断らない医療の光と影。救急患者を断らないことは本当に善なのか。




神戸市立中央市民センターの断らない医療が話題になっています。

断らない医療とのことで、厚生労働省から評価も受けているようです。

「断らない救急」日本一なぜ?司令塔の医師に聞く

救命救急の診療体制や患者の受け入れ実績について、厚生労働省が毎年、全国の医療機関を評価している。4年連続で日本一なのが、神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区港島南町2)だ。

「断らない救急医療」を理念に掲げ、タクシーなどでの直接受診を含め、あらゆる患者を受け入れている。司令塔を務めるのは、救命救急センター長の有吉孝一医師。これからどんな施設を目指すのだろう。(網 麻子)

神戸新聞NEXT 2018.4.29

断らない医療って聞こえはいいんですけど、実態はいろいろと難しいのです。

断らない飲食店があったとしたら

断らない医療は、耳にする分には非常に理想的に聞こえます。

ただしその実態はどうなのでしょうか。

例えば客の来店を断らない飲食店があったとします。

飲食店が混んできたときには、後からやってきたお客さんはすごく長い間待つ必要があるかもしれません。

また、働いているスタッフたちはお客を早く回転させようとして、調理するのを急いだり、サービスがおろそかになってしまうかもしれません

それにすべてのお客を捌こうとすると、飲食店で働いている人たちは残業しなくてはならないかもしれません。

断らない=無理をする必要がある、わけですから、バックアップなしに断らないのは無謀なチャレンジにもなり得ます。

医療現場では到底実現できるものではありません

医療現場では待たせておけないかもしれない

それに病院の場合には、患者を長い間待たせておくことができない場合もあります

飲食店の場合には、何時間も客を待たせたところで死人がでるわけではありませんから、キャパシティをオーバーした分の客は外で待たせておくことが十分に可能です。

しかし病院はそうはいきません。

もし重症の患者が2人やってきたとしたら、その2人の患者を同時に診察しなければなりません。

もし仮に病院のマンパワーが足りないことになれば、助かっていたかもしれない2人の命を、どちらも失ってしまうのかもしれないのです。

患者の受け入れを断らないことが、必ずしも正しいあるべき医療ではないのです。

医者だって病院当直ではいつもおびえています。何が起こるかわからない

2018.03.13

医者の労働はどうなる?過重労働の危険性

さらに問題となるのは、医者や看護師などの過重労働です。

大幅に残業時間が増えたり、当直の回数が増えたりするかもしれません。

医者や看護師が24時間365日余っているような病院であれば、断らない医療を実現可能かもしれません。

ただし日本のほとんどすべての病院では、医者不足の状態が続いています。

断らない医療を全国すべての病院で実現しようとすると、必ず医療者側に過大な負担を強いることになりそうです。

それによって医療者側の集中力が下がり、思わぬミスを犯してしまうかもしれません。

このような集中力の低下は個人の努力ではどうにでもなるものではありません。

航空会社や鉄道会社など、乗客の安全を預かる企業では、乗務員の労働時間は厳格に管理されています。

同じく人命を預かる病院の中では、なぜだか労働時間の厳守が置き去りにされているのです。

持続可能で効率的な運用が求められている

いま医療現場において必要なのは、断らない医療ではなく持続可能で効率的な医療機関の運用です。

重症の患者は、それぞれの病院の能力を超えない形で専門の病院に振り分け、軽症の患者に関しては、軽症の患者だけが集まるような病院に振り分けることが必要なのです

もし仮に断らない医療を実現するとしても、それを実施している医療機関には多くの金と人材を投入して、緊急事態に備えて医療従事者が常にあまる位の体制にしておかないと、現実的な議論は難しいでしょう。

ドクターカーとは、医者を乗せた救急車のことである。実際は何をしているのか

2016.11.20

きしむ救急医療。常勤内科医9人が1人に。入院病床、閉鎖。上野市民病院

2011.02.13

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