20人に1人とかそんなところだと思います。

喫煙率5-10%でしょうか。

世間一般に比べるとかなり低いようですが、決して0%でもありません。どの病院にも喫煙している医師は必ずいます。

ただし女医さんに関しては、タバコを吸っている先生は出会ったことがないかもしれません。

そもそも女性一般の喫煙率は一桁ですから、医者のそれはもっと低いのかもしれませんね。

コメディカルでは吸っている人は多い

一方で病院で働いているコメディカルの場合には、タバコを吸っている方というのはちらほら見かけますね。

勤務中に病院の外に設置してある喫煙ルームにふらふらと歩いていく白衣を着た男女はよく目にします。

大抵は技師、リハビリスタッフなど時間に融通をきかすことのできる男性スタッフであることが多いでしょうか。

看護師さんの場合は勤務時間の関係から、病院で喫煙している人はほとんどいない印象ですが、飲み会の席などでタバコを吸っている様子も時折見受けられます。

タバコ吸う・吸わないは仕事にはあまり影響しないか…

当然のことながら、タバコを吸う人間は自らの健康を害しているわけです。

ただ仕事のできる・できないに関してはあまり差がないように思います。

喫煙者の先生ですごく患者さん思いの先生、看護師からの評判も良い先生もいる一方で、タバコは全く吸わないけれども怒りっぽく、周囲からの評判が悪い先生もいます。

タバコを吸っている先生の評判を総合する限りは、タバコを吸っているからといって特段に仕事ができないというわけでもないようです。

ただしニコチン依存に陥っている大部分の喫煙者は、ニコチンの有無にいよって精神的な安定性が変化してくるでしょう。

高度な判断が要求される場面や、繊細な患者対応が必要な場面では、マイナスの方向に働いてしまうことは否めません。

この辺りはアスリートと同様で、最高のパフォーマンスを発揮するためには、禁煙が一番です。

病院側は患者や医療者の喫煙にはすごく厳しい

今や病院の中でタバコを吸う事は非常に難しくなりつつあります。

どこの病院でもそうですが、病院内部ではタバコを嗜むというのはほぼ不可能です。

したがって公に喫煙室が設置されている病院はありません。

多くの病院では病院の敷地の隅っこのほうに、プレハブ小屋があったりとか、または屋外に灰皿だけ置いたようなスペースがあります。

そして病院の職員や一部事情をよく知った患者さんの間で、どうしてもタバコ吸いたい人はそこでタバコを楽しむような流れになっています。

このようなスペースを病院側も認めているのかどうか明らかではありませんが、とにかく病院の職員はそこでタバコを吸っているようなのです。

冬のすごく寒い時期に、ダウンジャケットを着ながらタバコを吸っている病院職員を見ると、やはりタバコが依存性のある嗜好品であることを強烈に印象付けられます。

飲食店は原則禁煙へ

政府は9日、受動喫煙対策を事業者らに義務付ける健康増進法改正案を閣議決定した。飲食店は原則禁煙とし、違反者には罰則もある。

客席面積100平方メートル以下の中小店舗や個人経営の既存店は標識を掲示したうえでの喫煙を認める。厚生労働省は例外が適用される飲食店を約55%と推計している。普及が進む加熱式たばこも規制対象に加える。

今国会中に成立し、東京五輪・パラリンピック開催前の2020年4月の全面施行を目指す。

改正法案は学校や病院、行政機関などの敷地内を原則禁煙とする。屋外に喫煙場所を設けることはできる。事務所や飲食店は原則として屋内禁煙とし、喫煙専用室の設置は認める。

日本経済新聞  2018.3.9

タバコは百害あって一利なし

日々病院で診療している身分としては、やはり禁煙にしたほうがいいんじゃないかなぁというのが率直な感想です。

現実問題として、タバコにはネガティブな面しかありません。

肺がんの患者さんの病歴を眺めていると、7割から8割位の患者さんに喫煙歴があるといった感じです。

そして残りの1割から2割の患者さんは全くタバコと無関係か、というとそうではありません。

配偶者の方がヘビースモーカーだったり、職場で常にタバコの煙を吸っていたなど、やはりどこかでタバコと関連があることがほとんどです。

もちろん全くタバコを吸わない方や、職業などの関係で肺がんになることがありますので、何事も100%ではありません。

しかし肺癌とタバコの関わりは深いものがあります。

肺癌だけでないタバコとがんの関係

現在では、タバコは肺がんだけでなく、あらゆる病気に関連があると言うことが知られています。

そして残念ながら現在わかっているほとんどの病気とタバコの関係は、マイナスの関係です。

つまりタバコを吸ったり、近くの人間のタバコの煙を吸わされることによって病気になったり、ガンになったりとういうことがわかっているわけです。

がん情報サービスのホームページに詳細な記載があります。

ここではタバコは呼吸器、消化器系のほとんどのガンのリスクとなるだけでなく、一見すると直接関係ないような婦人科系のがんの発生率を上昇させることも知られています。

テレビや新聞などのメディアでタバコの害悪があまり報道されていないのは、まさにJTがうまく立ち回って各メディアに広告を出稿し、根回しをしているから以外のなにものでありません。

このあたりが広告収入に頼るメディアと、スポンサーの不都合な関係なのでしょうか。

タバコを法律で規制することのジレンマ

とここまでタバコの解約について書いてきたのですが、これを法律や規則で縛るのはなかなか難しいかもしれません。

もしタバコを個人の嗜好品として扱うのであれば、アルコールと同様に規制することは難しいでしょう。

現実的な細かい話は別にして、酒が嫌いなら飲まなければいい、タバコが嫌いなら全席禁煙の店に行けばいいという議論が成り立ってしまいます。

飲食店をどの程度公共性のある場所として位置づけるかは難しいですが、企業や個人が運営する営利目的の飲食店は、かなり公共性の乏しい、プライベートな空間という認識の方が合っているような気がします。

健康の観点からはタバコを否定するのは全く間違っていないのですが、法律で規制することのなかなか難しい問題が横たわっています。

それでもタバコは禁煙にした方がいい

最終的には、飲食店は全店禁煙にした方が良いでしょうね。

健康のためには喫煙率は絶対に下げた方が良いです。

タバコ関連の病気が少なくなることで、医療費は削減されます。

よく勘違いされることですが、喫煙者が支払っているタバコ税よりも、喫煙のおかげで必要になる医療費の方がはるかに莫大です。

タバコの吸える場所を制限し、日本全体の喫煙率を徐々に低下させるというのは、政府のバックアップでやってもいいんじゃないかと思うのです。

【医師の視点】医者の喫煙率はやっぱり低い。しかし喫煙者は確実に存在している

2018年5月2日
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