医学部の面接試験は、いまや全国各地のほとんどの大学で必須となっています。
どこの分野でもそうですが、面接試験における点数のつけ方には、色々な憶測がありますね。
過去には年齢による面接試験の差別を疑うような事案もありました。
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群馬大学における医学部面接試験に関連した訴訟
2006年ごろに群馬大学医学部を受験した主婦が不合格となり、面接試験での不等評価について裁判まで至っています。
群馬大学医学部の入試では、筆記試験(センター試験と個別試験、小論文)に面接と調査書を加えた「総合的な判断」によって合否判定が下される。逆にこのうち一つでも「著しく不良のものがある場合は不合格もありうる」と入試要項には書かれている。
筆記試験で合格者平均を十点以上も上回っていた佐藤さんは、面接で「著しく不良」とされた以外、不合格の理由は思いつかない。そのため面接ではどのようなチェック項目があり、どう点数化されているのか開示を求めたが、大学側は「今後の入試に影響を及ぼす」として応じなかった。
さらに入試担当者から「医師を社会に貢献させる使命が国立大学にあり、十年かけて育成しても社会に貢献できるか、あなたの年齢が問題となる」と自分の不合格理由に高年齢が挙げられたと主張したが、判決は「証拠がない」としてこの発言を認定しなかった。
この事件は医学部関連の人間にとってはまずまず有名だと思ったのですが、ネット上の情報はすごく限られています。
オフィシャルな情報はなくて、個人運営のサイトにしかまともな情報がありませんでした。
この一件で確かなのは、医学部の面接試験において、その得点のつけ方が、かなりの程度ブラックボックスなのは間違いありません。
医学部入試において面接試験はほぼ必須である
個別試験idealより
こちらは2018年度の医学部入試における、各大学の得点配分を示したものです。
10年ほど前には、医学部の入学試験において面接試験を課さない大学も結構あったのですが、今やほぼ全ての国公立大学において面接試験が必須となっているようです。
あくまで個人的な感想ではありますが、このような面接試験がどこの大学でも必須であるのは、下記の2点が挙げられるかと思います。
人間性を重視した選抜試験を行うようになった
病院で働く医師として、円滑なコミニケーション能力や、患者さんの立場に立った発言や行動が求められます。
しかし実際に医学部に入学した学生や、医師となる人間の中には、コミニケーション能力が著しく欠如している学生や医師がいるのは事実です。
ペーパーテストだけでは、成績は良いがコミュニケーションが取れない学生が入学してくるリスクもあります。
面接試験を行うことによって、将来医師になった場合に、トラブルを起こしそうな人間を排除する目的があるのは確かでしょう。
学生のバックグランドも考慮に入れて合否を決定したい
もう一つの理由としては、受験生のバックグラウンドに関して、ある程度コントロールしたい側面もあるかと思います。
研修医の減少で大学病院の医局が弱体化し、地域の関連病院に十分人材を派遣できないと問題が起こっています。
今や地方での医師不足は深刻であり、都市部以外の大学病院においては、大学病院で働く研修医の獲得が大きな課題になっています。
これは教育レベルの高い都市部の高校生が、地方大学の医学部に入学し、卒業後は地元の都市部にUターンしてしまう、という流れがひとつの原因とされています。
したがって大学側としては、医学部を卒業してからも、その地域に残ってくれるような高校生、つまり大学病院のある市町村や都道府県出身の学生を選別したいという思惑があるのでしょう。
このような地元出身者を優先して入学させる手法はすでに地域枠という形で存在しており、決して大学側も対策を打っていないわけではありません。
受験条件は各国公私立大学によって異なるが、受験者をその大学が立地する県の高校の出身者に限定したり、卒業後の勤務地をその県に限定していることが多い。
当制度は2013年度(平成25年度)には68校が導入しており、全国の医学部医学科80校の85%に及ぶ。また、同年度における当制度の募集人数は合計1,425人に及び、医学部医学科の全入学者数の15%を占めた。
大学側が、地元出身者を優遇するために、得点調整の意味合いで面接試験を行うのは、倫理的な部分は別として、決して不合理なものではありません。
あくまで推測ですが・・・
大学病院に勤務している医師にとっても、面接試験はブラックボックスである
実は大学病院に勤務している医師であっても、医学部入試の面接についての話を聞くことがほとんどありません。
面接官を担当するのは、医学部教授だったり准教授だったりするわけですが、そこから情報が漏れてくる事は全くありませんでした。
医学部の入試については、いろいろな噂を間接的に聞くのですが、どれが正しくて、どれが間違っているのかはわかりません。
特定の受験生に対して、学力以外に明らかな優遇処置があるのは考えものですが、かといって個人の裁量による得点のつけ方に正面から反論するのは難しそうです。
このようなブラックボックスの医学部入試における面接を乗り越えるためには、筆記試験において十分な得点を獲得するしか方法はないでしょう。
医学部のある都道府県出身の高校生が面接に挑むのと、縁もゆかりもない地域出身の再受験生が面接に挑むのとでは、もしかしたら試験の前からすでに差がついている可能性は十分あると考えるべきかもしれません。
医学部不正入試問題を受けて(2018.10)
と、このように医学部の入試の不透明さについて記事を書いていたら、やはり問題が発覚しています。
東京医大の不正入試問題に始まった医学部入試の闇の部分が、次々に明らかになっています。
文部科学省は23日、全国81大学の医学部医学科の入試を対象に実施している不正調査の中間報告を公表し、性別や浪人年数で合否判定に差をつけるなど、複数の大学で不適切な入試が行われた疑いがある事例を示した。
柴山昌彦文科相は同日の会見で、「受験生が安心して受験できるよう公正な入試の実施を求める」と述べた。
朝日新聞 2018.10.23
どこの医学部でもおおむね女性・再受験生に対して不利な得点配分がされていたようです。
こればかりは、公正中立な入試を担保しながらいかにして医学部側にとって都合の良い受験生を確保するかという話ですから、簡単ではありません。
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