医療の高度化と専門分化がもたらしたもの

今の医療って、すごく高度化していますよね。

毎年のように各分野から新しい薬が発売されますし、普段診療しながら勉強しているだけでは、とてもじゃないですが、他の専門分野の内容まで追いついていく暇がありません。

ここでは、医療の高度化が今の病院にもたらしたものについて書いてみたいと思います。

責任を持って診察できる範囲が狭くなる

現在行われている医療というのは、非常に高度に発達しています。病気や疾患が細く分類されるに従って、耳鼻科や眼科と一口にいっても、一人の医師がそれらの全てをカバーするのは難しくなってきています。

ですから大学病院などでは、ある診療科に属しているにもかかわらず、ひとつの病気しかみない、というような風潮が生まれて来ているわけです。

大学病院というのは、研究を主体にして医療の発展を担う診療科なわけですから、専門家を養成するという意味では、これはこれで合理的と言えるのです。

もちろん特定の病気しか診察しないと言うのは、その病気の治療法や診断方法を発展させるには非常に大切なことです。ただしそれ以外のこととなると、とたんに疎くなってしまうというリスクもあるわけです。

専門的な医療しか提供しない傾向

ですから、専門外の病気や疾患に関しては、責任を持った治療ができないと判断されて、他の診療科に紹介される場合がよくあります。

私自身も、自分の専門外の病気や症状となると、すぐにその専門と思われる診療科に紹介しています。今やなんとなく診断治療ができるそれが許される時代では無いのです。

最高水準の医療が求められる

このような医療の高度化を背景として、すべての疾患や病気で、最高レベルの医療が求められるようになっています。

例えば地方病院と都会にある大学病院では、医療の設備や医者の数、看護師等のスタッフの数が大きく違います。

医療は高度化し、大学病院ではさらに高度な医療が行われるに従って、ある病気や疾患に対する標準治療と言うのは、どんどん高度化していきます。

一方でヒト・カネ・モノが限られた地方病院では、都会の大学病院と同様の水準の診療行っていくのは困難です。

そのような背景があるにもかかわらず、地方病院であっても、難しい病気が適切に診断・治療されなかったという理由で、容易に裁判に発展してしまう傾向がみられます。

都市と地方の医療格差

確かに、本来は日本全国すべての病院に置いて、同様の水準の医療が行われるべきなのです。

しかし、それは非常に難しい話です。日本全国どこの都市でも、一流のアーティストによるライブを行うのが難しいのと同様に、一流の医療を提供するのは、最初から不可能なのです。

都市と地方の医療格差について、限られた医療資源を用いてどのように少なくしていくか、またどのように理解を得ていくとか、ということが求められいてるような気がします。

リスク回避の医療の風潮へ

このような風潮は、一部の医療に影を落としつつあります。

例えば少しでもリスクのある治療法を行うことを試みれば、治療がうまくいかなかったり、思いもよらぬ副作用が出現したりすることにより、訴訟のリスクを抱えてしまいます。

ですから、今の病院の医療では、医師と患者の間に相当な信頼関係がない限りは、積極的な治療を行わない風潮が出てきていると思います

以前はお任せしますで住んでいた医師と患者の関係が、医師の治療に関して厳しく評価される時代になったと言っても過言ではないでしょう。

まとめ

医療の高度化、専門分化に伴って、医者や患者の考え方も大きく変わって来ました。

全体的には医療者にとって働きにくい状況に変わりつつありますが、時代の流れとしてなんとか乗り越えていきたいものです。

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食物アレルギーに関する対応の難しさ

先日旅行に行った際に、アレルギー対応の難しさについて考えさせられる出来事がありました。

私はカニに対して食物アレルギーがあり、それを食べないようにしています。

カニを食べると、アナフィラキシーショックが出るわけでは無いのですが、蕁麻疹のような症状が出て、全身がかゆくなってしまいます。

この症状がはっきり出るとわかったのは12歳ごろのはなしであり、以来カニという食物は私にとっては地雷のような存在で、特に冬の季節は避けるようにして生きてきました。

生死に関わると言う事は無いのですが、食べてしまたっら最後、3時間ほどかゆいのを我慢しなければならないと言う状況が起こり得るわけです。

ですから、飲み会なので料理を食べる際には、カニやすり身などは極力食べないように気をつかっています。

旅行でホテルに行った際に危機一髪

先日旅行に行った際に、夕食をホテルで食べる機会がありました。

もちろん事前にホテル側には、カニにアレルギーがあるので、カニを使った料理は出さないでください、と言うふうにお伝えしていました。

チェックインの時にも、ちゃんとアレルギーの件についてはスタッフが把握していたようです。

ところが夕食の段階になって、いざ配膳されてきた料理を見てみると、なんと私のほうのさらに、カニが載っているわけです。

まさにえええーって感じです。アレルギーがある人間に対して、原因を出してしまうなんて、なんということなのでしょうね。

幸い、配膳されているのは明らかにカニだったので、静かに妻に渡して、食べてもらうようにしました。

病院の中でのアレルギー対応

食物アレルギー

このようなアレルギーに対する対応と言うのは、非常に難しいことが多いです。

病院の中では、食事に関しては、専門の栄養士が患者さんごとに個別にメニューを調整して調理しています。ですので、食事のアレルギーで患者さんが誤って原因物質を摂取して問題になることは少ないように思います。

病院の中の調理場では、アレルギー対応だけではなくて、減塩食や低タンパク食など、相当食事に関してもかなりの力が入っていると言う背景があるのかもしれません。

薬剤のアレルギー対応

一方で、薬のアレルギーの対応と言うことになると、結構難しい場合も多いです。私たち医師が薬を処方したりする場合には、一応患者情報の欄から、アレルギーの項目を見るようにしています

ただ、日々の忙しい診療の中で、自分自身で何度もチェックしたりするのは不可能です。また、同じ薬剤でなくとも、含有されている成分が同じだけと、違う薬剤、ということも十分あるわけ。

ですから、事前にアレルギーの情報を把握していたとしても、患者さんにアレルギーの原因となるような薬剤を投与してしまうことがたまに起こります。

実際に私の同僚が、運悪く患者さんにアレルギー性物質をを含んだ薬剤を処方してしまったことがありました。

幸いその薬を使用した患者さんは皮膚に発疹が出ただけで、大きな被害はなかったのですが、病院内で起きた事件ということで、インシデント扱いになってしまいました。

病院の中でインシデントがおきた場合の対応

CTやMRI造影剤への対応

患者さんによっては、特定の薬剤によってアナフィラキシーショックを起こして生死に関わることもありますので、この患者のアレルギー問題というのは非常に重要です。

特にアレルギーがよく出やすい、CT造影剤やMRI造影剤に対する対応は人一倍気を使います。

患者さんには造影剤カードと呼ばれる、過去に使用した造影剤、その時の症状などを記録するいわばミニカルテのようなものが手渡されるのが一般的になっています。

また、その時の記録は電子カルテ上にも蓄積されており、くしゃみや鼻水などのアレルギーを少しでも疑う症状があった場合には、次回から異なる造影剤を用いる、という対応がとられます。

ホテルや旅館でのアレルギー対応の難しさ

アレルギーに非常に敏感な病院が、万全の体制で頑張って対応していても、完全には防ぎきれないのが、このアレルギーと言う問題なのだと思います。

食事の内容やサービスを質など、アレルギー対応よりももっともっと重要なことがたくさんあるホテルや旅館においては、アレルギーの対応を万全にするのは難しいことでしょう。

ホテルや旅館の料理というのは、限られた食材で、アレルギーに関する専門のスタッフもいない中でアレルギーの対応しなければなりません。これは想像するだけでも、非常に面倒で難しいことです。

宿泊施設の料理人は、食材や調理法、味に関してはプロかもしれませんが、アレルギーということに関しては普段意識していないでしょう。

そのような実情を知っている身分としては、とてもホテル側に対しては、今回の件は指摘はできても、苦情を言うことができませんでした。

まとめ

アレルギーに万全に対応する、というのは非常に難しいものです。

アナフィラキシーショックが発生するほどの重篤な食物アレルギーの場合は、何としててでも、原因物質は除去しなければならないですが、病院外の施設では、万全に対応するのが難しい場合もあるでしょう。

そのようなことを実感した体験なのでした。

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中心静脈ポートのあれこれ

中心静脈ポートの概要

中心静脈ポートと言うのは、体の皮下に埋め込む小さな機械のことです。

この中心静脈ポートは、直径はおよそ3センチ位で、簡単なイメージでは、ロッテのパイの実みたいな形をしています。

そしてこのポートとデバイスにはカテーテルと呼ばれる内部が空洞の細長い管がつながっており、その管の先端は、心臓の近くの太い血管まで到達しています。

したがって、中心静脈ポートの全貌というのは、ロッテのパイの実+ストロー、という感じになりますでしょうか。

このポートの厚みのある本体部分、つまりパイの実部分に、専用の針を刺すことで、栄養の点滴や、抗がん剤の点滴などを容易に安全に行うことができ、注入した液体を直接心臓の近くの大きな血管まで投与することができるのです。

さて、ポートは皮下は埋め込むと書きましたが、具体的にはちょうど鎖骨の下に埋め込むことが多いですね。

まれに鼠径部と呼ばれる足の付け根や、肘のところに埋め込むこともありますが、ほとんどは鎖骨の近くに留置することになります。

学術的に詳細な情報についてはこちらをご覧ください

ポートを留置する方法

処置は局所麻酔でおこないます。

慣れている人がやるのか、そうでない人がやるとかにも言ってもかかる時間は違いますが、おおよそ1時間もあれば終わります。

このポート留置という手技は一緒になって1年目とか2年目とか研修医の先生がまず初めに取り組む処置でもあります。

私も研修医2年目の時には、色々とポート留置について教えを受け、慣れてきた頃には最初から最後まで一人でポート留置を行なっていました。

そんな私でも、慣れてきた頃には、順調にいけば30分位で終わっていたので、技術的にはそんなに難しくない手技なのです。

ですから、アメリカなどでは、トレーニングを受けた看護師がやっています。

ポート留置の利点

痛い思いが少ない

抗がん剤の投与何回も受けている患者さんでは、抗がん剤の副作用によって、血管が次第に細くなってきたり、もろくなってきたりします。

点滴で投与する抗がん剤は、毎週とか、3週間に1回とか投与していきますから、毎回注射をして、点滴をする管をつなげていけば、患者さんは毎回辛い思いをします。(病院の中ではこれをルートを確保する、よくいます。)

また注射をする医療者にとってもこれは結構負担で、血管の確保が難しい患者さんに、何度も何度も針を刺すのは、医療者側も申し訳なくて辛いものがあります。

上にも書いた通り、ポート自体はパイの実のような携帯で、直径2センチとか3センチ位ありますから、失敗してうまく針が刺さらないと言う事はまずないと言っていいでしょう。

医療者側も、消毒をしてポートのあるところに針を刺すだけで良いので、点滴用の注射をするよりは、はるかに楽です。

たくさんの量を注入できる

ポートを用いて、抗がん剤でなく栄養の点滴を行うこともあります。

栄養の点滴の場合、細い血管に投与してしまうと、血管がダメージを受けてしまうような組成の栄養点滴もあります。

手に点滴の針をさして細い血管からこれらを注入する場合、血管がダメージを受けてしまうのですが、ポートを経由して直接太い血管に注入することで、これらのダメージを回避することができます。

また、細い血管に投与するよりは、太い血管に投与する方が、時間あたりの投与量は多く投与することができます。

中心静脈ポートのトラブル

しかしもちろんこの中心静脈ポートと言うのにもトラブルがつきものです。

カテーテルがつまる

よくあるトラブルとしては、まずはポートが詰まるということが挙げられるかと思います。

このポートというデバイスは人工物で、かつ細長い管がつながっていますので、何度も使用していると突然うまく液体が流れていないと言うことに遭遇することがあります。

もちろん毎回ポートを使って点滴をする場合には、つまりがないかどうかをあらかじめ生理食塩水でテストします。

ですから、ポートが詰まったからといって、患者さんに即座に実害があるわけではありません。

ただし一度ポートが詰まってしまうと、再開通させることは現実的に非常に困難なので、いちど埋め込んだポートを取り出して、再度留置すると処置が必要になってきます。

ポート感染

ポートというのは、金属製またプラスチック製の人工物ですから、体の中に埋め込んだとは言っても、異物には違いありません。

通常の生活をしている患者さんであれば、感染と言うのはそうそう起こらないのです。

ただし例えば強い化学療法で免疫力が弱っている患者さんや、放射線治療を行って抵抗力が落ちている患者さんなどでは、そこそこの頻度で感染を起こしてしまいます。

一旦ポートに感染が起きてしまうと、抗生物質を使った治療を行っても、根本的な解決にはならないことが多いです。

ですから、ポートを埋めている患者さんで、高熱が長く続き感染症が疑われるような場合などには、最終的には抜去してしまうことが多いですね。

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医師が死亡診断書を書く時に感じていること

患者さんが死亡した場合には、死亡診断書を書くことになりますね。

死亡診断書を書くのは当直かアルバイトをしている時

最近では自分の病棟で患者さんが死ぬ事は滅多にないので、死亡診断書を書くのは病院で当直しているときか、アルバイト先の療養型病院で患者さんが死亡した場合になるでしょうか。

ただし、救急とか、療養型の病院で勤務されている先生の場合は、患者さんを看取ることも多いかと思います。

医者の中には、週に2回とか、そんなハイペースで死亡診断書を書いている先生もいるのかもしれません。

在宅医療でお看取りしている先生であれば、もっともっと書いている先生もいるかもしれないですね。

死亡診断書の書き方に迷う

この死亡診断書なのですが、書き方に結構迷ってしまうことがあります。

死亡診断書の場合には、死亡した原因が自殺かどうかとか、他者による介入がないかどうかなどを書く部分があります。

病院での死亡であれば、ほぼ100%が病死なわけですが(病死以外の原因があったらそれはそれで問題ですが)、例えば救急などで搬送されてきた患者さんの場合には、記載すべき内容に迷うことがあるかもしれません。

また病院の中でなくなった場合であっても、死因を記載するところで迷うことがあります。

死因の書き方は難しい

死亡診断書の書類にも記載してあるのですが、死因の部分には、呼吸不全とか心不全等は欠かないように、ということが書いてあります。

人が亡くなる時と言うのは、最後のほうになると呼吸がどんどん浅くなって、心臓の動きどんどん遅くなって、体の呼吸循環機能が維持できずに亡くなっていくことになります。

いって見れば人の最後の死因と言うのは、呼吸不全であり循環不全であるということも言えるわけです。だからこそ、死因を明らかにするために、呼吸不全や心不全を書かないように、というお達しなのでしょうか。

したがって、私たちが死亡診断書に記載する時の病名としては、胃がんや大腸がんといった記載になるでしょうか。

死亡診断書の記載に対するフィードバックがない

ちなみに死亡診断書については、私もこれまで何百通と書いてきましたが、一度もその記載についてその評価を受けたことがありません。

つまり、今までと同様のやり方で良いのか、それとも少し直したほうがいいのかフィードバックが欲しいところなのですが…。なかなか難しいものですね。

まあ厚生労働省から、いちいち死亡診断書の問い合わせとか電話でもらっても、たぶん評判は最悪になってしまうのでしょうが・・・

ただし、自分の書いたものに対して、その評価がないわけですから、医者になって何年も経って、しかも死亡診断書を何十通を書いていても、「これでいいのかな??」と思ってしまうわけです。

死亡診断書を書いてもお金がもらえない

一般病院であれば、診断書などを記載したりすると、2,000円とか3,000円位は給料に上乗せれることがあります。

しかし、この死亡診断書の場合は、記載しても全く我々医師のインセンティブにはなりません。

少しイヤラシイ話にはなってしまうのですが、やっぱり仕事に対する対価は欲しいもんです。これがなかなかつらいところですね。書類仕事はつらいもんです・・。

死亡確認・お看取りの現状と課題

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医者に処方された薬が効かなかったときにすべきこと

もし医者に処方された薬の効果がなかった時は、どうすれば良いのでしょうか。

内服薬の種類によって役割が異なる

薬の処方にもいろいろなケースがありますので、ケースバイケースで考えていかなければなりません。

薬の中には、効果が実感できなくても飲み続けなければならない薬があります。

たとえば血圧を下げる薬や、糖尿病の薬などは、効果を実感できる事は少ないかもしれませんが、長期的には飲み続けることが必要な薬です。

一方で痛み止めや吐き気どめなどは、毎日飲む続ける必要はなく、症状に応じて処方されることも多い薬です。

また、患者さんがすぐに効果を実感しやすい薬でもあります。

ですから、医者が出す薬の中にも、どうでもいい薬、飲まなくても良い薬、と、飲まなければこれは命に直結するような薬もあるわけです。

一応建前上、薬はちゃんと飲んだ方がよいわけですが・・・。

効果をみるためにも処方された通りに内服することが大切

例えば吐き気どめの薬などは、作用機序の違う薬が何種類も発売されています。

そして患者さんによっては、同じ内服薬でも効果があったり、なかったりします。

痛み止めも同様に、どれくらいの量が適切かという事は、患者さんによって異なります。

初診時の診察だけでは、適切な量を決定するのは難しく、何回も診察しながら適切な種類、量を決定していきます。

薬の効果は、患者によって異なる

血圧を下げる薬や、糖尿病の薬など、り微妙な調整が求められる薬ではなおさらで、患者さんの薬に対する反応を見ながら、少しずつ調整していきます。

この血圧の薬を1錠飲めば、血圧が20下がります、なんて決まりきったものはないですからね。患者さんの薬に対する反応をみながら、ということになるわけです。

ここで必要な情報は、いまの薬の種類や量では、どのような状況なのか、ということを知りたいので、処方された薬を指示通りに飲むことは大切なのです。

というのも、勝手に薬を中断してしまっていては、どれくらいの量が本当に適切なのか、わからないからです。

効果がなかったと言われても気分を害することはない

痛み止めや、吐き気どめなど効果がすぐに実感できるような薬に関しては、診察の時に患者さんから「飲み続けましたが、効果がありませんでした」と言われても、「そうですか」といった感じで、気分を害することは全くありません。

むしろ正直に話してくれてありがとう、効果がなくても申しわけありませんと言った気持ちになります。。

そもそも、100人中全員に効果があるような、魔法の薬なんてないですからね。痛み止めとか、吐き気止めであれば、なおさらです。

したがって、あまり一遠慮せずに本当のことを言っていただいた方が、薬の変更などをすることで、診察はスムーズに行くのではないかと思います。

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高層マンションに住むと流産の可能性が高くなるって本当?

高層マンションに住むと流産しやすくなる、という仮説

「高層階への居住は住む人の健康面にさまざまな影響を与えますが、妊婦さんにはそれが特に顕著です。33歳以上の妊婦さんは6階以上の高層階には住むべきではないように思えますね」

こう語るのは、長年にわたり環境が人体に与える影響を調査してきた逢坂文夫さん。

国土交通省や厚生労働省、文部科学省からの依頼を受けシックハウス症候群ほかを研究、1994年に発表した論文で、『高層に住む33歳以上の女性の流産率は約7割に達する』と発表し、各界に大きな衝撃を与えた公衆衛生学の権威だ。

http://www.jprime.jp/articles/-/4705

上記は週刊女性の2015年の記事ですね。

ざっくり要約すると、高いところに住むほど、そして年齢が上がるほど、妊娠女性の流産確率が高くなるというような話です。

エレベーターの加速度で重力がかかったり、あとはエレベーターがなければ階段の昇降で流産しやすくなったりすんでしょうか。

というわけで、この仮説を文献的に考察してみようと思います。

医学的な記事はあまりない

「高層マンション」「流産」とかエレベーターとか色々単語を入力してみて文献を探してみたのですが、あんまりこれといった記事はありません。

英語でgoogle検索しても、pubmedを検索しても、出てくる結果はたいてい信用できない情報源ばかりです。

このあたりから疑問を持ち始めます。本当に高層マンションに住んだら流産の確率は上昇するのでしょうか。

高層マンションに住むと流産しやすい理由を考える

高層階に住むことで流産しやすい可能性になる、考えられる理由を列挙してみます。

1、エレベーターの垂直方向への移動、加速度。

2、高層階から見える景色の影響

3、高層階に住むと外出が少なくなる

4、高いところでは空気が薄い

これらの理由のうち、4はちょっと可能性は低そうですね。

そもそも日本国内でも、海に面した都市は海抜ほぼ0メートルなのに対して、信州などの内陸部の都市では海抜数百メートルになります。

都市との比較でも海抜が変わる=酸素の濃度は微妙に違うでしょうから、あまり考える必要はないでしょう。

2に関しても、あまり説得力はなさそうです。

そうでなければ、大都市のオフィスビルで働いている女性は、毎日高層階からの景色を眺めているから流産しやすい、とか、デスクトップを東京タワーからの景色にしている女性も流産の可能性が高い、ということになってしまいますからね。

3はどうでしょうか。

家の中に閉じこもっている方が、流産の確率が高くなるとすれば、東北地方や北海道では、冬の方が流産の可能性は高そうです。また、夏の東京は流産の可能性が高そうです。ただ、そんな話は聞いたことありません。

ちなみに冒頭の記事では、高層マンションに住むことによる運動不足による低体温とか、換気不足によるアレルギーが流産の原因かもしれない、と記載があります。

ただそれが真実ならば、雪深く冬の寒さの厳しい、東北地方や北海道の方が、運動不足で換気も少ないでしょうから、流産しやすい傾向があるでしょうね。

高層マンションに住んでいることと流産に直接的な関係があるとすれば、やはりエレベータ利用、による加速度垂直方向への移動でしょう。

この加速度、Gは、からなず体に直接的な影響をあたえます。高層建築物のエレベーターに乗った時には、グググッといった重力を感じることができますね。

では、同じような環境下に置かれているキャビンアテンダントではどうでしょうか?キャビンアテンダントは、飛行機が離陸、着陸する際に必ず加速度を受けています。

キャビンアテンダントであることは流産のリスクにはならない

論文1

J Occup Environ Med. 1998 Mar;40(3):210-6.
Reproductive health outcomes among female flight attendants: an exploratory study.
(略)
conclusion
we did not find an overall increased risk for spontaneous abortion among flight attendants, compared with other working women (10%-20%).

上の論文はカリフォルニア大学が、妊娠歴のあるキャビンアテンダント400人近くを調べた研究です。

フライトアテンダントも、妊娠初期には当然自分が妊娠していることを知らずに、飛行機に乗って勤務を続けることになります。ですから、妊娠中も確実に加速度を受けているわけです。

結果は抜粋していますが、「フライトアテンダントも、そうでない人も、自然流産の割合は変わらない」と書いています。

論文2

Miscarriage among flight attendants.

Grajewski B, Whelan EA, Lawson CC, Hein MJ, Waters MA, Anderson JL, MacDonald LA, Mertens CJ, Tseng CY, Cassinelli RT 2nd, Luo L.

Epidemiology. 2015 Mar;26(2):192-203. doi: 10.1097/EDE.0000000000000225.

PMID: 25563432

こちらはアメリカからの別の論文です。

簡単に説明すると、2000人以上のフライトアテンダントを調査し、同じ都市に住むteacher(=教師)の流産割合などについて比較しています。
Miscarriage risk was not increased among flight attendants compared with teachers.

この論文でも、結論はフライトアテンダントだからといって、教師よりも流産しやすい、ということはなかったとのことです。

この理論からいくと、エレベーター利用よりもはるかに高い重力がかかるフライトアテンダントの女性でも、自然流産のリスクは高くならないようです。

もし高層ビル・高層マンションに住むことによって流産の確率が上昇していると仮定して、その原因がエレベータの移動にあるとするならば、どうやらその可能性は低そうです。

まとめ

シンガポールや香港などでは、十分な土地がないために国民のほとんどは高層マンションにすまざるを得ない状況になっています。

また東京や大阪などの大都市においても、都心部に一軒家を構える事はほとんど不可能ですので、若い夫婦などは高層マンションに住んでいることが多いでしょう。

そのように考えてみると、国土の狭い国家で流産が多いと言うような話や、東京や大阪の都心部では流産が多いと言うような話も聞きません。

正確にはすごくよく調べれば、高層マンションの高層階に住むことと、流産のしやすさは関係があるのかもしれません。

この記事では、どうやらエレベーターの移動に関しては、フライトアテンダントの論文の結果を考えると、あまり流産とは関連がなさそうです。

一説には、高層マンションに住んでいる女性は所得が高い=ハードウォーキング=流産の確率が高い、とも言われています。流産と高層マンションの関係については、今一度よく考えてみる必要があります。

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