インフォームド・コンセントの実際

内科医として診療していて避けられないのはがんという病気です。

患者さんの多くは健康診断や近くの開業医でレントゲンをとったり内視鏡の検査を行ったりして、異常があると言って私たちの病院に紹介されてくることが多いです。

診療の流れ

基本的な流れとしては、入院していろいろな画像の検査を行ったり、病変から細胞を取ってきたりして診断をつけることになります。

そして検査が一通り揃った段階で、患者さん本人はもちろん、家族を交えて現在の状況と今後の治療・見通しについてお話しすることになります。

この家族を交えてというのは非常に重要で、高齢の患者さんの場合には、本人だけに話しても理解されていないことが多いですし、たとえ患者さん本人に理解力があったとしても、家族の理解と患者さんの理解が異なっていては大変困るからです。

例えば患者さん本人は病気を直すのがなかなか難しいと分かっていたとしても、家族のほうはそのように思っていないかもしれません。

そのような場合には治療の受ける止め方も違ってくるので、やはり患者さん本人と家族の病気に対する理解を、医療者側と共有しておくことが非常に重要です。

インフォームドコンセントではなすこと

さて患者さんの病状説明では、検査結果を元にして、具体的には現在の病気の広がり、治療方針、治療がうまくいく可能性などをお話しします。

この段階で治療法が全くない、ということはそうそうありませんが、手術や放射線治療が行えず、完治の可能性がほとんど望めないような場合には、

病気を治すことが目的ではなく、あくまで良い時間を長く持てるような治療が主体になります」というように、正直に見込みをお伝えするようにしています。

厳しい話をすることも多いので、若い患者さんやその家族だと、大変落ち込んでいる様子を垣間見ることもあります。そのような姿を見るのは、やはり私たちも同様に辛いです。

ただし、今の医療の状況では、嘘をついて患者さんに希望を持たせる、ということは許されていませんので、本当のことを話すのは絶対条件ですね。

インフォームドコンセントでの質問はウェルカム

私は日々患者さんを診察していて、例えば初診の患者さんや、節目の患者さん、いろいろな検査を行ったあとの説明の患者さんには、最後に「何か質問ありますか」と聞くことにしています。

そして1番重要なのは、やはり検査結果が出揃って、現在の状況と今後の治療法や見通しについてお話しする時です。そういう場合には必ず最後に患者さんの質問を聞くようにしています。

たいていの患者さんは、「特に質問ありません」とか、「先生にお任せします」とかおっしゃられることが多いです。

また質問される患者さんがいたとしても、半分ぐらいは医療行為の内容と言うよりは、生活上の注意事項、例えばこの治療をしていても運動しても良いか否か、この薬を飲みながらでもビールを飲んでいいか、などといった質問の方が多いように思います。

確信的な質問をされる患者さんもいる

時折、こちらが唸るような、医学的な核心をついた質問をされる患者さんもいますが、大抵そのような患者さんはこちらが質問している最中に話を遮って質問されることが多いです。

患者さんにも当然質問する権利があると思いますし、疑問を持ちながら治療するよりも、そのような治療に対する疑問はなるべく少なくして治療に挑んだ方が良いと思っています。

したがって私自身は、常識を外れたような数十個の質問等でなければ、気分を害することは全くないですね。

医者の素質がわかる

そして、このインフォームドコンセントでは、医者の素質が出ることが多いように思います。

研修医時代には、いろんな先生のインフォームドコンセントの現場に立ち会わせていただく機会がありました。

ちょっと早口で喋る先生、ゆっくり丁寧に話す先生、喋り方や態度は申し分ないものの、若干言葉が難しい先生など、やり方は様々です。

ほとんどの先生は第三者として聞いていて問題ないレベルなのですが、中には普段からあまり評判の良くない先生が、突然患者さんに暴言を浴びせたりする先生もいました。

自分が医者になって、一人でインフォームドコンセントをする身分になってよくわかるのですが、このインフォームドコンセントの機会は、患者さんとの関係の中で、1番か2番くらいに大切な時間です。

恋人との関係で言えば、初デートとか、初キスくらいに重要な時間なのです。

そんな瞬間に患者さんに暴言を吐いてしまうなんて考えられないのですが、やっぱり評判の良くない先生は、常識がないのか、そういう発言をしてしまうようですね。

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先生まだ医局辞めてないんですか?