USMLE step1を受験するにあたって、オススメの教科書をご紹介しております。
あれこれ教科書を渡り歩くのはしんどいので、ますは網羅的で有名な教科書を3冊紹介します。
コンテンツ
持っておくべき教科書
First Aid for the USMLE Step 1
言わずと知れたFirst Aidです。本書はUSMLE step1の受験者にとってマストとなっているようで、米国のAmazonでは42人がレビューしているにも関わらず★4.7/5.0というすばらしい評価を得ています。
内容はというと、step1で問われる生理、薬理、解剖、生化、病態生理などに的を絞って1つの項目に対して1〜2行で説明されています。図やグラフ、表も豊富で、一目で分かるようにまとめられています。
この本をすべて記憶すればstep1で8~9割得点できるんじゃないでしょうか。ネット上で情報収集した結果、First Aidを基本として学習を進め、新たに学習したことをFirst Aidに書き込んでいくという学習方法が最も効率の良い方法のようです。
前の方ではStep1についてのスケジュールの建て方、学習方法の案内があり、後ろの方のペーシではstep1に関連する教科書、問題集が、実際の読者からレビューされておりこちらも多いに参考になります。
First Aid Cases for the USMLE Step 1
こちらは、step1の問題集となっています。
step1を受験するにあたっては、メジャーとなるのはオンライン問題集になるわけですが、こちらは導入に最適な問題集と言えるでしょう。
掲載してある問題は基本的で、本番のレベルとほぼ同じ程度になっています。
まずはこちらの問題集をときながら勉強していく、というのが良いでしょうね。
Rapid Review Pathology: With STUDENT CONSULT Online Access
Pathologyと記載はあるが、USMLEで出題される一般的内容はカバーされている。箇条書き、または1-2文で書かれており、試験対策のために書かれた本である。
基本的な体裁はFirst Aidとほとんど変わりない。それよりは詳細に書かれている。First Aidでは書かれていない内容を補完する役割の試験対策書。
Robbins and Cotran Atlas of Pathology
Step1では病理写真と数行の説明が示された上で解答を導く問題があります。病理所見を知っていれば文章を読まずに選択肢を選べる場合もありますし、 逆に病理所見を知らなければ解けないような問題もあります。
したがってStep1では病理全体、とりわけ病理所見について幅広い知識を持つ事が必要です。
この本はRobbinsの姉妹本ですが、一疾患に対してMRI,CTなどを含む写真が1~3枚載せてあり、写真1枚に対して数行の説明が付してあります。
文章量は適当で、レイアウトは非常に見やすいものとなっています。 病理所見のキーとなるポイントもおさえられていて、Step1の試験対策に多いに役立ちます。
薬理学 – Pharmacology
Step1は臨床に準備する試験であり、薬理分野についても詳しく問われます。
卒業試験でも出題されないような、DM、脂質代謝異常、利尿薬の薬剤各5種類くらいの薬剤名、薬理作用、副作用を覚えるのが最低ラインだという印象です(この問題はどの問題集をやっていていも出会います)。
First Aidでは各薬剤についての詳細な作用機序や、一部の薬剤については掲載されていません。それらの知識を補完する意味で、Pharmacology Illustrated Reviewは役立つ教科書だと思います。
本書はFirst Aid Step1の評価でも[A-]1、Amazon USでも62/67人が★4つ以上をつけておりStep1対策として広く読まれている教科書です。
“Review”というタイトルを冠していながら400ページほどあり、Step1対策を始めるにあたって1から通読できる本ではありません。あくまで辞書的な使い方になると思います。
心血管系 – Cardiovascular
循環器では解剖から病態生理、薬剤まで幅広く問われます。問題の内容は、国試やCBTと変わらないので対策はしやすいでしょう。
BRS physioogyはBRSシリーズの中で最も有名なテキストでしょう。Amazon USでは72/89人が★5つをつけるはずれのない教科書です。
この本では循環器分野に限らず、生理学の知識が箇条書きで説明されており、一通り生理学の学習を終えた学生が試験対策に使うには非常に役立つ本です。Fitst Aidには循環生理について必要最低限度の知識しか書かれていないので、この本を購入することをおすすめします。
循環器疾患に関してはFirst Aidで幅広くカバーしてあり、循環器医学に絞ってあらためてStep1の対策本を買う必要は無いと思います。
Pathophysiology of Heart Diseaseは循環器学のテキストで、FIrst Aidではカバーされていない範囲を補強してくれます。病態生理から学ぶという点では本書はおすすめです。和書では「心臓病の病態生理」というタイトルで出版されています。
消化器系 – Gastrointestinal
消化器分野は素直な問題が多く、知っているかどうかで決まる問題が主流のようです。
消化器分野の洋書にはあまりパッとする教科書がなく、和書でも突出して高い評価を受けているような教科書がありません。First AidやRapid Review Pathologyだけを読み込んでいっても十分得点できるような気がします。
和書では”病気がみえるシリーズ”が良いでしょう。
血液学 – Hematology
血液学に関しても、Step1対策として広く使われている教科書はないようです。
やはりFirst Aidを中心に据えて、細かいところはRapid Review Pathologyを見ながら書き込んでいく、という学習の仕方が最も効率が良いように思います。
病理所見に関しては日本病理学会の病理コア画像
を使われると良いと思います。無料ながら高いクオリティがあります。
筋骨格系 – Musculoskeletal
First Aidには要点がまとめてあり、レビューするには便利です。しかし解剖学という分野上、視覚からの情報が重要だと感じました。
神経解剖学 – Neuroanatomy
神経学分野もボリュームのある分野です。
Vitamin B12 deficiency、Friedreich ataxia、梅毒、Polio、ALS等々の傷害部位が、脊髄断面上に容易に想像できなければ得点できません。
First Aidではこれらの知識が簡潔にまとめられていて、いつでも手元においておきたい教科書です。
High-Yield Neuroanatomyは薄い教科書でありながら、First Aidの内容を深く掘り下げて説明しています。
また写真やイラストもたくさん掲載されており、ビジュアルで理解することができます。脳の断面のアトラスがあるのも神経解剖学の問題には非常に役立ちます。
USMLE step1の主要分野である、biochemistry、microbiology、embryologyの傾向と対策、教科書についてご紹介したいと思います。
生化学 – Biochemistry
生化学分野はStep1の中でも難しい分野だと思います。
ネット上で情報収集していると、日本人受験者ではどうしても得点率が低くなるという話があります。
実際に問題を解いてみると、やはり難しく感じてしまいます。ピンポイントで酵素や生成物などを問う問題がいくつかあります。
振り返ってみると、大学の基礎講義では熱心に教えられる事もなく、臨床講義でも先天性代謝異常について詳しく勉強する事はなかったように思います。CBTの知識だけでは半分も得点できないという印象です。
生化学の分野は、First Aidだけでは少し物足りないでしょう。代表的な解糖系、オルニチン回路などはきれいな図で示してありますが、文章での説明は少ない印象です。
Lippincott’s Illustrated Reviews: BiochemistryはFirst Aidで不足する内容を補ってくれる、米国のAmazonでは★5つ評価を得ている名著です。
本書は箇条書きスタイルではないので、通読には向きません。イラストレイテッドというだけあって、イラストはたくさん掲載されています。
内容量としては医学部の基礎、臨床講義の内容を補ってあまりある分量です。問題を解いていくなかで分からない事があった時にページをめくってみる、という使い方が一番効率が良いように思います。
微生物学 – Microbiology
Microbiologyもかなり突っ込んだところまで問われるな、という印象です。練習で問題を解いていても、教科書に詳しく書かれていないのでスルーしてしまう問題もあります。
とにかく暗記すべき知識ははFirst Aidに書かれています。問われる知識の8-9割はカバーできているかな、という感じです。
First Aidには使える語呂がたくさん載せてあります。グラム染色の基本や細菌学に関する画像はないので、他の本を参照しましょう。
Clinical Microbiology Ridiculously SimpleはUSMLE Step1を念頭に書かれた本です。
Amazon USで本書を検索すれば分かりますが、Step1対策本として非常に有名な本です。正統な教科書ではありませんが、読者が読みやすく、理解しやすくを第一に書かれています。
一部には語呂あわせもあって役立ちます。症状なども適度な長さで記述されていて、大学の臨床講義で細菌学を学ぶ際にも多いに役立つ本です。唯一の欠点は画像がないことでしょうか。
この2冊で、ほとんどの問題は理解できると思います。
発生学 – Embryology
発生学も難しい分野で、CBTの知識では4割くらしか得点できないと思います。
出題される問題の傾向は、ほとんどが臨床に即したものとなっています。
High-Yieldシリーズ、BRSシリーズとも発生学分野の教科書はAmazonで高い評価を得ておらず、私は発生学自体を系統的に理解していなかったので、Before We Are Bornという教科書を購入しました。
本書は400ページ、文章書きスタイルなのでStep1対策には向きません。イラストは豊富で、臨床に関連したトピックも掲載してあります。内容量としては医学部の基礎講義にも十分対応できる量です。
どちらかと言えば発生学を系統的に理解する、特定の分野だけを読む、詳細なイラストを見て理解すると使い方が向いていると言えるでしょう。
発生学をろくに理解していない人間がFirst Aidだけを見て学習するのはかなり無理があるので、この教科書も活用して勉強を進めるのが良いのではないでしょうか。
EmbryologyはFirst Aid以外に絶対的な教科書がないのが現状のようです。
行動科学 – Behavioral Science
内容はというと公衆衛生と精神医学、それに一部神経内科を合わせた分野といえるでしょうか。
系統的なテキスト(いわゆる名著と呼ばれる教科書)を持っておらず、よくも悪くもStep1の受験対策本だけしか持っていません。
まぁそれでもいいんですが、やはり医学部で学んでいるのだから、1冊くらいは正統な教科書を読んでみたいですね。
この分野の対策として、だいたいのことがFirst Aidで事足りると思います。Behavioral Scienceの統計分野は少し弱いですが、Psychiatryの分野は良くまとめられています。特にPsychiatryの薬物分野においてはこれ以上のテキストはないでしょう。
そこでFirst Aidの不足分を補ってくれるのがBRS Behavioral Scienceです。BRSシリーズといえば生理学が有名ですが、本書も非常によくまとめられていると思います。
精神医学の分野なのでイラスト等はありませんが、First Aidに載っている表をもう少し詳しくしたものや実際の疾患について例を挙げて説明しており、First Aidを補足するという意味で使える教科書であるとは思います。
説明は箇条書きスタイルであり、すらすらと読み進める事ができます。
病理 – Pathology
USMLE step1では病理の知識についてよく問われます。例えば脳腫瘍については、Meningioma、Glioblastoma multiforme、Astrocytoma、Oligodendroglioma、Medulloblastomaあたりの病理所見を難なく言える事が必須です。
そこで病理分野で役立つオンラインの教科書をまとめておきたいと思います。
日本病理学会 病理コア画像
学会が日本の国家試験向けに病理画像を公開しているサイトです。画像、説明のクオリティーともに申し分ないです。非常に分かりやすい。ネットにつないで問題を解いていると(Q bank、USMLE WORLDなど)クリックひとつで病理画像にアクセスできるので、非常に便利です。ただしマイナーな疾患になると画像がないので不便ですね。
WebPath
University of Utahのページなんでしょうか?海外のページではこのサイトが使いやすい気がします。ちなみにここの無料問題集はFirst Aidの書評でも最高評価を得ています。
Google画像検索
例えば”Meningioma pathology psammoma body”と窓に入力して、Googleの画像検索を行うと、意外と目的の病理所見に出会えます。まあ教科書がなくネットにアクセスできるときの応急処置ですね。
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