【勤務医の視点】東京医大入学試験で女子の得点調整が判明。こんなことがあって良いのか

東京医大の不正入試事件で、さらなる驚きの情報が入ってきました。

男子学生を優先的に合格させたいとの理由で、受験生のうち女子学生のの得点を引き下げていたニュースです。

東京医大、女子受験者を一律減点 男女数を操作か

東京医大はマークシート方式の1次試験後に、女子の得点を一律に減点するなどしていた。

過去には1次試験を通った現役の男子学生に、自動的に2次試験の小論文の点数を加点したこともあるという。大学関係者はこうした操作を認めた上で「10年ごろには既に暗黙の了解でやっていた」と話した。

背景には、大学病院の医師を確保したいという大学側の意思があるとみられる。

この関係者は「テストの点数通りにやると女子の合格者が多くなるが、女子は離職率が高い。どういう学生がいいかという大学としての判断で、(加点は)大学の裁量の範囲内なのではないか」と話した。

日本経済新聞:2018.8.2

う〜ん、加点や減点などテストの点数そのものに手を加えるのは不正入試と言われても仕方ありませんよね。

東京医大ではこのようなことが慣習として行われていたとのことですから、驚きです。

女子減点は入学試験を破壊する行為である

医学部の入学試験においては、合格ラインの点数に受験生が密集しています。

ですから、まさしく1点、1問を争う戦いになります。

私が医学部に合格した当時も、得点開示を行ったところ合格ラインよりわずか5点だけ上回っていたわけです。

しかし、そこから合格最低点までには20人ほどの受験生がいましたらから、わずか5点の間に20人の合格者が存在していたことになります。

正確には、医学部入試は0.1点を争う戦いと言っても間違いではないくらい厳しい戦いなのです。

今回の女子学生の得点操作については、1点や2点といった細かい数字を操作していたのではないでしょう。

10点、20点単位で操作を行っていことが推測されます。

これはもはや得点調整と言:うよりは、入学試験を破壊するような行為と言っても良いかと思います。

本来であれば合格できていた女子学生が、不合格となり今も違った職種で働きながら生活していることを考えると、本当に胸が痛みます。

ただしもともと医学受験にはブラックボックスな部分も多い

しかし、医学部入試は基本的にわからない部分も多々あります。

東京医大のように内部で公然と得点調整が行われているにも関わらず、この事実は何年も表には出てきませんでした。

得点調整が組織的ではなく、個人の考えに基づいて行われていたとすると、これを立証するのは困難です。

特に二次試験は小論文と面接、という客観的な採点が非常に難しい試験内容ですから、採点者が恣意的な考えのもとに得点をつけていたとしても、客観的に証明するのは極めて難しいでしょう。

筆者の学生時代にも、医学部ってのは地元性が有利、現役生が有利なんていう噂はいくらでもありました。

ただしそれを客観的に示した証拠は存在せず、あくまで噂話のレベルだったのです。

もはやここまでくると、医学部においては公平公正な入学試験は存在しないんじゃないかと思えるほどです。

医学部の面接試験はブラックボックスである。得点調整が行われている可能性はあるか

2018年5月15日

病院における女医さんの働き方は難しい

さて今回の得点調整の原因となった、東京医大が主張している、女医の離職率が高いというのは、完全には否定できな事実です。

女医さんの場合には、妊娠や出産などを契機に職場から離れ、復帰後も子育てなどで働ける時間が決まっていたり、急な呼び出しに対応できないという背景は確実に存在しています。

ですから女性医学部生や研修医の場合には、診療科を選択するにあたっては十分な検討が必要です。

こちらの記事で書いていますが、女医さん自身にとっても、自らのキャリア形成と妊娠や出産、子育てはすごく根深い問題です。

【医師の視点】医学部女子が診療科を選択するときに考えるべきこと3つ

2018年8月2日

また同じく病院で働いている男性医師にとっても、職場から離れる女性医師の分の時間外労働や当直を肩代わりしなければならず、常に女性医師に対して不満が存在していることも確かです。

だからと言って女性医師は働かないから、男子ばかりを合格させようというのは、間違った考え方であると言わざるを得ません。

本来あるべき医師の労働環境を考える

このような、男性医師でないと成り立たない医療現場の働き方は必ずや変わらなければなりません。

代休無しに時間外に呼び出されることが当たり前であったり、あまり眠れない当直明けも普段と同じように勤務しなければならない現状は、絶対に変わっていかなければならないのです。

上に書いたような女医の働き方に対する批判は、あくまで労働基準法を違反した働き方を前提にした批判であり、このような主張にはあまり意味がないと考えています。

もし仮に、鉄道会社や航空会社で行われているような、安全性の観点から当たり前のシフト制に近い勤務体制を構築することができるのならば、どうでしょう。

女医さんに対する批判もグッと少なくなるのではないでしょうか。

もちろん手術はきっかり17時に終わるわけではないですし、土日も病院に来なければならない現実は変えようはないですが、勤務体制は変えることができると思うのです。

東京医大の本当の過ちとは

そういうふうに考えてみると、医師を教育する立場である東京医大では、ぜひとも女性医師も働きやすい環境づくりをして欲しかった、と思います。

得点調整をして目の前の現実に順応するやり方ではなく、目の前の現実を変えるような、先進的な取り組みこそが大学のあるべき姿ではないか、と思うのです。

しかしながら現実は、国からの助成を受けるために学力の足りない学生を不正入学せさせ、おまけに公平な受験制度を破壊してしまいました。

なんとも信用できない大学です。

【勤務医の視点】東京医科大学の不正入試事件と同様なことって本当に起こりうるのか?

2018年7月23日

女性医師における妊娠と出産の難しい問題。出産後も働きやすい病院・診療科のポイント

2017年8月24日

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