神経解剖学の立ち位置は微妙なところですね。
医学部では脳を使った解剖学の実習が行われるのですが、人体解剖のようにメスを使って切り刻んだりはありませんし、同定するといっても脳神経くらいです。
それだけ脳に関しては、目に見えない部分があまりにも発達していることなのでしょうか。
ですから、教科書の選択ということになると難しくなってしまうのです。
余裕があれば実習用と、座学で使用する標準的な教科書を手元に置いておくのが良いかもしれません。
★★★ ハインズ神経解剖学アトラス
これ1冊あれば、神経解剖学のだいたいは網羅できると思います。
ある章では染色切片とイラストの対比が見開き1ページで掲載されており、この章はおおよそ60-70ページに渡っています。
実は脳切片を詳細に扱った教科書はあまりないのですが、断面で脳の解剖を理解することに関してはこの教科書が一番でしょうか。
300ページほどの教科書ですが、アトラスの名の通りそのほか中枢神経に関する写真やイラストも豊富に掲載されています。
脳切片を見ながらの実習になると、本書が一番使いやすいのではないかと思います。
★★★ 神経解剖学講義ノート
神戸大学の先生が執筆されている教科書です。神経解剖学分野には珍しく、訳本ではなく和書となっています。
イラストと文章がバランスよく配置されており、読み進めるのにストレスがありません。
また全体でも230ページほどの薄い本ですから、通読も十分可能です。
試験対策ということになると、もう一冊辞書的な教科書が必要かもしれませんが、入門書としては良い教科書ではないでしょうか。
★★☆ リープマン神経解剖学
280ページの比較的薄い本で、文章主体に構成されています。
掲載されているアトラスはほぼイラストで、マーティンなどに比較すると漫画のテイストで描かれています。
パーキンソン病などのトピックは詳しく解説されていますが、全体として深入りせず、24章あるうちの各章は数ページにとどまっており入門orレビューとしての位置づけの教科書でしょうか。
章末には理解度を図る5肢択一問題と症例問題が掲載されています。
★★☆ マーティン神経解剖学
460ページの分厚い教科書で、文章、イラスト、写真のバランスがとれています。
内容はイラスト、写真を交えた神経解剖の解説書であり、標準的な神経解剖学書であり辞書的な教科書と言えるしょう。
巻末80ページは1ページにイラストor写真が1枚が掲載してあるので、神経解剖学実習にも使えるテイストになっています。
★★☆ 神経解剖学集中講義
USMLE Step1対策に書かれた原著High-Yield™ Neuroanatomy (High-Yield Series)の訳本です。
原著での評価は非常に高く、Step1対策にはFirst Choiceとなっているようです。
神経解剖学というタイトルになっているますが、実際のところは基礎医学で神経解剖学、それに関連して臨床医学で学ぶ神経疾患までを網羅した内容となっています。
各項目は数行でまとめられており、160ページという非常に薄い本ですが、脳解剖(矢状断、冠状断、軸状断)の写真や脊髄路も掲載してあり、分かりやすいくまとまった本であるといえます。
ただし、試験対策として神経解剖学に関連した項目の要点をまとめた教科書なので、初学者には向きません。
USMLEを受験するのでなければ、持っておく必要はほとんどないでしょうね。
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