病院で行われる抄読会で悩むのが、どの論文を選択するかですね。
ここでは抄読会のシュチュエーション別に、どのような論文をピックアップするべきかを考えてみたいと思います。
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論文選びは抄読会の成否を決める
抄読会の準備をするとなると、一番の悩みどころが論文選びです。
私の場合には、抄読会の準備をする時間の5割くらいは、どの論文を紹介するかに費やしている印象です。
それだけ論文選びが大切である、抄読会の成功の鍵を握っているといってもよいでしょう。
出席者全員が興味を持つような論文を選べば、自然と抄読会は引き締まったものになります。聴衆のやる気も高まります。
一方でマイナーな、あまり誰も関心のないような論文を選択してしまうと、抄読会は失敗してしまう可能性があるのです。
それほどまでに、論文選びというのは大切な要素になっているかと思います。
シュチュエーション別。どのような論文を選択すべきか。
論文選択にあたっては、どのような出席者がいるのか頭に思い浮かべることが大切です。
筆者は同じ診療科で同じ専門性を持つ医師の抄読会から、コメディカルが同席するようななかなか難しい抄読会まで経験してきました。
以下にどのような抄読会をすべきか、ご紹介していきましょう。
同じ診療科の抄読会の場合
一番ポピュラーなのが、同じ診療科内で行う抄読会でしょうか。この場合には自分の診療科の専門分野について話したほうがベターでしょう。
同じ診療科内で行う抄読会においては、議論の中心が主に研究の方法とか、結果への批判になりますから、すごく細かい内容について話す余裕があります。
基本的にはどういう論文を選んでも問題ないとは思うのですが、可能であればまずはインパクトファクター(=IF)の高い雑誌からの論文が望まれます。
IFだけでは論文の重要性を論じることはできませんが、IFが1とか2しかくらいのマイナーな論文はあまり重要な研究成果でないことがよくあります。
せっかく全員の貴重な時間を消費するわけですから、なるべくなら重要な論文を紹介すべきではないでしょうか。
メジャー論文には注意
一方では注意も必要です。
大学病院やかなり研究色の強い病院では、あまりにもメジャーな論文に関しては、既に以前の抄読会で発表されていたりとか、出席者にとって当たり前の知識になっている場合があります。
ですから論文を選択する前には、なるべく最新の論文を選択し、まだあまり世間に認知されていない論文を選択することが必要なのです。
せいぜい過去1年くらい以内の論文を紹介するべきでしょうか。10年前の知見は重要であるかもしれませんが、いま現時点で読んでいてもあまりためになることはないでしょう。
自分が読もうとしている論文が、以前に抄読会で発表されていないかどうかを確認しておく必要があります。
病院全体の抄読会
こんなアバウトな抄読会なんて意味あるのかと思うのですが、実際にあったのです。
中規模病院だったのですが、週に1回病院の医師全員が集まる場で抄読会が開催されておりました。
これは結構困ったもので、専門分野の全く違う医者が抄読会に参加するわけですから、さすがに専門性の高い論文を選択することができません。
外科の医者だからといって肝臓癌の最適な切除方法についての論文を読んだところで、興味を持ってもらえる医師は限られます。
したがってこのような多種多様なバックグランドの医師があつまる場合には、自分の専門分野の論文でありつつも、他の先生も聞いていてためになるような論文を選択する必要があります。
といってもそんな都合の良い論文は現実的にはなく、実際のところはセッティングに無理があるのですが・・・
現実的にはインパクトファクターの高いジャーナルに掲載されてある、総論的な論文を選択するしか方法はないでしょうね。
新しい薬の話とか、抗がん剤治療一般のはなしとか、そんなとこです。でないと場が持ちません。
Lancet、NEJMあたりの雑誌に掲載されている論文であるならば、専門分野の医者としてというよりは、そもそも医者として読むべき論文が多く掲載されていますから、失敗は少なくなるかと思います。
コメディカルがいる場合
これもなかなか論文選びが難しいのですが、抄読会によっては看護師や技師さんなどのコメディカルの方が出席している場合もあります。
この場合にはインパクトファクター云々よりも、とにかくわかりやすい論文をチョイスした方が良いですね。
コメディカルの方にとっては、論文を読むことや英語を読むことにあまり慣れていない場合が多くあります。また生存曲線とか再発率なんてのは見慣れるのに経験が必要ですから、わかりやすい論文の方が良いでしょう。
とにかく分かりやすいさが重要だと思います。
筆者が実践している具体的な論文選び
具体的な論文選びは、まずはPubmedです。
ありとあらゆる論文が掲載されており、医師であれば論文選びのターミナルとなっていることでしょう。
またインパクトのある論文を読む必要があるならば、まずはNEJMで論文検索してみることが必要です。
どんな専門分野でも、過去1年くらいなら自分の専門分野と関連する論文が数本くらい発表されていますから、それらを紹介するのも間違っていないでしょう。
NEJMは新しい治療のスタンダートとなる研究成果が発表されていますから、こちらから論文を引っ張ってこれば、大きな間違いとなることはないでしょう。
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