新人医師の臨床研修に産婦人科が必修に。実際にどうなのか

日本において研修医は自分の好きな診療科を選択できるようになっています。

一般企業であれば、人事部に配属されるか、総務部で働くか、営業として飛び回るかは会社側の権限で決定されて行くわけですが、病院・医療業界だけは違っているわけですね。

ですから、医者が余っている診療科、そうでない診療科はどうしても生まれてくるわけです。

そんな中、比較的医師の数が足りていないといわれる産婦人科において、新人医師の臨床研修が必修になるようですね。

新人医師の臨床研修に産婦人科必修

勤務環境の厳しさなどから産婦人科医が不足するなか、厚生労働省は2020年度から、新人医師の臨床研修で産婦人科を必修にすることを決めた。

10年度に必修科目から外れたが、研修医全員に産婦人科の現場を経験してもらい、志望者を増やすきっかけにしたいと、関係学会が再び必修化するよう求めていた。

読売新聞      2018.1.10

2020年から、研修医にとって、産婦人科の研修を必須とするような仕組みが投入されるようです。

はっきりってこの方針に関してはどちらでも良いのですが、思うことを書いてみたいと思います。

私も研修医時代に産婦人科をローテしました

私が研修医だった頃には、産婦人科は選択必修でした。

よく覚えていないのですが、産婦人科と他のいくつかの診療科の中から、2つを選択しなければならない制度だったと思います。

ですから私も(仕方なく)産婦人科で1ヵ月研修させていただきました。

産婦人科の世界をテーマにした人気漫画のコウノドリとは違って、厳しい研修だったわけです。

産婦人科は忙しい。時間外対応が多い

私が研修していた病院は都市部の総合病院だったわけです。したがって産婦人科の常勤医師の数も比較的恵まれていました。

とは言っても産婦人科という診療科の特性上、出産はいつ起きるかわかりません。

赤ちゃんたちは平日の昼間を狙って生まれてくれるわけではなく、休日、夜間御構い無しです。

ですので病院では、夜間・休日は誰かしら産婦人科医が当直していましたし、もちろん大型連休や年末年始も途切れなく誰かが病院にいなければなりません。

24時間営業のコンビニみたいなものです。誰かがいなければなりません。

24時間対応はすごくすごく大変なもので、産婦人科の先生方は長い連休を取得することすら難しかったのではなかったかと推察します。

緊急帝王切開になれば術者と助手の合わせて2名が必要になりますので、時間外に呼び出される可能性が高い診療科でもあります。

産婦人科は辛い。訴訟のリスク

このほか産婦人科にとってつらいのは、訴訟のリスクでしょうか。

今や出産で母親が命を落としたり、赤ちゃんが死ぬなんてことはあり得ないなんて考えられていますが、そんなことはありません。

一昔前までは出産は命がけでしたし、今でも発展途上国などでは母子共に高い死亡率となっています。

このような状況の変化に伴い、少しでも出産でトラブルが発生することがあれば、すぐ訴訟という流れになりつつあります。

産婦人科は訴訟のリスクが非常に高い診療科になっているのです。

産婦人科研修で学んだことは、ほとんどない

さて私が1カ月間産婦人科を研修して学んだことですが、医学的な部分でははっきり言って何もありません。

お産はもちろん見学させていただきましたし、帝王切開の手術にも何度か入れていただきましたが、患者さんに自信を持って還元できる知識、手技となれば話は別です。

医者が自分自身の判断で患者さんに何かできるようになるためには、相当な訓練が必要です。

指導医の元で数回手術に入ったとか、お産を見学したくらいでは、自分一人になった時に到底対応できるものではありません。

そして自分一人で対応できない限りは、医師としては半人前にもなっていない、という評価になってしまうのです。

ですから新人研修医に産婦人科を必修にしたところで、医師全員が産婦人科の知識を身につけることにはほとんど意味がなさそうです。

【勤務医の視点】研修医の時にローテーションするべき診療科。どの診療科が良いのか

2018年2月16日

産婦人科の医師を増やしたいという試み

今回学会側が産婦人科検診を必修にしたのは、減少する産婦人科の医師を少しでも増やしたいという意図があるようです。

確かに、産婦人科医として少しの間でも現場に身をおけば、産婦人科に興味を持つ研修医は多少は増えるかもしれません。

ただし、産婦人科医が少ない現実を適切に解決するためには、原因に対するアプローチが必要です。

現在産婦人科医のなり手が減少しているのは、主として産婦人科の先生方の働く環境が厳しいからであります。

その厳しさは、時間外対応が多い、激務である、責任が重大などうえに書いた通りです。

ですから本来、産婦人科のなり手が減少している問題に対する対処法は、産科医療の集約化とか、コメディカルによる業務拡大、お産制限などではないでしょうか。

つまり現役で働く産婦人科医の負担を軽減する方向でなければならないはずです。

今現在のところ学会が試みようとしている方法は、研修医が産婦人科に触れ合う機会を増やすための試みであって、これがどこまで実効性を持っているか甚だ疑問です。

産婦人科に興味を持って飛び込んで見たは良いけれど、実際には忙しすぎてやめてしまったなんていう悲劇が発生してしまうかもしれません。

診療科ごとの印象は大きく違う

研修医になって感じたのは、産婦人科は忙しいなぁ、その割には医療訴訟とかあって大変そうだなぁ、という印象でした。

一方で皮膚科なんかは、美人の女医さんがいて、患者も手がかからなくて、きらきらしていて、17時には業務が終了して、当直もそんなに忙しくなくて・・・という、まさに魅力的な診療科でした。

果たしてこのような診療科間の格差を乗り越えて、どれほどの研修医が産婦人科を志望するかに関しては、なかなか難しいところではないでしょうか。

産婦人科での臨床研修の必修化、果たしてうまくいくでしょうか。

医師転職サイトで検索してみえてきた転職しやすい診療科・しにくい診療科

2018年2月6日
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