【給料】医者vs金融マン.どっちが稼ぐ?一見医者の方が高給に思えるが単純ではない

週刊ダイヤモンドに興味深い記事がありました。

医者と金融機関に勤務するサラリーマンでは、どちらの方が収入が良いのか?を検証した記事です。

右図は厚生労働省が実施する賃金構造基本調査のデータを使って、年齢階層別の賃金を大手金融機関と比較したものだ。

一目瞭然なのは60歳以降の賃金水準。金融機関は50~54歳にピークがきて、定年を迎える60歳過ぎには半分以下に急落する。

一方、医師の賃金は50歳代でピークとはなるが、60歳以降も大きく減ることはない。しかも、これまで見てきたとおり、その水準は極めて高い。ここが生涯賃金の決定的な違いとなることが分かる。

ダイヤモンドオンライン 2018.1.30

さて、医者の方がお給料が良いってのは本当でしょうか?

本当に生涯賃金は医者の方が良いのか

グラフを参照する限りは、30代以降は概ね医師の方が平均賃金は高いことになっています。

そしてその差は、金融マンが退職を迎える60歳になると大きく開いていますね。このグラフをみると、なるほど医者の方が生涯賃金は多そうです。

しかし、医者の賃金を考える上で心得ておかなければならないことがいくつかあります。

いろんな事情を考慮すると、給料はほとんど変わらないであろう

医師は時間外労働が圧倒的に多い

医師には時間外労働がつきものです。毎日10時まで残業だけであれば、金融マンと変わらないでしょう。

しかし実際は休日の当番で午前中は病院にいかなければならなかったり、当直で30時間以上連続勤務ということも、しばしばあります。

しかし時間外労働で支給される手当はどこの病院でもせいぜい1時間あたり2-3000円程度ですし、当直に至っては常勤医の場合はかなり安く買い叩かれている現状です。

仮に医師の時間外労働が1万円とすると、一般外科医は週に50時間以上は残業しているでしょうから、給料は+50万円以上となってしまうでしょうね。

毎月50時間残業したからといって、間違いなく50万円の残業手当が出るわけではありません。そんな余裕は病院もありません。

医者の場合には時給換算すると、決して高収入とはいえない医師もたくさんいると思われます。

常勤医の病院当直とアルバイトの病院当直。常勤医師は買い叩かれている!

2018年1月10日

医師には退職金がない

勤務医の場合は、医局の意向に従って勤務地を数年ごとに変わります。

医者の世界においても、医局に所属している限りは一つの病院にずっと勤務するということはありません。

したがっって退職金は、生涯を合算しても1年間の年収に満たないケースがほとんどです。

大学病院に5年くらい務めた場合の医師の退職金が、たった10万円という笑えない話もあります。

一方でそれなりの企業に勤務している場合には、数千万円単位の退職金が支給されることでしょう。この辺りが医師と金融マンの差でもあります。

医者の福利厚生は貧弱である

医者はよく収入が良いと言われますが、一般企業に勤める会社員と比較した場合、福利厚生では明らかに劣っています。

それら全ての要素を考慮した場合に、果たして医者の給料が本当に恵まれているかどうか、ということについてはよく考えてみる必要があります

ここでは医者の福利厚生についてみていくことにしましょう。

住宅手当

一般企業ではごくごく当たり前に存在している住宅手当てですが、医者の場合には、あったらありがたい程度です。

大学病院に勤務している場合には、役職がない若い医局員の場合には非常勤職員という扱いですから、住宅手当というのは絶対にありません。

何がどう転んでも住宅手当はありません。

一般病院に勤務している場合であっても、住宅手当はあったりなかったり、あっても少しである場合が多いでしょうか。

医者の場合は頻繁に勤務地が変わりますし、病院事業者は大企業ではありませんから、住宅に関する福利厚生は最低限度です。

もちろん研修医時代には住宅手当なんて全くありませんでした。

赴任手当

例えば一般企業に勤務していて、地方や海外への転勤が命じられた場合には、赴任手当が支給されるかと思います。

特に商社勤務で海外勤務の場合には、現地で運転手、プール付属の裕福な生活ができるほどの手当が出ると聞きます。

一方で医者の場合にはどのような僻地に勤務を命じられようとも、赴任手当が支給される事はありません。

そもそも直接の雇用関係を結ぶのは医局ではなく、その地域に存在している病院とですから、赴任手当がでるわけもありませんね。

ここが医者の辛いところの一つでもあります。

企業年金

これも残念ながら医者にはありません。

同じ病院に何十年も勤務していれば、企業年金みたいなものを支給されるのかもしれませんが、一般的ではないでしょうね。

一般的な医者のキャリアとしては、大学病院に勤務した後に医局の指示のもと関連病院で働く流れですから、一つ一つの職場での勤続年数というのが、どうしても短くなってしまいます。

そもそも病院に企業年金のようなものはほとんどありませんし、仮に存在したとしても受け取れる金額はわずかということになってしまいます。

退職金

企業年金の項目で書いたように、いろいろな病院で少しずつ働く医師ですから、退職する際に何千万円もの金額が手に入る、ということはまずあありません。

大学病院で10年ぐらい勤務した先生の退職金が100万円に届かない、という程度でした。

したがって医師にとっての退職金がいかに安いかということがわかるかと思います。

ただし今やビジネスの変化のスピードも速いですから、1つの企業に勤め続ける会社員も今後はどんどん少なくなってくるのではないでしょうか。

そのように考えると、日本型の終身雇用は珍しいものになるでしょう

退職金における医者と会社員の差は、今後はどんどん縮まってくるものと予想されます。

稀にある素晴らしい福利厚生

このように雀の涙ほどしかない医者の福利厚生なのですが、一部には素晴らしい報酬が用意されています。

それは病院職員の本人や親族が、勤務する病院を受診した場合には医療費が全額負担される、という福利厚生です。

どの辺りまで本気なのかはわかりませんが、とりあえず医療費が全額負担されるらしいのです。

治療によっては実費で何百万円、高額療養費制度を利用しても自己負担数十万円になるような治療を無料で享受できることになると、相当な福利厚生と言えます。

このような福利厚生は広く一般の病院で行われているわけではなく、ごく一部の病院だけの福利厚生のようですがとっても素晴らしいですね。

そもそも60歳まで働きたいか、という疑問

 医師・歯科医師・薬剤師調査という別の調査では、診療所医師の平均年齢が分かるが、なんと59.6歳。

一般企業では定年となる歳が開業医の平均値なのだ。高齢者となっても仕事が待っている。これこそが、医者という職業の最大の魅力であろう。

医者には定年は存在しないですね。

60歳を超えて第一線を退いても、検診や老健施設などでゆるーく働いておられる先生は多くおられます。

60歳以降は医師の方が圧倒的に給与が多いと書いてありますが、そもそも60歳になってまで働きたいでしょうか?

もし現役時代に十分な収入があり、定年後は悠々自適に生活するということが可能であるならば、ほとんどの人は60歳を過ぎてから働くことはないでしょう。

医師として働くことのメリット

ここまで医師の給料は大して高額ではない、というスタンスで書いてきましたが、金融マンよりも医師の方が良い理由もあります。

それは医師の場合は技術職・資格業であり、病院が潰れたとしても再就職先を探すのが容易であること、また医局を離れてフリーランスの医師になれば、ある程度勤務地の選択が自由であること、などが挙げられますでしょうか。

これは企業にはないメリットだと考えています。

医者になって良かったことを6つ列挙してみる。意外と医者になって良いことはあった

2018年2月8日
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