日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち (光文社新書)は、大阪大学教授である吉川徹によって執筆されています。
本書では大規模な社会調査から、学歴(大卒 vs 非大卒)こそが社会を分断する大きなファクターであることを述べています。
これまで学歴の議論は避けられてきた
学歴とはおおよそ20代前半までに確定される一種の社会的指標であり、更新することがほとんど不可能とされています。
したがって流動性が少なく社会的な格差を産みやすい指標であるがゆえ、一種の絶望的な指標となります。
人種や性別と近いような指標であることから、これまで学歴による区別、格差の議論は避けられてきていました。
企業の就職にあたって、学歴フィルターが存在していることも、どちらかというと否定的に議論されていますね。
これは医者の世界でも同じで、病院内ではどこの大学出身であるか、国公立大学の医学部出身なのか、私立大学医学部出身であるかどうかは、ほとんど語られることはありません。
学歴の話題は、時と場合によっては避けておいた方が無難になるのです。
学歴が社会を分断する
しかし著者らが実施した大規模な調査では、学歴こそが収入、健康、幸福度などを大きく分断する指標であることが浮かび上がります。
本書のタイトルにもなっている非大卒若者(レッグス)とは、20-30代の大学を卒業していない若者、特に男性のことを指しています。
そして今回の調査からは、彼らの不安定な雇用や不十分な収入が明瞭に浮かび上がります。
非大卒の20-30代の男性は未婚率が高く、壮年層や若年女性に比較して生活への満足度が低いことも調査結果から示されています。
また彼らの喫煙率は高止まりしており、日常生活でも健康へ気を使っていない実態が浮き彫りになっています。
一方で彼らへの社会的扶助は不十分であり、取り残された集団として論じられています。
本書の位置付け
大抵の新書は、若者全体の傾向を社会の一部分を切り取って全体化しようとする動きがあり、客観性に欠けていたり、現実的でなかったりします。
若者論を書いた書籍がたくさんあるなかで、本書は客観的なデータを用いて考察を行った、貴重な一冊といえるでしょう。
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