【勤務医の視点】病院や医学部におけるドイツ語の位置づけ。もはや絶滅危惧種




昔は医学といえばドイツ語でしたらしいのです。いや、私もあまり知らないんですけどね。

医学部に入った頃はもう英語一色でしたし、解剖学的な名称も基本的には英語がスタンダードでした。

どうして医学界においてドイツ語は廃れてしまったのでしょうか?

ドイツ語、昔は医学のスタンダードだった

20世紀の前後くらいは、ドイツという国の医学が世界的に進んでいたから、ということらしいのです。

かの有名な森鴎外も、医学を学ぶためにドイツに留学していますね。

業界の中で一番力のある組織が、基準やルールを決めるというのは極めて一般的なことです。

医学も昔はドイツ中心でしたから、ドイツ医学、ドイツ語がスタンダードであったというわけです。

しかし現在の医者や病院、医学部におけるドイツ語の重要性は全くありません。

なぜドイツ語は重要ではないか

https://jipsti.jst.go.jp/foresight/pdf/Top10Articles.pdf

こちらは臨床医学分野における、論文の各国シェアを示したグラフです。

たくさん論文を出している国は、シェアの高い順にアメリカ、英国、ドイツ・・・となっていますね。ドイツも確かに頑張っています。

しかしシェアの内訳をみてみると、ご覧の通りアメリカの存在感が圧倒的です。

厳密にはイギリスも加えると、言語で言うところの英語の存在感は際立っています。

新しい論文は米国からどんどん発表されますから、新しい治療法、新しい医学的な進歩もほとんどアメリカ発です。

2010年半ばからは経済的な中国のプレゼンスが上昇するに従って、米国の臨床医学分野における地位は相対的に低下傾向です。それでもシェアは圧倒的です。

最近上昇中の中国も、発表されている論文はほとんど、というかほぼ全て英語な訳です。

英国やフランス、ドイツ発の論文もそこそこのシェアですが、それらの国から発表される論文もほぼ全てが英語です。

もはや医学業界における言語に関しては、アメリカ主体、英語主体の状況になっていますから、日本語で論文を書いても、世界中の誰も見てくれないどころか、日本人でもみないでしょうね。

ドイツ語が重要でないというよりは、医学におけるスタンダード言語は英語であり、ゆえにドイツ語は重要ではない、といったところになります。

【勤務医の視点】論文を執筆するために準備しておきたいもの

2018年1月13日

日本において病院に残るドイツ語はほとんどない

英語がグロバールスタンダードとなってから随分時間が経ちましたから、いまや病院の中でドイツ語を使うことはまずありません。

もちろんカルテの記載にも、ドイツ語は使いません。「カルテ」の単語がドイツ語なのは皮肉なところですが。

といってもドイツ語はごくごく一部で生き残っています。

ある病院に勤務していた時に、病名欄に「MK」とか「LK」とかカルテに記載されていました。

MKとはMagenkrebs=胃癌、LKとはLungenkrebs=肺癌のことです。

最初の頃は私も「これ何?」といった感じだったのですが、よくよく調べてみると病名のドイツ語表記だったようです。

21世紀になってから20年近く経過している現在あっても、胃癌を英語のgastric cancerとは書かずに、ドイツ語の病名表記を使用する医師がいるんです。

一部の病院の電子カルテの病名選択するところにも「MK」という選択肢があったりします。

もう時代遅れなので、やめてしまった方が良いとは思うのですが…。

もはやここまでくると、英語がスタンダードだけど、かろうじで生き残ったドイツ語だけがなんとなく継承されている、と考えた方が良いかもしれません。

ちなみに、wikipediaにはドイツ語由来の医学用語が紹介されています。

ただ日本人にとっては英語もドイツ語も大きくみれば同じ言語の系統ですから、正直どちら由来でもあまり関係ないのですが・・・。

若い医師はドイツ語なんて知らない

そんな英語がスタンダードになって久しい現状ですから、20-30代の医師はドイツ語なんて知りません。

今の医学部の教育体制では、ドイツ語は第二外国語の選択肢にはあるかもしれませんが、全くもって必修授業ではありません。

私も英語でいうところの「私」とか「あなた」という単語ですら、ドイツ語でどのように表すのか知りません。

胃がんや肺癌の略称は知っているにも関わらず、です。

医師になっても、カルテ記載で単語としてのドイツ語はあるかもしれませんが、ドイツ語がわからずに苦労した経験は全くありません。

ですから、今後も医学業界でドイツ語が復権してくるということはまずなさそうです。

医者だってドイツ語なんて話せない読めない

医学部時代にはかろうじで第二外国語としてしか学ばないドイツ語ですから、医者だからといってドイツ語が読めたり話したりするわけではありません。

そして医者になってからもドイツ語と接する機会は全くと言っていいほどありません。

カルテやワイセ(白血球)など、医療現場で使われているドイツ語はありますが、もはや日本語化していて普段はドイツ語と意識することはありません。

ニューヨーカーがSUSHIとかフランス人がJYUDOUとか呼称するのと同じですね。

田舎の病院ではドイツ語はたまにみる

ただこのドイツ語は、数十年前に医者になった先生方にとってはポピュラーなものであるようです。

時折田舎の病院に働きに行ったりとか、田舎の病院から紹介されてくる患者さんの紹介状には、ごくたまにドイツ語が紛れ込んだりしています。

時代だなぁと思って眺めているわけですが、現役世代で中心となっている働いている我々にとっては、ドイツ語なんてわからないのですから、あっても困るだけなのですが。。。。

医学部ではもはやドイツ語は必修ではない

もはや医学部ではドイツ語は必須ではありません。

医学部の教養授業における第二外国語の中には、当然のことながらフランス語やスペイン語と並んでドイツ語の選択肢があります。

医学部に入りたての学生たちは右も左もわからないですから、学生たちはドイツ語をなんとなく選択するのです。実際に私が医学部の学生だった頃にも、同級生の7割とか8割位がドイツ語を選択していました。

富国強兵に邁進した明治時代においては、医学の中心は当然のことながらドイツだったわけです。今でも医学部の学生にとってはドイツ語人気というか、なんとなく選択してしまうのでしょうか。

しかし、今やその中心は完全にアメリカに移りました。

教養授業が終わってからは、外国語の中心は英語になります。解剖学の用語などを覚えるにあたっても、もはや英語がすべてであり、ドイツ語が出る幕はありません。

医学部生が選択すべき第二言語

したがって医学部で学ぶ学生は、大学時代の教養の授業おいては、第二外国語については何語を選択しても良いと思います。

上記に述べた理由により、ドイツ語を学んでも医者の世界では全く役立ちません。

私もドイツ語は選択していませんでしたし・・・・。

ただイメージというのはおもしろいもので、中国語、フランス語、スペイン語などの選択肢がある中で、医学部の学生100人のうちドイツ語を選択していたのは70人くらいいました。

おそらく、医学=ドイツ語というイメージがあったのでしょうね。

病院の中ではドイツ語を見かけることはほとんどありません。今や医学の中心は英語なわけです。

医学部の教養授業の現状。まさに人生で一番自由を謳歌できる時期である

2018年4月24日

今後ドイツ語の復権はあるか

そんな医者にとってはなじみの少なくなってしまったドイツ語なのですが、今後もメインストリームになる可能性は少なそうです。

もはやどの業界でも同じですが、医学の業界においても共通言語としての圧倒的な地位は何といっても英語です。

ドイツ人が書いた論文であっても、国際的に発表されるようなインパクトある研究は英語で発表されますし、国際学会に行ったとしても英語オンリーです。

日本語の寡占が続いてきた日本の学会においても、最近では学会発表や抄録を英語化しようとする試みが始まっており、多少の混乱をきたしています。

【勤務医の視点】病院や医学部におけるドイツ語の位置づけ。もはや絶滅危惧種

2018年3月18日

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