がん患者さんに対してあまり適応のない治療をすることもある




日本の病院で行われているがん治療は、基本的には学会の示したガイドラインに従って行われています。このような治療を標準治療とよび、日々の診療の基本路線としています。

しかしながら、実際の医療現場ではあまり適応のない治療も提供されることがあるのです。

治療適応の決まり方

たとえば患者さん個人の年齢や全身状態、本人の意思によって治療方針は微妙に変わります。

腎臓の機能が悪い患者さんに対して、ガイドラインで推奨されているからといって抗がん剤治療を行う事はありません。

また手術が標準治療とされていたとしても、患者本人や家族が強固に拒否する場合には、これまた治療を行うことは難しくなります。

したがって、なんでもかんでも教科書通りにことが進むことはなく、最終的には患者さん一人一人の状況を見ながら治療法が選択されることになります。

がん治療における治療適応の決まり方。治療方針を左右する要素5個

2018.03.30

患者や家族の要望であまりお勧めできない治療をする事もある

また患者本人や家族の意向がすごく強い場合には、止むを得ずあまり効果がないと思われる治療を行う事もあります。

もちろん、がん治療に携わっている医師が、金の延べ棒で体を摩るとか、高周波治療などといった胡散臭い治療を進める、というレベルのものではなく、もっと高度な次元での話です。

たとえばある抗がん剤を使っていると、次第にがん細胞に対して耐性ができてきて、抗癌剤の効き目が低下してくることはしばしば経験されます。

2種類目、3種類目の抗がん剤、というように抗がん剤の種類を変えるごとに、その効果はどんどん弱くなっていくのが一般的です。

もちろん副作用の観点から医師が絶対に投与できない、と判断する場合には、命を落とすリスクを犯してまで抗癌剤を投与することはありません。

しかし、患者さんや家族の要望があまりにも強い場合、あまり効果が見込めないとわかっていても抗がん剤を続ける場合があります。

なぜお薦めできない治療をしてしまうのか

このように患者や家族の要望に治療方針が左右されるのは、現在の医療が患者の意思や家族の考えを尊重するようになっているからだと思います。

もちろん手術が標準治療の病気に対して、経過観察や健康食品摂取をお薦めすることはありません。これはもはや犯罪的です。

しかし非常に高度な判断が求められるような状況では、どうすれば良いか、はガイドラインに書かれていない事も多々あります。

どのタイミングで抗がん剤を諦めるか、どのタイミングで放射線治療をするかに関しては、正解がない場合も多いのです。

そのような場合には、医師が力づくで持ってして「意味のない治療なのでやりません」とは言いづらく、かといって全く意味のない治療というわけでもありませんから、仕方なく治療を続ける場合もあるのです。

実際の事例

病院の中では、このような事例はしばしば経験されます。

ある30代のがん患者の男性では、効果のほとんど得られていない抗がん剤の投与が続けられている事例がありました。

患者さんの中には、自らの残された命について正面から向き合うことができず、周囲に相談できる人もおらず、治療しているという事実が自らを支えることになっている患者さんも少なくありません。

難しいのは、医療者側がキッパリと「この治療は意味がない」と言いにくい場合もあることでしょうか。

またしばしば経験されるのは、正しい医学的な情報提供を行ったとしても、なかなか患者家族の理解が得られないことです。

ある70代の女性患者においては、余命が数カ月しかなく主治医としては副作用などを考慮すると穏やかな最期を過ごした方が良いと考えていたようですが、患者家族の強い希望により、放射線治療が行われていました。

全く放射線治療の適応がない、とも言い難い状況でありますから、主治医や放射線科の医師も強く患者家族に言い出すことはできず、結局のところ治療がなされていたようです。

医師-患者関係が崩れてしまっては、今後の治療や方針決定に多大な労力が必要になりますから、なるべくならば患者家族の意向を尊重するようになってしまっているのです。

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