研修医を終えて何年も経った身分からすると、初期研修を行う病院というのは別にどこでも良いような気はします。
ただ、当事者の研修医にとっては非常に大切なことですね。
ここでは大学病院で初期研修を行うことの是非について考えていきたいと思います。
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初期研修における大学病院の位置付け
2017年度の大学病院ごとの初期研修の人数を示した表です。
出典:INFORMA by medic media 臨床研修病院 人気ランキング
2017年の初期研修医マッチングでは、東京医科歯科大学、京都大学など首都圏、関西圏の有名大学を中心にマッチング率が高い傾向にあります。
研修医の多くが、大都市圏での研修を求めている傾向が伺えます。
また首都圏や関西圏出身の受験エリートが、地方国立大学に進学、その後地元に戻ってくるUターン現象を示しているのかもしれません。
京都大学や東京医科歯科大学、慶應義塾大学などは、その研究環境に加えて立地が恵まれているがゆえ、多くの研修医を集めることができているようですね。
大学病院で初期研修することのメリット
正直なところ、大学病院で初期研修をするメリットはあまりないと思うのです。
がんばってそのメリットについて考えてみましょう。
医局の雰囲気がわかる
唯一の利点としては、医局の雰囲気がわかるかもしれない、ということでしょうか。
よくも悪くも、医局というのは企業でいうところの本社みたいなものです。
その地域における診療科の雰囲気を凝縮したところですから、医局の雰囲気を知っておくのは大切かと思います。
上下関係が厳しいのかどうか、5時や6時になったらそそくさと病院を後にすることができるのかどうかなど、人材を派遣している関連病院の雰囲気に通ずるところもあるかと思います。
自分の出身大学であれば、医局や診療科の雰囲気というのは大体わかるかもしれません。
一方で大学を卒業して地元に戻ってきたとか、大学で出会った結婚相手の仕事についていき、全く見知らぬ土地の大学病院に入局するような場合には、大学病院で研修するというのは1つの方法かもしれません。
市中病院に比べると勤務が楽
もう一つ大学病院で初期研修を行うことのメリットとしては、仕事がラクであるということでしょうか。
大学病院には患者の数に比して多くの医者がいますから、医師一人当たりの仕事というのは少なくなります。
たとえば大学病院の場合には、病院に対して1人の当直医を置くと言うよりは、各診療科ごとに当直医を1人ずつ置いている病院が多いかと思います。
したがって大学病院では、当直帯に患者がひっきりなしにやってきて、夜も眠れないなんてことは滅多にないでしょう。
また基本的には研修医が当直を行う機会はかなり限られているかと思います。
そのほか市中病院では雑用とされる業務も、医局の3年目は4年目の先生が行ってくれるわけですから、相対的に研修医が行う雑用というのが少なくなってくるかと思います。
労働時間の長い短いは別にして、大学病院の研修医は比較的楽に働くことができると言っていいかもしれません。
診療科が揃っている
その他、大学病院にはたくさんの診療科が揃っています。
マイナーな診療科で研修する場合には、良いかもしれません。
病理診断科、放射線科などは常勤医師がいない一般病院も多いですし、常勤医がいたとしても、指導を受けれるような体制でないことも多いかと思います。
その点は大学病院においては、マイナー診療科でも医者の数はある程度揃っていますし、十分な指導を受けることができます。
以上がだいたいの大学病院で研修することのメリットでしょうか。
大学病院の研修のメリットというのは、どちらかというとそのハード面にあるのかもしれません。
それでは今度は大学病院で研修することのデメリットを考えてみたいと思います。
大学病院で研修することのデメリット
初期研修に関しては、大学病院はデメリットの方が大きいかなと感じます。
患者対応に関する裁量がない、手技がほとんど経験できない
一番のデメリットは市中病院で研修する場合と比較して、経験が少なくなってしまうということです。
まず大学病院に紹介されてくる患者さんは難しい症例、珍しい症例が多いですから、とてもじゃないですが研修医が主体的に対応できるレベルではありません。
例えば、胆嚢炎や虫垂炎の手術は市中病院ではごくごく当たり前に行われている一方で、大学病院ではめずらしいね、となってしまうわけです。
また大学病院には医者の数が多いですから、研修医の仕事というのはカルテを書いたりとか、患者さんの検査に付き添ったりとか、あまり本質的なことではなくなってしまいます。
もちろん患者さんの主治医になって何かを説明したりとか、自ら点滴や検査のオーダーを出したりということもほとんどできないでしょう。
果たしてそれで研修医として勉強になるか、は疑問です。
医者の数が多く、医者として6、7年目位であっても、上司の先生にお伺いを立てないと何もできないのが大学病院ですから、研修医の裁量は学生レベル、または全くないと言ってもよいでしょうね。
経験が少なくなるのは、患者対応だけではありません。
もともと医者の数が多いですから、手術での縫合や中心静脈路確保など、一般的に研修医が経験する処置もあまり経験できないでしょうね。
初期研修医として経験できることが少ないというのが、大学病院で研修医を行うことの致命的な欠陥かと思います。
給料が安い
大学病院の給与というのは、おそらくどこの市中病院に比べても低くなっているでしょうね。
全国どこの大学でも、大学病院の研修医の月収はせいぜい20-30万円程度でしょう。
そのほか家賃補助や通勤手当等の福利厚生も貧弱ですから、トータルとしての給料も少なくなってしまいます。
初期研修医時代にそれなりの生活を送りたいのであれば、大学病院はあまりおすすめできないかもしれないのです。
カンファレンスが長い
これも敢えて書きましたけれど、大学病院は研修医にとって無駄なイベントが多いですね。
たとえば治療方針決定のためのカンファレンスですが、平気で2時間くらいかかったりします。
市中病院の場合は忙しすぎてそんなことをやっている暇はないわけですが、大学病院は時間的なゆとりがある分、カンファレンスが長くなってしまいます。
専門医レベルの医師にとっては勉強になるカンファレンスですが、研修医にとっては時間の浪費でしかないでしょうね。
まとめ
大学病院のメリット・デメリットについて挙げてきました。
臨床経験を積むという点では、大学病院で研修するメリットはあまりないかもしれません。
個々の状況をよく考えて、大学病院で研修すべきかよく考える必要があるでしょう。
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