発生学 – おすすめ医学書

発生学は、医学部では解剖学の一章として扱われる程度かと思います。もちろん、学問としてはちゃんとした1分野なわけですが、臨床と直結しない分、医学部での存在感はそれほどでもありません。

臨床の分野に進んで基礎的な発生学の知識が要求される分野というのは、せいぜい小児・産婦人科くらいでしょうか。他の診療科でも発生学の知識があることに越したことはないですが、必ずしも必須の知識とはなり得ないでしょう。

網羅的な教科書というのは、少し手持ち無沙汰になってしまうかもしれません。

★★★ カラー図解 人体発生学講義ノート

初学者向けの発生学テキストです。

300ページほどの薄い教科書でありながら、発生学の基本がカラーイラスト、写真を交えて解説されており、非常に理解しやくなっています。文章は二段組になっており、講義ノートというタイトルでありながら、構成は正当な医学書と遜色ありません。

300ページというと医学書のなかでは薄い部類になるかと思いますが、医学部で学ぶ発生学のウェイトや、国家試験で出題される内容量を考慮すると、十分と言って良いでしょう。

2015年になって第一版が出版された新しいシリーズですが、医学部の講義で用いる教科書としてファーストチョイスとして良いでしょう。

★★☆ 新発生学(Qシリーズ)

こちらも図を交えて発生学をわかりやすく解説したテキストです。ページ数は200ページ程度で、前出の発生学講義ノートよりはやや少なくなっています。

イラストに多くの紙面を割いており、視覚的に理解しやすいように構成されています。そのイラストを解説するように説明が書かれており、箇条書きのようなスタイルになっています。

したがって正当な医学書というよりは、レビュー本、試験対策本として捉えた方が良いかもしれません。

初学者には説明文がやや省略されており、理解に手間取る可能性があるかと思います。また小児科、産婦人科を学ぶ際には、本書を参照するよりは、正当な教科書に立ち戻った方がより理解は深まるでしょう。

全体としては本書の立ち位置はやや微妙であり、試験対策本としてはやや文量が多く、辞書的な医学書としてはやや物足りない、ということになってしまうかと思います。

★★☆ 受精卵からひとになるまで

多くの大学では、発生学について深く学習することはないと思います。発生学は解剖学のついでに、ということもあるようです。

ラングマン、ムーアやラーセンなどのテキストは良書ではありますが、CBT定期試験、医師国家試験を考えると、深入りしすぎている印象があります。

本書はムーア人体発生学のエッセンシャル版ですが、発生学を学習するには十分な内容が含まれており、おすすめしたいところです。

図やイラスト、写真などもふんだんに使われており、本分の内容を理解しやすい構成になっています。またトピックとして臨床にかかわる内容も記述されており、発生学と臨床(おもに先天奇形)の橋渡しをしてくれるでしょう。

このようなエッセンシャル版でも通読するには内容量が多すぎる印象がありますので、辞書的に読まれることをおすすめします。

最終の改訂が10年以上前ですので、★は2つとしました。

★★☆* ラングマン人体発生学

発生学の辞書的、標準的な教科書で、原著は米国でも広く読まれているようです。同じ部類のムーア、ラーセンと比較すると最も簡潔に、深入りしないで書かれている教科書と言えるでしょう。

また発生学の分野では十分な400ページを確保していることから発生学の内容は網羅されており、イラストや画像は豊富です。

一方で、医学部の講義で用いるにはあまりも内容量が多く、試験対策に辞書的に使うとしても、必要な知識にたどり着くまでに時間がかかってしまいます。

発生学の正当な教科書で、名著であるのは間違い無いのですが、医学生向けという点では、人を選ぶ教科書かもしれません。

原著では”Langman’s Medical Embryology”というタイトルで出版されています。

★★☆ カラー版 ラーセン人体発生学

テイストとしてはラングマンと同様。辞書的に使う教科書でしょうか。

ただしすでに10年近く改訂されておらず、優先順位はやや下がるかもしれません。

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