多くの医師は初期研修医を終えた後に、どこかしらの大学医学部の医局に入ることになります。
これを入局と言います。
最初のうちは期待を膨らませて入った医局ではありますが、何年か勤務するうちに徐々に不満が募ってきます。
医者として働いていると、医局を辞めて転職したくなるときは何回もあります。
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大学病院で働いている時に辞めたくなることが多い
多くの医師が医局を辞めたくなるのは、大学病院で働いている時に多いかと思います。
一般病院で働いているときには医局の存在はほとんど意識することがないので、辞める動機はそうそうあまりありません。
なぜ医師は医局をやめたくなるのか。その理由を下記に挙げてみました。
自分の思い通りに診療できない
大学病院では、たくさんの医者が存在するために自分がやりたいように動けない現実があります。
たとえば、一般病院では主治医となってすべての責任を持つような10年目位の医者であっても、大学病院ではすべての検査、治療に関して上司の許可を得なければならないこともあります。
その上司は研究しているかアルバイトしているかで、ほとんど病棟に顔を出さないにも関わらず、口ばかりだす場合もあります。
当然ながらこのような状況では、後輩からの評価は高くありません。
外科などはもっと厳格で、一般病院では執刀医として自立しているような経験年数の医者であっても、大学病院にいる限りはずっと助手しかさせてもらえないことをが起きるのです。
医者10年目となればもはや一般病院では重要な戦力となるわけですが、悲しいかな、大学病院では助手がせいぜいです。
大学病院に医者が多すぎる
結局のところ問題の本質は、大学病院に医者が多すぎるに尽きると思います。
したがってある程度身の回りの仕事をこなすことができて、もっと手術をしたいと思っている医者や、いろんなことを経験したいと思っている医者にとっては、大学病院はあまり魅力的ではないのかもしれません。
そのようなやる気のある医者が、大学病院を辞めたくなってしまうのも当然のことかと思います。
給料が安いことを改めて認識した時
大学病院の給料は驚くほど安くなっています。
全国の大学病院は大抵どこでもそうですが、時給にすると1,000円とか2,000円ぐらいにしかなりません。
大学病院ではコンビニやレストランが営業しているかと思いますが、アルバイターの深夜料金と医者の給料が変わらないんです。
1ヶ月の給料に直すとせいぜい200,000円とか300,000円位で、給料が安い大学病院では、100,000円台のところもあるようです。
このようなあまりにも低い収入を補うために、平日のどこか1日とか半日とかで近くの病院に働きに行って、アルバイトと称して収入を確保する方法が伝統的にとられてきました。
しかしアルバイトをたくさんこなしたとしても、トータルで考えれば一般の病院に勤めるよりは大学病院の給料はかなり安くなってしまいます。
同じだけ働いていても給料が安いのですから、大学病院で働くことに積極的なメリットを見いだすことができなければ、医局をやめてしまうのは当然の流れと言えるでしょう。
大学病院で研究をやりたくない
医局に所属して、大学病院で働いている限りは、日々の臨床業務に加えて教育や研究を行うことが必須です。
研究というのは、終わりのない探究活動であり、研究が大好きな人にとってはすごく面白いことが強いのですが、興味のない人にとってはまさに単純労働に過ぎないのです。
これが他者から強制されるようになると、結構きつくなってきます。教授から論文を書け、研究をしろと尻を叩かれると、結構辛いものがあります。
勤務地を自分で決めることができない
医局に所属している限りは、自分で自分の勤務地を決定することができません。
医局の指示するままに、突然地方の病院に出向しなければならない場合もあります。
たとえ大学病院で勤務していなくとも、医局に所属している限りは地方病院→地方病院への異動を命じられる可能性もあるのです。
独身であればあまり苦にはならないかもしれませんが、すでにマンションや一軒家を購入している場合や、子供の教育などを考えると、簡単に移動できないことも多いでしょう。
したがって医局に所属している場合には、家の購入に関してもいろいろと迷うことがあるのです。
一方で医局に所属していなければ、ある程度勤務する病院は自分で選択することができます。
病院異動の問題も、医局に所属していることが魅力的にならない原因となり得ます。
実際に医局を辞めていった医師たちの事例
医局を辞めるともう後戻りはできませんから、人生の中では非常に重要な決断となるわけです。
こう書くと医者はどんどん医局をやめにくくなるわけですが、実際は医局辞めたって死ぬわけじゃないですから、どんどん辞めても良いと思いますが・・・。
医師が医局を辞める理由は様々です。ここでは私がみてきた、医局を辞めていった4人の事例をご紹介したいと思います。
仕事に嫌気がさした40代医師
ある40代の先生は、大学病院に勤務している時に教授との反りが合わず、長年市中病院に派遣されていました。
市中病院では当直や休日の当番などで忙しく働かなければなりません。
若手医師のうちは向上心もありますから、激務に耐えて頑張ることも可能なわけですが、年齢を重ねてくると頑張り続けることはそう簡単ではありません。
当直や時間外の対応が、精神的にも体力的にもきつくなってきます。
やはり第一線の病院で働き続けるのはつらかったのでしょう。あるとき、その先生が医局を辞めると聞いて、医局員一同「やっぱりな」という思いを胸に抱きました。
そこで医局を辞めるにあたって、教授にどのように話をつけたのかということを聞いてみたのです。
「身内に不幸があったので、ゆったり勤務できる病院を探したい」と言うことを、新しい異動先の病院が決まるか決まらないかぐらいの時に教授に言っていたようです。
もちろん本当に身内に不幸があったかどうかは、定かではありません。
勤務が辛いからといって医局側が何かしら考慮してくれることはありませんから、このように言い訳するしかなかったのでしょう。
医局としては、関連病院に派遣できるいわゆる駒がなくなりますので、医局員の減少は痛手なはずです。
教授自身もさすがに身内の不幸となると力ずくで慰留することもできず、全体的には丸く収めて医局を辞めることができたようでした。
その先生自体は今の病院でゆったり勤務できることにすごく満足されているようでした。
理由もなく医局をやめた30代の医師
ある30代の先生は、非常に仕事のできる先生でしたが、突然医局を辞めることを話されました。
その先生は突然医局を辞めるとおっしゃったので、私たち医局員は非常にびっくりしました。
どうやら奥さんや子供、両親など家庭内のの人間関係のことで凄く悩まれていたようでした。
ただし本当に家族のことが原因で転職したかどうかはわかりません。プライベートなことまでグイグイ質問できるような状況でもありません。
医局を辞めるとお話しされたときには、すでに新たな勤務先が決まっていたようでしたので、おそらく転職サイトを利用して新たな勤務先を決められたのだと思います。
この先生も理由の真偽はわからないものの、結果的には医局と敵対することなく静かに医局を去っていったといえそうです。
キャリアアップを目指して医局を辞めた20代の医師
これは私が市中病院に勤務していたときの話ですが、研修医を終えたばかりの20代の男性医師が、転職サイトを利用して都内の保険会社に就職したと言う話を聞きました。
彼は研修医としてすごく仕事のできる人間でしたが、どうやら病院をもっと高い視点から見ているらしく、大きな活動がしたいと言うようなことを話していました。
民間病院に忙しく勤務しながら何か別のことをやるのは難しいですから、自分の時間を持つために保険会社に就職したのかもしれません。
若くして自らのキャリア形成を考えるのはなかなか難しいことですが、彼自身は医局をやめることにあまり抵抗はなかったようですね。
夫の留学を理由に医局を辞めた女医さん
あるメジャー医局で、医師である夫を持つ女医さんは、夫の留学を機に医局を辞めざるをえませんでした。
夫がアメリカの大学に留学するとのことで、子供連れて数年間だけ海外で生活することを、自ら所属する医局に相談したそうです。
つまり留学期間中だけは医局に籍をおきながらも、勤務を免除してほしいというような内容です。
伝え聞くところによる、医局長から帰ってきた答えは「許容できない。医局を辞めて留学についていくか、辞めずに日本に残って働くかを選べ」とのことだったようです。
家庭内の事情お考慮してくれないなんて、なんともひどい医局です。
女医さんにとって不幸だったのは、このメジャー医局は多くの医局員がおり、関連病院への医師の派遣についてはあまり困っていなかったことでしょうか。
医局側としては医局員のイレギュラーな行動を許すと、組織の規律にも影響してきますから、あまりやさしい対応はできないということなのでしょうか。
それでも医局と喧嘩別れしていく人は少ない
以上のように医局を辞めるのには様々な理由がありますが、いずれにしても大学病院に勤務すること、医局に関して不満があるから医局を辞めていくわけです。
私の周りにも医局を去っていった先生方が何人もいます。
さすがに皆さん大人なので文句をぶちまけて喧嘩別れしていく人はほとんどいません。
心の内には何かしら思うことがありながらも、表面上はそのことを表に出さず、家族の都合とか、一身上の都合等の表向きの理由をつけて辞めていきます。
これこそが正しい大人の振る舞い方なのかもしれません。
次の勤務先を探すには、やはり転職サイトが有用
転職先を自分で探さなければならない状況においては、一つ一つの病院にアポイントメントを取るのも、有用な方法かもしれません。
しかし給与や待遇などの条件を自ら交渉するのは非常に骨の折れる作業ですし、良い条件が引き出せるとも限りません。
そういう意味ではそのような条件を交渉してくれると言う点で、医師転職サイトはきっと役に立つでしょう。
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