皆さんお久しぶりです。
今回は、医療に関する2つの書籍を紹介したいと思います。
ブラックウェルに憧れて 南杏子 著 2020
まず1冊目は南杏子さんが書かれた「ブラックウェルにあこがれて」です。
この本は、医学部時代から、そして女性医師になってからの4人の女性の生き様を描く小説となっています。
医療の世界でも、男女差をなくそうという動きが強まる中、依然として女性は、妊娠、出産、結婚などのライフイベントを乗り越えていかなければならない、難しい場面が色々とあります。そのような困難に、4人の女性がどのように立ち向かい、どのような生き方を選んでいるかということが描かれています。
さすが著者自身が女性医師と言う事だけあって、非常にリアリティ高く描かれているものと思います。
この小説の背景には、2020年前後に問題となった、医学部入学試験での女性差別問題があります。
医者になってからは、当直や長時間労働など、男性医師の方が使いやすい、そんな経営者側の理由から女性学生が入学試験で差別されてきたという、医学部入試の非常にグレーな部分であり、そして現場レベルでの苦肉の策でもあります。
そのような社会的背景も合わせて読んでみると、女性医師が医師として働くことがいかに大変か、ということが見えてくるかもしれません。
無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記 山本文緒 著 2022
2冊目は山本文緒さんのエッセイです。無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記
2001年に「プラナリア」で直木賞を受賞した人気女性作家が若くして膵臓癌に侵され、死去するまでを綴ったエッセイ作品です。
我々が医師として働いていると、患者さんの心の本当のところを知る事はなかなか難しいのですが、この本を読むことで、残り時間の限られた末期がんの患者さんがどのようなことを考えているのかということを読み取ることができます。
一番印象的だったのは、緩和ケアが導入されてなお、死を受け入れると言うよりは、死から逃げようとしているのだ、というような記述でした。
80歳や90歳の患者さんを診察していると、一見して死を受け入れてように見える患者さんが、それでもなお生きることに希望を見いだす、そんな場面にしばしば出会います。
医療者側からすると、80歳や90歳でもう十分生きただろうと思ってしまいがちなのですが、実際の人間が死を受け入れるというのは、非常に難しいということを痛感させられます。人間はそもそも、死を絶対的に避けるべきものとしてインプットされているのかもしれません。
死という重いテーマが背景にもあるにもかかわらず、文章は軽快で、重い気持ちにならずとも読み進めることができます。こればかりは著者の作家としてのすばら
この小説からもわかることなのですが、人間が私を受け入れると言うのはとてもとても難しいことなどだと思い知らされます。
緩和ケアを受けるようになった著者であっても、私を受け入れる事は難しく、私から逃げようとする、そんな文章が非常に印象的でした。
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