医学部5, 6回生の方々は研修病院選びに苦慮しておられることと存じます。
いくつかの病院に勤務したり、また研修医になって見学にきた学生と話すうちに、それぞれの研修病院に特徴があることが明らかになってきます。
研修病院ごとの特徴を知って、正しいマッチング活動をすることが大切になってきますね。
コンテンツ
研修病院別の特徴について
研修病院ごとに、それぞれの特徴、特色があるのは間違いありません。
一般的に大学病院は手技が少なく、市中病院は手技が多い、地方病院は給料が高いといったなんとなくのイメージです。
A病院が良い、B病院が悪いという風のうわさはもちろん参考にしつつ、大切なのは自分の将来を考えた時に、どこの病院が適切かということでしょう。
ここでは、研修病院を都市部、地方で大きく分類しながら、それぞれの病院のメリットとデメリットについて解説していきたいとおもいます。
大学病院で研修することのメリット・デメリット
研修病院の中で規模は最大。
教授回診やカンファレンスを有意義なものと考えるかどうかだが、退屈なものでしかないことが多い(実際市中病院の先生でも否定的な考えをもつ人は多い)。
マイナー科で長く研修したい場合などは大学病院の選択もありか
- 医局の雰囲気が分かる。医局とのコネを作ることができる(母校でない場合は重要かもしれない)
- アカデミックな雰囲気に触れる事ができる
- 研修医の同期が多い
- 責任を持つ場面はほとんどなく、業務は楽。
- 教授回診、無駄に長いカンファレンスなど雑用が多い
- 給料が安い
- 経験値という点では市中病院に比べて劣る
都市部中核病院のメリット・デメリット
実際に感じている事だが、若い先生が多いと質問しやすく勉強になる。
症例も豊富にあるので、やる気になれば実力はつくだろう。随時研修医がいるためか、指導する側も研修医に慣れている感がある。手技の件数などに関しては冒頭の通りで指導医次第。
- 全科揃っている
- 医師、指導医の数が多い。若い医師も多い
- 近隣大学の医局の話もちらほら入ってくる
- 3年目以降のキャリアも考えやすい
- 3次救急をもつ場合が多く、1,2次救急が手薄。その分経験は少なくなる。
- 医師の数は充足。即戦力として扱われる事は少ない
- common diseaseは少ない
都市部中規模病院のメリット・デメリット
ここで想定しているのは、都市部にある200-300床くらいの、市街地にはあるけれども、研修医の採用人数は5人くらいといったような病院です。
これらの病院を一括りに語るのは難しいのですが、何かしら有名な診療があるというわけでなければ、なんとなく全体的にアクティビティが低い印象です。
- 市街地に住める
- 医局コースも考えやすい
- まったりとしている勤務体系が主体
- 即戦力として扱われる事は少ない
地方中核病院のメリット・デメリット
責任を持たされることが多く、研修は充実。即戦力として扱われ手技も多い。ただし勤務が激務なので、相応の体力と精神力が必要。結婚を見据える場合は出会いも少ないか。
- 即戦力として動員される。責任をもつ場面が多い
- 軽症から重症まで症例が豊富
- 給料が良い
- 当直回数は多い。勤務時間も長い
- 遊ぶ場所がない
- 3年目以降のキャリアを描きづらい
ブランド病院のメリット・デメリット
東京に限らず、北海道、沖縄、千葉あたりにもパっと浮かぶようなブランド病院がありますよね。
私の同級生も、某ブランド病院で勤務していましたが、水が合わなかったのか、知っているだけで2名は途中で辞めていきました。ですから、ブランド病院は研修医を選ぶような空気があるのかもしれないですね。
- キャリアアップができる
- 同期の研修医が多い
- 実力がなければドロップアウトも可能性あり(同期から聞く限り多いようだ)
- 基本的に忙しい
- やる気がないとつらい
病院側は見学に来た医学生を評価しているのか?
一部のブランド病院を除いては、大抵の研修病院は学生を評価する余裕なんてないと思います。
私はこれまで5個以上の病院で働き、それ以上の複数の病院に出張に行きましたが、どこの病院でも見学に来た研修医を評価しているということはなかったですね。
2010年代の研修医不足時代にあっては、まさに研修医の売り手市場でありますから、よっぽど危ない研修医でない限りは、問題なく採用されること間違いなしです。
下記は一部のブランド病院に限った、病院側の学生に対する評価の決まり方です。あくまで伝聞ですし、私もそのような施設にいたことがないので、なんとも言えないのですが・・・。
病院側の学生に対する評価の決まり方
病院側の学生に対する評価は
- 病院見学の回数、そのときの態度
- 学生時代の活動内容
- 希望する診療科
- 試験の成績
の4つに大きく左右されているようです。
1に関しては、A病院では見学にきた学生を後期研修医が評価している、とか、B病院ではカンファレンス中に英語で質問を投げかけその返答を評価する、などの直接的なものから、明確な基準のない、あいまい評価方法まで様々あるようです。
2に関しては“普通でない学生”を避ける目的があるようです。
特別な事情がないにも関わらず、大学時代に1度もサークルや部活、医学部以外のコミュニティに属したことのない学生は、”コミュニケーションに不備あり“と思い込まれても仕方ない部分があります。
やはり病院側も地雷は踏みたくないのでしょう。
3に関しては内科系、外科系で偏りが出ないように希望診療科を考慮して調整されていると聞きます。
確かに一部の病院においては”外科コース””内科コース”などがあらかじめ設定されており、指導する側の負担を考えれば合理的だと思われます。
4に関しては、具体的な話は聞いたことはありません。私自身は、研修医以前段階で、有能な研修医とそうでない研修医をふるいわけるのはほぼ無理だと思っています。
医学的な知識の習得に加えて、やる気、患者への対応、器用さ、人間関係の良好な維持など、医者として働くにあたってはいろんな能力が要求されますからね・・・。
レジデントナビ・略してレジナビに参加するメリット
毎年、医学生向けには全国各地の研修病院の説明会が行われます。
一番有名なのは、民間医局を運営するメディカルプリンシプル社が主催している、レジデントナビ、略してレジナビでしょうか。
このレジナビでは、全国各地から研修病院が研修医の獲得のためにブースを設けているほか、病院見学する際の注意点とか、病院選びの要点なども説明されています。
全国的に研修病院を探している学生にとっては、ぜひとも参加しておきたいイベントになっています。
レジナビに参加するメリットは、全国各地の研修病院で働いている研修医や指導医、直接意見交換できることに尽きるでしょう。
病院の概要や力の入れている分野などは、いまやホームページを閲覧すれば大体わかりますが、具体的に自分が働く姿というのは想像するのが難しいかもしれません。
実際にその場で働いている研修医の姿を見たり、研修医の病院に対する意見を聞くことによって、その病院で働いている将来の自分の姿をイメージしやすくなります。
生の声を聞くというのは非常に大切なことです。
レジナビに参加する研修医は、できる研修医ばかり
一方の病院側からのレジナビの参加者というのは、どのように決まるのでしょうか。
研修医はそもそも当番や当直などで忙しいのが常ですから、まず第一優先は予定の空いている研修医になります。
そしてその次に大切なのは、研修医の中でも仕事に熱心で、仕事のできる研修医が選ばれるということです。
これは病院側の立場に立ってみれば当たり前のことなのですが、レジナビは研修医を勧誘する場であるわけなのですから、できる研修医を病院の代表として送り出したいものです。
そしてこのレジナビでは、研修医だけではなく、研修医の獲得を目指す研修医の統括責任者であるベテラン医師、または指導医クラスの医師が同時に出席することになります。
まさに、レジナビは研修病院の1日を知ることのできる貴重な雰囲気なわけですね。
レジナビに参加する意義はあるのか?
レジナビは本当に魅力的な説明会です。これは間違いありません。
でも少し立ち止まって考えてみます。本当に研修するにあたって有意義な情報が得られるかどうか、ということなのです。
ネガティブな話は出てこない
まず心得ておくべきは、レジナビに行ったからといって突っ込んだ話が聞けるわけではないことです。
レジナビに出席する研修医は仕事に一直線で、日々の労働としてなるべく早く帰宅するとか、労働時間に関してあまり考えている研修医はいないように思います。
おそらく
「この病院は忙しいですか?」
と質問したとしても
「忙しいのが当たり前」とか「そんなに忙しくないよ」
と言っておきながら、実際は当直が月6回なんてのは普通にあることでしょうね(これは普通に忙しいですが)。
そうです。彼らの忙しくないとかつらくないというのは、普通の研修医にとってはすごく忙しくてつらい、なんてこともあるわけです。
病院の中の人間関係が最悪で、うつ病の職員が続出しているとか、人格的に問題のある外科医がいるとか、そんな話は絶対に出てこないですよ・・・。
加えて研修責任者や指導医クラスの重鎮医師がいる手前ですから、病院のネガティブな側面を話すこともできません。
「うちの病院は忙しいからやめといた方がいいよ」
なんて口が裂けてもいえない環境が、そこにはあるのです。
ですからどこの病院のブースに言って説明を聞こうとも、同じようなポジティブな説明がなされるだけなのです。
給料の話は聞けない
またお給料の話を聞くのも難しいでしょうね。本当は働く上でお金のことはすごく重要です。
一般社会でもアルバイト先を選ぶ時だって、時給は大きな決め手になりますし、転職するときも給料が上がるかどうかは重要です。
しかしレジナビでは金銭的な話をするのはあまり印象がよくないでしょう。
出席している研修医や指導医に
「こいつは金目当てか?」
と思われても仕方ありません。
したがってお給料の話はホームページなどから推測するしかないのが現状なのです。
このように考えてみると、研修医たちが本当に感じている印象を聞くことはできないわけになります。
わざわざレジナビに足を運ばなくとも、インターネット上のリアルな口コミを見ている方が、客観的な正しい情報を得ることができるのかもしれません。
本音を言い合えるレジナビが理想
本当は残業したくない、オンオフをはっきりさせたいという研修医もいるでしょう。
しかしそのような研修医たちは、やる気溢れる人間が多くいるレジナビの場には不向きかもしれません。
もう少し「本音を言い合えるレジナビ」があれば良いのではないでしょうか。
病院のネガティブな面も含めて率直に学生に伝えられるような、そんな説明会が求められているような気がします。
ちなみに医学生諸君、指導医の先生方、残業したくない、オンオフをはっきりさせたいというのは一方的な欲求ではなくて、ホワイト民間企業なら当たり前の環境ですからね。
ここはきっちり押さえておきましょう。
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